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会社を辞めなくてもプロジェクトに参加し、 スキルアップできる「QLC」

マンパワーグループの調査(※1)によると2020年には世界の労働力の3分の1以上がミレニアル世代が占めるという結果がでています。ミレニアル世代とは、1980年〜2000ごろに生まれ、2000年以降に成人や社会人になる世代です。前の世代と大きく異なるのはインターネットが当たり前の環境に育っていることで、親世代と比べても価値観は大きく異なっています。
※1 マンパワーグループ「ミレニアル世代のキャリア 2020年に向けたビジョン」

たとえば、株式会社ジャパネット銀行の調査(※2)によると、「いろいろな会社で経験を積む」と答えたミレニアル世代の割合は40%で、親世代と比べて15ポイント高くなっています。回答の背景として、一つの会社にとどまり続けることで視野が狭くなる、限られた経験しか身につかないという理由が述べられています。
※2 株式会社ジャパネット銀行「ミレニアル世代VS親世代、「働き方」に対する意識を調査」

人生100年時代といわれ会社の寿命より、自分たちの労働人生のほうが長いミレニアル世代にとって、一つの会社で通用する特殊スキルを身につけるよりも、その時々で必要とされるスキルをみにつけていくことが重要になってきます。

しかしながら、いきなり会社を辞めて学び直しをする、転職をするというのも躊躇するもの。今回紹介するQLCは、働きながらスタートアップなどプロジェクトにオンラインで参加しスキルアップの経験が積めるサービスです。

QLC(Quarter Life Crisis)とは

QLC(Quarter Life Crisis)は、企業に勤めながらオンライン上のプロジェクトに参加し、スキルを学ぶことができるサービスです。2014年10月16日に創業し、シンガポールに本社を構えています。オーストラリア出身の起業家であるウィル・ファン(Will Fan)とフェイ・ヤオ(Fei Yao)は約3年働いたアクセンチュアを辞め、東南アジアで最初のスタートアップ支援企業「JFDI.Asia」のプログラムに参加し、キャリアとライフスタイルポータルである「QLC」を作り上げました。

QLCはオンラインを通して、様々な学習を行うことのできるプラットフォームです。これまで、2015年と2017年の2度にわたり合計675,000ドルの資金調達を行っています。

現在、シンガポールや中国、ブラジル、アメリカなど、世界48ヵ国に12,000人ものユーザーがいます。そして、プラットフォームに参加している企業はフィンテックや食品業界など約1000社ほどです。また、QLCは社会人だけでなく、学生への支援も行っています。学生向けのプロジェクトに関しては、48ヵ国800社のスタートアップが、40か国から約1万人の学生が参加しています。

QLCがクラウドソーシングと違う点は、ユーザーはプロジェクトに参加したことに対する報酬が発生しない点です。QLCでは、プロジェクトに参加したい人(ユーザー)とプロジェクトを作成する人(メンター)の両方が300~500ドルを最初に支払い、その後6週間にわたりプロジェクトを行います。双方が料金を支払い、かつ、報酬がないことで、小遣い稼ぎ目的の人を排除することができ、キャリアアップに真剣な人と企業のみが集まるのです。

また、このプラットフォームの他に、インターネット上で講義が受けられるキャンパスというものがあります。ドバイ、シンガポール、ニューヨーク、東京とオフラインでもプロジェクト関係なく、誰でも授業を受けることができるキャンパスを作る予定です。すでにドバイは開校しており、2019年2月25日にはシンガポールが開校予定です。ニューヨーク、東京に関しては順次情報解禁予定だということです。

QLCの特徴

時間や場所にとらわれない

QLCのプロジェクトは全てオンライン上で行われます。そのため、本社を訪れる必要なく、ネット環境さえあれば、どこにいても世界中の企業と一緒に仕事をすることができます。

短時間での勤務で大丈夫

QLCのホームページによると、プロジェクトに必要な時間は週に5-10時間です。プロジェクトに割く時間が短いため、仕事や学校に行きながらも活動をすることができます。

実際のプロジェクトを経験できる

プロジェクトメンバーとして参画し、働く経験を積むことで、その業界の理解が進み、必要な力も身につきます。

必要なときに必要な学習ができる

QLCではマイルストーンや学習を支援するためのデジタルカリキュラムのテンプレートを使用して、プロジェクトをサポートする仕組みがあります。

QLCへの参加の仕方

個人の関わり方【プロジェクト参加】

①参加プロジェクトを探す

まずは、氏名や所属、国、メールアドレスなど必要な情報を記入し、アカウントを作成します。その後、興味のある分野を選択するとQLCが自動でおすすめのプロジェクトを提案してくれます。
おすすめ以外にも、分野や地域などで絞って検索することも可能です。

②申請

プロジェクトに参加する際には、履歴書は必要ありません。プロフィールを作成し、申請します。10分もあれば申請が完了します。

③プロジェクトへ参加

申請が通ったら、プラットフォームに招待されます。そのあとは実際に作業が始まります。
QLCのホームページによると、プロジェクトに関する書籍やビデオ教材、プロジェクトのタスクなどを通しての勉強や、チームの目標達成のための個人やチームでの作業にそれぞれ週に2~3時間程度費やされます。そして、週に1時間程度、プロジェクトの進捗状況確認やフィードバックのために、プロジェクトを立ちあげた企業とのビデオ面談が行われます。

企業の関わり方【プロジェクトを立ち上げ】

①QLCのメンター登録とプロジェクト登録

まずは、代表者のプロフィールと会社についてQLCに登録します。その後、プロジェクトを登録します。その際には、プロジェクトの詳細の他に、プロジェクトを実行する日付や毎週ビデオ面談のできる時間などを記載する必要があります。

掲載されているプロジェクトは、ARやVRを使ったコンテンツ作成や、オーダーメイド紳士服の仕立て屋さんの事業開発など、多岐にわたります。

②マッチング

QLCのプロジェクトはどこからでも応募することができるため、世界中の候補者からの応募があります。

③プロジェクトチームの準備

マッチングが終わったら、いよいよチームのメンバーとの対面です。企業はプロジェクトに必要なリソースやソーシャルメディアアカウントを用意する必要があります。そして、最初のビデオ面談を行いながら、プロジェクトの目標の明確化や面談をする時間の設定を行います。

④実行

プロジェクトが実行されたら、チャットを利用して同じQLCユーザーであるチームのメンバーと連絡を取り合います。また、プロジェクトの進捗管理やフィードバックのために、週1時間のビデオ面談を行います。

企業の関わり方【インストラクターになる】

インストラクターは、プロジェクトを立ち上げるのとは別に、世界4か所の各キャンパスやオンライン上のキャンパスでインストラクターとして指導を行うことができます。インストラクターとしていままで業界で得てきた知識や経験を共有します。そうすることで、企業はグローバルネットワークの拡大と、社会への影響力拡大を期待することができます。
インストラクターになるためには、インストラクターになる目的や指導できる項目などを含んだ申請書を提出します。その申請書がQLCに認められると、受講者への指導の質を担保するためにQLCが提供するトレーニングを行います。
そしてついにインストラクターとして指導を開始することができます。
セッションの長さは60分で、オンラインで行われます。
インストラクターには、FacebookやGoogle、UBER、LinkedInなど世界的にも有名な企業で働いている人が数多くいます。

最後に

日本でも事業家や著名人が主催するオンラインサロンにお金を払って入り、会社では得ることができない経験やスキルを身につけるために、サロン内のプロジェクトメンバーとして働くという人も出てきています。
「オンラインで完結」、「少ないまとまった時間があれば大丈夫」、「メンターからのサポートが受けられる」という特徴をもったQLCは、昨今のオンラインサロンの流行をみていると日本においてもミレニアル世代の支持を得られそうですし、よりキャリアの幅を広げるサービスというのは求められていくようになるでしょう。