2020年も早くも1ヶ月が過ぎました。
昨年から今年の1月にかけて2020年のHR Techトレンドが各メディアで発表されています。今回は海外4つのメディアで掲載された内容の要約をご紹介いたします。
オーストラリアのIT Breifはガートナーからの発表を元に、未来の組織作りでおさえておくべき6つのトレンドを紹介しています。
この6つのトレンドは、AIと自動化、ギグエコノミー、多世代の労働力の活用が主要なトピックに上がっている中で見逃されがちであると記事では紹介されています。
従業員データの不正利用がないように、データの倫理的な取り扱いに人事がリーダーシップを果たすべきだと主張しています。
AIや新しいテクノロジーにより、障害を持った人々などでも仕事ができるような機会を作り、人材不足の解消へ役立てることができます。そのためには多様な人材が活用できるよう採用から採用後の仕事へのアクセスビリティの確保や、身体面や精神に障害を持った人々のマネジメントについても学ぶ必要がある。
承認作業などのマネージャーの仕事の69%は既存のテクノロジーで代替が可能で、人事とIT部門は連携をしてマネージャー業務を最適化するために自動化などを検討する必要があります。それに伴いマネージャーの配置やキャリアパスなども考えることが重要になります。
繰り返しの定型業務について学ぶOJLは、業務の自動化などで不要に。むしろ機械に代替されないスキルを身につけるために従来型の講義形式の教育などに戻る可能性も。
従業員の71%が雇用主に対して透明性を高めるべきだと考えており、組織は従業員に長く働いてもらうためにも透明性の確保をする必要が出てきます。
Z世代が労働市場へ参入する、2030年までにリモートワークの需要が30%増加します。リモートワークができない組織は人材獲得競争において不利に働くだろうと述べています。
Gartner: The six tech trends HR should be ready for(2020/2/10)
https://itbrief.com.au/story/gartner-the-six-tech-trends-hr-should-be-ready-for
アメリカのHR Technologistでは12人の専門家に2020年のHR Techの展望について取材し、10のトレンドにまとめて紹介をしています。
AIによるチャットボットでのやりとりや、採用におけるスコアリング、定型業務の簡素化など、AIが従業員体験と応募者体験に影響を与えます。
先進的な企業は科学的アプローチを第一に、従業員の日常業務を大幅に改善し、従業員の継続的なエンゲージメントの基盤である心理的安全性を高めることに焦点を当てるでしょう。
リモートワーク制度の導入や従業員の働き方に柔軟性を認めるつれて、HR Techツールは、分散したチームでもアクセスができかつ利便性があるよう、変化する働き方へ対応する必要があります。オデンマンドプラットフォームはより重要性が増し、レガシーなシステムは新しい働き方や組織形態に対応する必要があるでしょう。
ビジネスにおいて「平等」は必要不可欠であり、さまざまなバックグラウンドを持つ求職者を具体的に探すためのリクルーター(diversity recruiters)は減るでしょう。
ミレニアル世代とZ世代は、「即時」「モバイル」「継続的」である、オムニチャネルでのコミュニケーションを求めていて、彼らは給料よりも経験を重視します。そのために人事や派遣会社はDXへの投資が必要となるでしょう。
テクノロジーによりマネジメント層と従業員との透明性のニーズが加速。
リーダーはテクノロジーを活用して適切な会話を促進し、マネージャーと従業員の間で集中的かつ誠実なフィードバックを提供し、行動に対する双方向の説明責任を強化していくようになるでしょう。
人事業務に限らずデジタルワークを一ヶ所で完結できるプラットフォームが求められています。UEPはユーザーがどのシステムを使っているのかわからないぐらい統一されたデジタルエクスペリエンスを提供するためのプラットフォームです。
新しいオープンな労働力モデルとオンデマンドの人材ネットワークを活用していく企業が増えることが2020年の大きなトレンドです。Upworkの調査によると、2018年には、Z世代の労働者の46%がフリーランサーであり、従来の手法では新しい世代の人材の確保は難しく、採用および定着のために革新的な取り組みが求められるでしょう。
採用や定着において企業文化が重要な要素になってきます。さらに企業文化が従業員のことを一番に考えてくれているのかがもっとも知りたいことになっている。
労働市場は大きく変化しています。企業は、労働市場の変化に対応するための適切なツールが必要となります。一方で、従業員が自身のキャリアも時代の変化とともにアジャイルに適応できるよう再教育も必要となるでしょう。
高成長企業は離職率が高く、従業員のロール(役割)の変化を経験します。HR Techは管理と文化面のギャップを埋め、新入社員のオンボーディングをサポートする緩衝材として活用されていくでしょう。
10 HR Tech Trends for 2020 Every Talent Leader Must Consider(2019/12/17)
https://www.hrtechnologist.com/articles/ai-in-hr/top-hr-tech-trends-2020
techspectiveでは「AI」「セルフサービステクノロジー」「アクティブリスニングツール」を2020年に期待される一つの例として紹介しています。
HRの新しい分野にもAIが活用されます、特に高度なAIアルゴリズムとデータサイエンスは採用担当者が悩む人材不足の解決に寄与することが期待されています。例えば、採用担当者と相談したり、転職を受け入れたりする受動的な候補者をAI採用ツールなどで見つけることができます。
セルフサービステクノロジーは従業員の人事関連の手続きを自身で完了させることができます。手続きに関して人事が介入することも少なくなり生産性の向上が見込めます。
HR Techツールで効率的に業務ができるようになった分、人事が思いやりを維持することが重要になってきています。パルスサーベイ、チャットボット、チェックインツールといったテクノロジーはアクティブリスニングの重要性を促進するよう設計されています。これらにより雇用主は年次調査より有益なリアルタイムフィードバック受けることができます。
HR Technology Trends To Look Out For In 2020(2020/1/28)
https://techspective.net/2020/01/28/hr-technology-trends-to-look-out-for-in-2020/
HRD(Human Resources Director)では、SMAC(ソーシャル、モバイル、分析、クラウド)の技術がHR Techに入ってきた2012年一つの転換点とし、これらの技術はそこまで新しくないものの人事部門へ混乱を与えていると述べています。世界中の専門家の声から10のトレンドを紹介しています。
HR Techは従業員のタスクを自動化するという機能だけでなく、従業員が組織にしっかりと貢献し、それぞれが持つ可能性を最大化するということ可能にします。
経営者や人事リーダーが軌道修正や効果的な組織運営に使える組織ガイダンスシステムを作る時がきたと主張しています。組織ガイダンスシステムは、スコアカード、ダッシュボード、予測分析を超えて、組織やビジネスの効果的な意思決定を可能にする統合ガイダンスシステムです。
AI活用のHR領域において採用が一番大きなマーケットで募集から採用までのあらゆる領域でAIが活用でき、他の人事部門、同様採用担当もシステムインテグレーターとしての役割も求められます。AI採用サービスを提供する会社は、インターナルモビリティやキャリアマネジメントといった隣接した市場へも参入をしています。人材獲得競争の激化により、社内人材募集市場が大きくなっていることが理由とのこと。
480億円のウェルビーイングマーケットはもっとも細分化され、かつサービスが激増しています。ウェルビーイングプラットフォームは、細分化されたアプリやサービスを統合し、従業員に真の行動変化をもたらすことができます。よって人事チームは、何ができるのかを理解する必要があります。これらは雇用と企業ブランドにとって重要問題でもあります。
柔軟な働き方へのニーズは高まる中で、さまざまなサービスが出てきているもののまだ初期段階で、今後の成長の余地があるとのこと。
ある調査によると一般的な人は12分ごとに電話をチェックし、1日に平均64個の通知を受け取るといいます。これからが健康などに与える影響を考慮して、通知やデバイス利用についての見直しが行われるでしょう。
これまで従業員が自身で投資していたキャリアコーチング。ミレニアル世代の登場によって会社がこれからのサービスを提供する必要がでてきています。
ピープルアナリティクスは依然として重要なトレンドです。
人事リーダーは、適切な質問方法を開発と組織全体で実験をした上で、証拠に基づいて、行動指針などを決めることが必要になってくるといいます。
一方で、人事の意思決定をする際のデータ活用は42%に止まっているという調査結果もあります。
従業員体験重視の傾向は低下の兆しは見受けられていません。従業員体験への需要は、顧客(人事担当者)の最前線では、コンシュマライゼーションの面から始まっているとのこと。
AIを活用して従業員体験向上に取り組む中で、雇用主は最終的に「人」を中心に考えないといけないことに気づくと言います。
デジタルツールは、業務プロセスの可視化により、非生産的で無駄な内部プロセスの見直しをせざるを得ない状況にすることもあります。
人と組織を取り扱う人事担当者は、人と組織のニーズに合わせた、無駄をなくしかつ俊敏で応答性の高い業務プロセスを導入する絶対的な権力者として配置されるのが理想的だと主張しています。
10 HR tech trends set to disrupt 2020(2020/1/23)
https://www.hcamag.com/us/specialization/hr-technology/10-hr-tech-trends-set-to-disrupt-2020/211253
ミレニアル世代やZ世代の優秀な層を確保するために企業自身が変わる必要があるだろうという展望が多くなされていることは印象的でした。
また、良い従業員体験を作る責任者としての人事担当者という観点では、従来情シスやIT担当が担っていた社内システムを導入業務なども職務範囲となってきていて、人事担当者の役割が変化しつつあるということが読み取れる内容も多かったです。
アメリカと日本では事情が違う部分もありますが、優秀な人材の獲得競争はグローバルでおこなっているという認識で、海外のトレンドも意識しておく必要があります。