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音声認識や顔認識機能で採用効率化チャットボット(chatbot)「VCV AI」

博報堂が発表しているメディア定点調査2018によると、メディアの接触時間の中でスマートフォンなどのモバイル端末への接触時間は全体の1/3を超えた。

モバイルが一番の接点となることでコミュニケーションのありかたもLINEのようなチャットツールでのやりとりが主流となってきている。

採用活動においても当然候補者が一番コミュニケーションを取りやすい手段でとることで効果があがると期待できる。

コミュニケーション方法の変化に加えて、求人広告やエージェント経由での採用だけでなくダイレクトリクルーティング、リファラル採用など採用チャネルも多様化しており、応募者のスクリーニング、面談日程調整や面談などに多くの時間を使っている採用人事担当者も少なくないだろう。

今回は採用業務をAIを使って効率化するアメリカ発のチャットボットサービス「VCV AI」について紹介する。

1.チャットボット(chatbot)とは

チャットボットとは、「対話する(chat)」と「ロボット(bot)」という2つの単語からなる造語だ。近年では、ユーザーと企業をつなぐツールとして注目を集めている。

チャットボットを導入すれば、テキストや音声による質問に自動回答してくれるので、これまで人が行っていた「お問い合わせ」や「注文」の対応作業の効率化をはかることができる。

チャットボットを採用に取り入れることで、採用側、応募者側、双方にメリットがある。

まず、チャットボットの導入で人事担当者の負担を減らすことができる。

応募者の個人情報の収集や管理、面接の日程調整、応募者からの問い合わせなど、これまで人が行なっていた業務をチャットボットが担うことで、より効率的に採用を行うことができる。

応募者からの簡単な質問には、チャットボットがいつでも答えてくれる。面接者と応募者の日程調整においても、面接者のカレンダーを同期しておくことで、自動で調整してくれるサービスもある。

さらに、応募側のメリットとしては、コミュニケーションの手軽さが挙げられる。

最近では、採用に限らず多くのサイトでナビ役のチャットボットを目にすることが多い。また、LINE@やメッセンジャーでもチャットボットが活用されているため、多くの応募者は、チャットボットとのやりとりに慣れているのではないだろうか。

3.海外事例

海外で採用されているチャットボットの特色ある特徴として、日本で採用されている「FAQの自動化」「チャット機能」に加えてスクリーニング機能がある。今回は、VCV Inc(https://vcv.ai/).の提供するVCV AIを紹介する。

VCV Inc.は2017年1月創業され、アメリカ・サンフランシスコに本社を置く企業だ。

SocialTalent社が2017年に発表した「Recruitment Technology That Will Guarantee a Successful 2018(HR業界に大きな影響を与えている企業)」にもリストアップされており、同じく2017年にアムステルダムで開催された「HR Tech World Startup Competition」のファイナリストにも選ばれている。

VCV Inc.の提供するVCV AIは、ただのチャットボットではなく、求職者を検索したのち、音声認識や顔認証などの機能を使い、あらかじめ用意しておいた質問に対する反応を見てスクリーニングを行うプラットフォームである。

そんなVCV AIの4つの特徴を紹介する。

①検索機能

VCV AIはわずか数分で求職者と求人情報を照合し、企業に合った人材の職務経歴書を数百件も表示する。人種や性別で判断することはないため、平等な採用が期待できる。

②チャット機能

このチャット機能を使うことにより、のちに行われる電話インタビューやビデオインタビューの日程調整を自動で行うことができる。

③電話インタビュー

VCV AIの電話インタビューは音声認識機能を使い、候補者の反応を判別しする。また、求職者が採用された場合どのような職務を行うのかという仕事の詳細を説明してくれる。さらに、同時に何百も電話をかけることができるため、時間の削減にもなる。

④ビデオインタビュー

候補者はあらかじめ撮影された面接のビデオに受け答えをしていく。その受け答えを元に、顔認識や予測分析機能を活用し、候補者を絞り込む。用意されたビデオを使うことで、Skypeなどとは違いリアルタイムではないため、時差がある場合などにとても役立つ。

以上の機能を持つVCV AIのbotは、候補者が採用された要因、つまり、なぜ企業がその候補者を選んだのかを機械学習することで、次回以降の採用において、より最適な候補者を発見することができる。

また、採用管理システムに関しては、クラウド型人事・タレントソリューションを提供している「SAP SuccessFactors」の採用管理ツールと業務提携しており、統合が可能となっている。また、これから「SmartRecruiters」や「LEVER」、「Taleo」、「Avature」などのサービスとの連携も予定している。

VCV AIを活用して3ヶ月で450名の採用を成功:KidZania(キッザニア)

VCV AIの活用事例を紹介する。日本にも2か所展開している「KidZania(キッザニア)」だ。子供向け就業型テーマパークとして世界的に人気を博している。KidZaniaは、2015年にロシアでテーマパークを作るにあたり、それまでに450名の従業員を新たに雇う必要があった。

VCV AIを使い、3か月という短期間で18,000名の応募者を審査を行った。VCV AIのビデオインタビューでは、事前に録画されたものを使うため、同時に何名もの応募者の面接を行うことができ、採用の効率化を図ることができる。

質問は自由に設定することができる。KidZaniaの場合は「なぜ今の大学に入学したのか」などの自身の過去や性格を問うものと、「このうちの1つは偽物です、どのように判別しますか」などといった論理的思考を問うものに分けた。そして、4回の審査を経て、3ヶ月で目標としていた450名を採用した。

4.日本の類似サービス

日本にもチャットボットサービスはいくつか存在する。今回はその中で会社概要や採用情報などのお問い合わせに自動応答することができる「Talk QA for Recruit」と採用管理システムと日程調整の両方を行える「オートークビズ」を紹介する。
またHR Techナビでは「NoRe:suke」について紹介している。
https://hrtechnavi.jp/lab/noresuke/

Talk QA for Recruit

Talk QA for Recruitは、IBMが開発した質問応答システムWatosonを活用したAIチャットボットサービスだ。会社概要や採用情報についてのお問い合わせに対し、Watsonが24時間自動で対応する。またメッセージアプリLINEと提携しており、より就活生が使いやすい仕組みとなっている。最大5万コールまで初期費用20万円、月額17万円で導入が可能だ。

オートークビズ

オートークビズは「求人媒体から応募者を自動で取り込み、面接予約などのコミュニケーションをチャットボットで自動化する、採用管理システム+日程統制機能のオートメーションサービス」だ。その他にも、チャットによるスクリーニング機能や、googleカレンダーとも連携できる。

今回は「VCV AI」を元に採用業務におけるテクノロジーの活用シーンについて取り上げた。履歴書のチェック、面接、候補者との対応なども自動化できる業務がでてきている。

ただサービスを入れるだけではなく人材要件定義や必要なデータの収集など必須ではあるが、採用業務のオペレーションを少しでも楽にしたい人事担当者は紹介したサービスがもつ考え方を取り入れる、またはサービス導入を検討してみてはいかがだろうか?