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ブロックチェーン技術を使った海外のHR Techサービス「APPII」

最近話題のビットコイン(BitCoin)などの暗号通貨で用いられているブロックチェーン技術ですが、HR Techサービスにも適用され始めています。

今回は、ブロックチェーン技術を適用したHR Techサービスを提供する海外の企業を紹介します。

ブロックチェーン(Block Chain)とは?

日本語では分散型台帳と言われています。ビットコインを例に挙げると、ブロックとは、「一定期間内の取引の塊」のことで、チェーンとは、その一つ一つが繋がっている状態を指します。

取引(トランザクション)情報を一つの台帳で管理しており、国や銀行のように、やりとりを中間で管理する人が必要ないので、非中央集権(管理者がいない)のサービスを実現することができます。

【参考】HRTech業界でよく使われる用語まとめ

https://hrtechnavi.jp/terms/terms

なぜHR Techサービスにブロックチェーン技術が適用されるのか

①情報管理において不正が起こりにくい

ブロックチェーンの特徴は、台帳に「正しい情報」が記録される点です。

なぜ正しいと言い切れるかというと、記録の改ざん(書き換え)がほぼ不可能(=情報が正しい)であることが担保されているからです。

ビットコインを例に説明すると、書き換えには膨大な量の計算と、膨大な数のマイナー*の51%以上を騙す必要があります。

マイナー*・・・採掘者を表す言葉で、ビットコインにおいては、新たに取引が行われた場合に、新規のブロックを繋げるために必要な数字(ナンス値)を見つける人を指します。

マイナーは、ビットコインの取引(台帳に情報を書き込む)に必要なナンス値を見つけることで、新規発行か取引手数料のビットコインを受け取ることができます。

さらに、1人のマイナーが見つけたナンス値を他のマイナーが検証し、それが正しいと認められた場合に、台帳に情報を書き込むことができます。

※あくまでビットコインを例にした説明です。他の手法を用いて、データの正しさを担保する仕組みも存在します。

このように、データの正しさを担保することができれば、記録の改ざんが起きないので、応募者のバックグランドチェックや、社員の能力(資格など)・実績などの情報管理で不正が起きません。

採用において、応募者が以前どんな仕事をしていたのか、どこ出身でどの学校を卒業したのかなど、本人が書いた履歴書で判断されるケースは、少なくありません。

履歴書の場合、その情報が正しいかどうかを正確に判断することは非常に難しく、確認する術も限られています。

ですが、ブロックチェーンに記録された情報は外部からの改ざんが難しく、正しい情報だけが積み重なっていきます。

その正しい情報を元に採用活動を行うことで、正しい情報の応募者を選考することができます。

②給与支払いに暗号通貨を使うことでコスト削減

給与支払いにビットコインなどの(ブロックチェーン技術を使った)暗号通貨を使うことで、従来の銀行という仲介業者を介した送金手数料より安く済ませることができ、さらにセキュリティの面でも安全なやりとりができます。

送金には、ほとんどの場合、銀行という仲介業者の存在がありますが、暗号通貨を用いることで、銀行の存在が必要ありません。

それによって、手数料が安く済むメリットもあり、また仲介業者を介することによってかかっていた取引の時間が短縮されることになります。

ブロックチェーン技術を用いることで、より安く、より速く、より正確に送金することができます。

ブロックチェーン技術を使った海外のHR Techサービス「APPII」

https://appii.io/

概要

設立:2016年3月、イギリス

APPIIは、求職者を対象にした、オンライン証明、キャリアマネジメント、採用プラットフォームです。

APPIIは、求職者の学歴やキャリア、資格情報などをブロックチェーン技術を使って真正性の証明し、信頼できる正しいデータの履歴書(Curriculum Vitae)を作成することができます。それだけでなく、証明された履歴書を使った就職/採用活動ができるプラットフォームです。

ビジネスSNSであるLinkedInとAPPIIの違いは、求職者の履歴書に書かれている経歴などの情報が本物であると証明されているかどうかです。APPIIでは生体認証を用いて個人を登録するため、なりすましなどが起きません。

これにより、企業は応募者のバックグラウンドチェックにかける手間を省くことができます。

またAPPIIには、履歴書の情報が正しいかどうかを検証・証明するパートナーが存在しています。

すでに教育機関や企業がAPPIIパートナーとして参加しており、将来的には証明に協力した団体に報酬が渡される仕組みになるとのことです。

APPIIを利用することで、求職者は自分の履歴書が本物であることを証明でき、企業は本物の履歴書を元に採用を検討することができます。

サービス利用のメリット

■求職者が「APPII」を使うメリットと手順

メリット:証明済みの履歴書を使うことで、自分に関する情報が正しいことを証明できます。自身の情報の正確性を担保するための、資格の認定証や卒業証明書などを取り寄せるコストが削減されます。

また、一度自分の履歴書がAPPII上で「正しい情報」であると証明されることで、これからずっとその情報を使うことができます(=これから先、その情報が正しいということが担保される。)

  1. APPIIアカウントを登録する
  2. アプリをダウンロードする
  3. アプリ上の生体認証によって、身元を確認します(5分かかります)
  4. デスクトップ上に履歴書を作成して、検証を依頼します
  5. 検証が完了するとアプリに通知がきます
  6. 検証済みの履歴書を使って求人に応募できます

■雇用主が「APPII」を使うメリット

メリット:APPIIを使って作成された履歴書は「正しい」と判断することができるので、従来のバックグラウンドチェック・リファレンスチェックにかけていた時間を大幅に減少することができます。

採用情報の投稿や検証された履歴書へのアクセスには別途料金がかかるが、他の採用サイトなどに比べて安いとのこと。

2017年、求人情報を扱うイギリスのテクノジョブスにおいて、APPIIによるブロックチェーン技術によって検証された履歴書が使えるようになりました。
http://www.onrec.com/news/launch/appii-launches-world%E2%80%99s-first-blockchain-career-verification-platform

日本での事例「Metamo Card」

日本人が立ち上げたブロックチェーンを使ったHR Tech企業に、Metamoがあります。

https://www.meta-mo.co.jp/

利用者は、自分の職歴や学歴をメタモカードに記録することができ、メタモカードのQRコードを読み取ると、持ち主の学歴や職歴、職場での評価などを手軽に確認することができます。

メタモカードには、職場での評価などが記録されるため、これまで、応募者自らが書く履歴書からでは判断できなかった、その人の評価が見える化されます。

メタモが事業を始めたベトナムでは、すでに1000枚以上のメタモカードが発行されているとのこと。
また、メタモカードはバックグラウンドチェックだけでなく、勤怠管理にも使える。スマホにメタモカードをかざすと、位置情報と滞在時間に基づいて、自動チェックインしてくれます。

メタモカードは、2018年5月現在、「まもなく日本に上陸する」とHPに書かれています。

日本では大学の学生証に着目し、授業への出席を自動で管理したり、履修科目や専攻分野を記録する使い道を検討しているとのことです。

まとめ

ブロックチェーン技術がHR Techに使われる背景には、やはり情報の正しさを担保できる点にあります。従来、求職者の主張する情報が正しいかどうかを判断する(バックグラウンドチェック)には、相当な日数と労力がかかっていましたが、そこにかかるコストも削減されることになります。

また、求職者も、自身の情報の正確性を担保するための、資格の認定証や卒業証明書などを取り寄せるコストが削減されます。

ただ、ブロックチェーンと言っても、そこに記録された情報が正しいかどうかを検証する手法は様々で、HR Techに適用するには、その検証プロセスが鍵になると考えられます。