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2018年はウェルネスからウェルビーイングへ!エンゲージメント向上を実現する米企業「Virgin Pulse」

HR Techにおいて、ウェルネス(Wellness)分野が注目を浴びている。

世界最大規模のHR Techイベント「HR Technology Conference & Exposition」で紹介されるHR Techのトレンドにも、ここ数年安定してランクインしている。

「ウェルネス(Wellness)」とは心と体の健康のことである。企業が従業員の心身の健康を経営資源と捉え、健康促進を戦略的に実践することを「ウェルネス経営」や「健康経営」と呼ぶことが多い。

また、企業が独自で実施する健康維持・促進や病気の予防を目的としたプログラムは、一般的に「ウェルネスプログラム(Wellness Program)」と呼ばれる。

たとえばウェルネスプログラムには、歩数や心拍数・運動量・カロリー消費量などが測れるウェアラブルデバイスを従業員に装着させ、人事管理画面とデータで連携しながら、従業員の健康管理をするという方法がある。

従業員自身が健康管理できるシステムを構築することで、医療費を削減できるだけでなく、従業員エンゲージメントを向上させることができる。

今回は、そんなウェルネスプログラムを企業向けに提供する米企業「Virgin Pulse(ヴァージン・パルス)」について解説していく。

目次

  1. ウェルネスプログラムの企業向けサービス「Virgin Pulse」
  2. 「従業員エンゲージメント」を向上させる方法とは
  3. ウェルネスプログラムのキーとなるテクノロジー
  4. 「Virgin Pulse」のサービス内容
  5. 「Virgin Pulse」が評価されるワケ ~「ウェルネス」から「ウェルビーイング」へ~
  6. 日本におけるウェルネスサービス
  7. ウェルネス・ウェルビーイング分野の今後の展望

1.ウェルネスプログラムの企業向けサービス「Virgin Pulse」

「Virgin Pulse」は2004年創業の米企業で、2017年11月にマサチューセッツ州からロードアイランド州にグローバル本社を移転した。多国籍複合企業「Virgin Group」の1部門で、現在までに総額$92,000,000を調達している。

2016年度は過去最高の売上を達成し、サービスのグローバル展開もあり著しい成長を見せた。同年2月に、競合他社の「Shape up」「Global Corporate Challenge(GCC)」と合併したことが功を奏し、「Virgin Pulse」のユーザーは、世界185か国17言語に及ぶ約200万人(2200社)に上った。

メイン事業として、テクノロジーを活用して従業員エンゲージメントと従業員幸福度を高めるサービスを企業向けに提供している。

2.「従業員エンゲージメント」を向上させる方法とは

「Virgin Pulse」の詳しいサービス内容を見ていく前に、「従業員エンゲージメント」とは何かについて明確にしておこう。

「従業員エンゲージメント」は、個人の企業に対する愛着や帰属意識とも解釈されるが、組織と個人が同じ目的に向かって成長し貢献しあう関係のことを指すことが多い。

「Virgin Pulse」は、「従業員エンゲージメントの向上によって、具体的に何を達成したいのかは、会社、さらには個人によって変わる。」と説明している。

ある企業にとっては、「離職率の低さ」を意味し、別の企業では「顧客満足度の高さ」を意味するかもしれない。つまり、従業員エンゲージメントを向上させる方法もさまざまというわけである。

ウェルネスプログラムが従業員エンゲージメントの向上に役立つのであろうか?

「Virgin Pulse」が経営者を対象に実施した「The 2017 Business of Healthy Employees survey report」によると、ウェルネスプログラムを導入する理由として、回答者の42%が「従業員エンゲージメント向上のため」と答え、「医療費削減」と並び1位となった。

また、ウェルネスプログラムを導入した85%が、従業員エンゲージメントへの大きな影響を感じていると答えた。

3.ウェルネスプログラムのキーとなるテクノロジー

ウェルネスプログラムを成功させるためには、ウェアラブルデバイスやアプリなどのテクノロジーの活用がキーとなる。

現在アメリカでは、70%以上の企業が何かしらのウェルネスプログラムを導入しているが、従業員の時間・関心不足による参加率の低さが原因で、形式的な制度で終わってしまっているケースが少なくない。

仕事で忙しい従業員が継続的にプログラムに参加するためには、「利便性」や「楽しさ」「モチベーション」が欠かせない。

そこでテクノロジーを活用すれば、たとえば以下のような形で、ウェルネスプログラムの持続をサポートしてくれる。

一般消費者向けにウェアラブルデバイスの生産・販売をする業界最大手「Fitbit」とパートナーシップを結んでおり、「Fitbit」が誇る高品質デバイスとブランド力、「Virgin Pulse」の最先端プラットフォームが掛け合わさることで、他社にはない強力なサービスを構築している。

4「Virgin Pulse」のサービス内容

Virgin Pulse(ヴァージン・パルス)は、こうしたテクノロジーを駆使し、従業員エンゲージメントの向上に効果的なウェルネスプログラムを提供する。

①自分に合ったプログラムを選択できる

毎日の歩数やカロリー消費、運動時間を自動で測定する機能だけでなく、トレーニング、栄養摂取、睡眠、ストレス、金銭状況、人間関係など、個人の興味や悩みに合わせ、データに基づいた効果的なプログラムが、アプリ上で様々に提供される。

「肥満コントロールプログラム」「貯金額達成プログラム」などがその一つである。

②習慣化できる

ウェアラブルデバイスを装着するだけで簡単に健康管理ができる上に、ゴールや進歩が明瞭で持続しやすいため、ウェルネスプログラムを毎日の習慣にできる。

(「Virgin Pulse」と同期できるウェアラブルデバイスはFitbitのみならず、多種に対応している。)

また、「Virgin Pulse」のサービスはモバイルファーストでデザインされており、外出先など、いつでもどこでもサービスを利用できるアプリが充実している。

③インセンティブがある

プログラムの達成度や、1日で上った階段数、運動時間などに応じて、従業員はインセンティブポイントを獲得できる。溜まったポイントは、「Pulse Cash」として現金やギフトカードに変換したり、チャリティーとして寄付したりできる。

④ソーシャル化されている

従業員は、同僚や友人がどんな活動をしているか、どのくらい目標達成しているかチェックすることができるため、切磋琢磨しながらウェルネスプログラムを楽しむことができる。

5.「Virgin Pulse」が評価されるワケ~「ウェルネス」から「ウェルビーイング」へ~

「Virgin Pulse」は、HR Techの新トレンドをリードする企業として注目されている。

「HR Technology Conference & Exposition」のクロージングキーノートで登壇したJosh Bersin氏による「HR Technology Disruptions 2018 Report(2018年のHR Techの動向を報告したレポート)」にも取り上げられた。

Josh Bersin氏は、2018年は「ウェルビーイング(Wellbeing)分野」が爆発的に成長すると主張している。

「ウェルビーイング(Wellbeing)」は近年、心身ともに健康である状態にフォーカスを置く「ウェルネス(Wellness)」とは区別されるようになっており、「ウェルネス」から「ウェルビーイング」へシフトしていくことが、組織の生産性アップに、より効果的であると考えられている。

ウェルビーイングは、「①心身ともに健康である状態」に加え、「②モチベーションや目標の有無」「③良好な人間関係」「④金銭的安定性」「⑤コミュニティへの帰属意識」なども重視する全体論的アプローチである。

Virgin PulseのChief Medical OfficerでありPresidentでもあるRajiv Kumar氏は、自身のブログで、上図を用いながら「ウェルビーイングは従業員エンゲージメントの土台だ」と語っている。

「Virgin Pulse」は、この「ウェルビーイング」を実現しているとして評価されている。

単に自分が健康になっていくのを実感する以外に、目標の達成に応じて与えられるインセンティブや、仲間同士の交流・承認を促進する仕組みが従業員の幸福度を上げ、結果として組織の生産性向上に繋がっているのである。

結果として、「Virgin Pulse」がサポートするクライアント企業のサービス利用持続率は95%に上る。

6.日本におけるウェルネスサービス

日本では「FiNC」や「富士通エフ・アイ・ピー」、「タニタヘルスリンク」などの会社が、「Virgin Pulse」と同様のサービスを展開しており、「Fitbit」などのウェアラブルデバイスと連携し、従業員の健康管理を手軽に行える仕組みを構築している。

しかしながら、どれも良好な人間関係や金銭的安定性までには関与しておらず、あくまで健康管理にフォーカスしている。

「Virgin Pulse」のように、全体論的アプローチを推進するサービスは日本にはまだ浸透していないと言える。

7.ウェルネス・ウェルビーイング分野の展望

「Virgin Pulse」を始めとし、米企業が経営においてウェルネスやウェルビーイングを重要視する背景には、ミレニアル世代(1980年代から2000年代初頭生まれ)に対応していこうとする姿勢がある。

一般的に、給料よりも企業文化で会社を評価する傾向があるミレニアル世代が、企業に対して貢献意欲を持ち、持続的に勤務したいと思えるような環境を作るためには、彼らの健康と幸福感を最大限に伸ばすプログラムが欠かせないという考え方が主流になってきた。

こうした時代背景を踏まえると、ウェルネス・ウェルビーイング分野が今後ますます成長していくのは必然的と言えるだろう。

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お申し込み:
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