こんにちは、HR Techナビ編集部です。2018年1月23日にHRTech イベント「HR Tech 90」を開催いたしました。今回のテーマは「組織・従業員エンゲージメント」と題して、第一部は組織と企業のエンゲージメントを高めるインナーマーケティング事例について、エンゲージメント経営サポートツールTUNAGを提供している株式会社スタメン取締役COO大西 泰平さんにお話いただきました。以下に本イベント前半部についてのレポートをお届けいたします。
Human ResourcesとTechnologyをあわせた造語であり、テクノロジーを活用し人事領域の業務最適化を図るサービスのことを指す「HR Tech(HRテック)」。
「HR Tech×〇〇」として、HR Tech(HRテック)に関するあらゆるテーマを取り上げ、1回あたり90分のイベントでネットワーキングとノウハウのシェアの場を作るという目的のもと、本イベントを開催しています。
【過去のイベント】
2017年10月21日開催AIで劇的に変わる営業の働き方!HRTech90#1
2017年11月21日開催HR Techで成果のあがる組織と人をどう作るのか?HRTech90#2
2017年12月18日開催リーチできなかった層にリーチをすることが採用成功の秘訣?HR Tech90#3
大西 泰平氏(株式会社スタメン取締役COO)
1984年生。大阪府出身。筑波大学卒業後、広告会社 大広に入社。大手広告主の広告戦略をプランニングする中で、エイチームの加藤と出会う。2012年からファーストリテイリングのユニクロ事業に従事。その後デジタルハリウッドやフィリピン・セブ島の語学学校に就学。帰国後、2014年よりnanilani, inc.でフロントエンジニア、Sekai Labでベトナム拠点事業責任者としてキャリアを経る。2016年8月に取締役としてスタメンに参画。代表の加藤と共にゼロから事業立上げを行っている。
エンゲージメント経営サポートツールTUNAG:https://tunag.jp/
現在は、多様な働き方が可能になり、雇用の流動化、採用費の高騰、離職率の高まりも進んでいます。そこで、より魅力的な企業へ成長していくためには、企業と社員間の繋がりを強化していくことが鍵となります。具体的には、①企業と従業員の縦の関係性を深める、②従業員同士の横のつながりを強化する、この両方を伴うことがエンゲージメントを高めるうえで大切です。
ですが、現状はエンゲージメントに投資できていない会社が多いです。費用対効果が見えにくい分野であるため、売り上げや利益に効果があると捉えにくく、投資が遅れてしまうのです。しかしながら、エンゲージメントが高い会社は、収益性、生産性が高く、品質欠陥が起きにくい、転職率が低い、事故が少ないという指標が出ているのも事実です。システムを構築するまで・効果を実感できるまで時間はかかりますが、だからこそ少しずつの変化を可視化し継続していくことが大切です。
エンゲージメントを高めるための海外のインナーマーケティングのサービスをいくつか例に上げてみます。
①PulseSurvey(定点観測従業員サーベイ)…例:Glint
インナーマーケティングといっても、やはりマーケティングなので、PDCAをうまく回すことが大切です。ですから、まず従業員のエンゲージメント状況の調査をし、現状を把握する必要がありますよね。そして、解決すべき課題や施策の目的・目標を明確化して方針を定めていきます。
②ExperientialRewards(報酬プラットフォーム)…例:BlueBoard
BlueBoardは、体験型の福利厚生サービスです。人が“体験”したことは誰かに語りたくなる、という心理を活用しています。例えば、会話の話題で「会社から○○をもらった」というより「会社からのインセンティブでスキューバダイビングに行ってきた」、と言う方が話は広がりますよね。ですから、体験型を重視しています。
参考記事
世界最大級のHRTechイベントで優勝、「BlueBoard」が評価される理由
③EmployeeRecognition(認知承認システム)…例:Tapmyback
このシステムでは、従業員が組織のビジョンや行動規範に対して、積極的に取り組んでいる、ということを「見える化」します。日本でも昔からあるサンクスメッセージのようなものです。
④ImproveCommunication(社内交流促進システム)…例:CoworkerCoffee
社内の交流を図るために、異なる部署間でシャッフルランチなどを行う企業もありますが、日程調整が面倒になりがちですよね。そこで、コワーカー講義のマッチングや日時設定を自動化し、部署間を越えたコミュニケーションを促進しています。
概要:内定者から経営幹部まで誰でも参加可能。年間1000件ペースの応募があり、社内にしっかり根付いた新規事業コンテストになっている。毎週応募ができ、ダイアモンド賞100万円、アイデア賞5万円がもらえる。何度も応募すると、抜擢の機械が増える。
このコンテスト開始当初は、14件の応募と非常に少ない数でした。しかし8年間で75倍の1,055件にまで伸びたのです。施策の盛り上がりにおける大きな原動力となったのが、下記のような工夫です。
現場のPJメンバーが従業員一人ひとりに直接参加を依頼
1対1でのコミュニケーションによって、当事者意識を高めたのです。スルーされていた一斉送信のメールよりもずっと効果がありました。
単純かつアナログな手法ですが、こういった手間暇を惜しまないアクションが大きな成果を生み出すことがインナー向けの施策では実際によくあるのです。
上記のサイバーエージェントさんを筆頭に、日本でも社内の結びつきを深める取り組みを積極的に行う企業が増えています。その例を他にもいくつかご紹介します。
月に一回定例の交流会(ピザパーティー)を開いている。これは、リファラル採用に繋げることを目的として、従業員の紹介なら誰でも交流会に参加できる、というルールがある。この施策で注目すべき点は、2つ。まず、毎月実行を継続することで、交流会の認知度向上につなげている点。そして、リファラル採用のゴールを明確にする、という点。いきなりリファラル採用をする、ということではなく、まずは交流会に人を呼んでくることをゴールとしている。
自分の居場所なんだと意識してもらうために、Englishネームを必ずつける、というのを社内のルールにしている。例えばアルバイトやパートを「パートナーさん」と呼ぶ。また、名刺にもこの名前を記入し、会話のネタにしている。
グルメ系のサービスであるため、グルメに関して多くの知識が必要。そこで、社員がランチに行くときタクシー代を会社が負担。ただし、他部署のメンバーが必ずいることを条件とし、異なる部署間の交流を図っている。
アルバイト・パートの方もプロジェクトの企画、社内SNS運用や表彰制度に参加してもらうことで、
このように、インナーマーケティングにもいろんなパターンやアプローチがあります。ただし、大切なことは、1つ1つの取り組みがきちんと効果を生み出すことですよね。そのために、活動目的を「目的化」しながら、実際のアクションや反響を「可視化」することがとても重要なのです。成果をきちんと明確にするために、PDCAを早く回していきましょう。その際、最初からリスクを気にしすぎるのではなく、企画2割/運用8割のスタンスを心掛けることも忘れずに。
また、社内の結びつきを深める取り組みは、役職の位が高い人が積極的にやるほど効果があります。従業員のエンゲージメントへのアクションを称賛する雰囲気づくりも、取り組みを継続する上で大切なことです。そのために、アクションそのものを従業員の評価査定に組み込む、というのも一つの具体的な手法です。
いろいろな事例を用いて説明しましたが、どんな活動であれ頑張りすぎると続かないんですよね。ですから、ハードルを高くしすぎず慎重になりすぎず、質と量のバランスを意識しましょう。
組織は人の集まりなので、やはり繋がりを形成することが大切です。ですから、一人ひとりにフォーカスした「点」となる制度を作るよりも、繋がりを育むために1つ1つの取り組みが「線」となり「面」へと昇華されることを意識して施策を企画・運用していくと良いかと思います。組織活性化の施策を「習慣化」できるところまで自走化することができれば、組織や企業のエンゲージメントの向上が実現できるのだと考えています。
次回のHR Tech90は、ゲストは株式会社ペイミー 代表取締役後藤 道輝氏および株式会社ハッカズーク 代表取締役CEO鈴木仁志氏をお迎えして
「採用コストを下げて、社員定着率をあげる方法論」をテーマに開催いたします。
日時:2018年5月15日19時00分〜22時00分(18時45分開場)
場所:港区赤坂3-17-1 いちご赤坂317ビル 5F
対象者:HR Tech事業者、HR Tech活用したい人事担当者
定員:30名
参加費:500円
主催:一般社団法人日本中小企業情報化支援協議会
協力:株式会社ウィルグループ
URL:https://hrtech90-08.peatix.com/view