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日本最大級のエンプロイー・エクスペリエンス特化イベントEmployee Experience Summit レポート

2018年3月7日(水)にNagatacho GRIDにて、株式会社おかん主催「Employee Experience Summit 」が行われた。200名近くの経営者、人事・総務担当者が参加し、活発なディスカッションが行われた。本イベントの様子の要約をレポート。

Employee Experience Summit とは?


「Employee Experience Summit (エンプロイー・エクスペリエンス・サミット / 通称 EX Summit ) は、エンプロイー・エクスペリエンス (従業員が企業や組織の中で体験する経験価値) の向上を実現したい、経営者と総務・労務・人事担当者が集う日本最大級のカンファレンスイベントだ。
URL:http://exsummit.jp/

管理部門こそ花形部署へ!これからの企業経営を変えるのは攻めの管理部門!

スピーカー

スピーカー
古藤 遼氏
ヤフー株式会社 コーポレートグループコーポレートPD本部働き方改革推進室 室長

岡田 大士郎氏
元株式会社スクウェア・エニックス 総務部長

田中 公康氏
デロイト トーマツ コンサルティング合同会社 ヒューマン キャピタル ディビジョン シニアマネジャー

本セッションは、ヤフーでのオフィス移転をはじめとした働き方改革推進を進める古藤氏、元スクウェア・エニックスの総務部長を務めいまは日本ライフシフト協会理事の岡田氏、デロイトトーマツの田中氏によって行われた。
このセッションのなかで絶えず言われていたことは、与えられた仕事をこなすだけの管理部門というイメージから、社員が気持ちよくワクワク働ける環境を作る管理部門への変革だ。経営者自身働きかた改革の推進を進める意欲があり「攻めの管理部門」に対する理解がある企業と、経営者自身が管理部門を「コストセンター」として捉えている会社でのアプローチの違いや、現場での取り組みについてのディスカッションが盛り上がった。例えばヤフーにおいては経営トップの理解もあるため、社員への変革を促す施策立案について力をいれていた。また、スクウェア・エニックスにて総務部長を務めた岡田氏は、自身のアメリカでの社長経験を元に総務は経営者のhappyと社員のhappyをつなぐプロデューサーの役割があると主張した。
そのほかにも管理部門のオペレーション業務の関心ごとはアウトソーシングからRPAなどの機械化に移行しており、オペレーション中心のイメージからクリエイティブベースの業務への変わっていくという田中氏の主張など、スピーカーの多様なバックグラウンドからの意見が聞けたセッションとなった。

働きやすさを可視化する!官民の実践者・識者が意見する、働き方改革はどう計測し評価すべきか?

スピーカー

平井 孝幸氏
株式会社ディー・エヌ・エー CHO室 室長代理

藤岡 雅美氏
経済産業省 経済産業政策局 産業人材政策室 室長補佐

続いては株式会社ディー・エヌ・エー平井氏と、経済産業省 藤岡氏によるセッション。
ここでは働きやすさや改革の際にとわれる可視化や効果検証をテーマにディスカッションが行われた。平井氏はCHO室立ち上げ人でありディー・エヌ・エー社の健康経営の推進に取り組んでいる。立ち上げ時経緯や取り組みについて話した上で、健康経営において一番重要なのが「ストレスフリー」そのため、禁煙の取り組みについてもいきなり禁煙の施策をするのではなくて、加熱式たばこへの移行などを進めたうえでの段階的な移行を促すなど社員の現実を見た上で施策を打っているだと具体的な事例を紹介。進める上でのポイントは「プロジェクトベースではじめること」と平井氏はいい、最近の社員の意識変化についても言及した。
現在の部署を担当する前に健康経営を推進する立場にいた経済産業省 藤岡氏は、健康経営に導入に際しての調査資料などを用いて具体的な試算結果などを紹介し、日本においては生産性の低さより会社に対するエンゲージメントの低さが問題ではないか?と指摘。また、働き方会改革を進めていく中で、学び直しの必要性がうまれてくるため政府としての取り組みについても説明した。

なぜ急成長する企業は働く環境に投資するのか?

スピーカー

上田 祐司氏
株式会社ガイアックス 代表執行役社長

青木 耕平氏
株式会社クラシコム 代表取締役

宮田 昇始氏
株式会社SmartHR 代表取締役

最後のセッションは、株式会社ガイアックス上田氏、株式会社クラシコム青木氏、株式会社SmartHR宮田氏らによるセッション。
会社のスタンスとして大きな違いがあったのはガイアックス上田氏とクラシコム青木氏。
社員に対して将来の不安を減らす取り組みをなくすために力を入れる青木氏に対し、ガイアックス上田氏は会社に依存せずに自立できるような仕組み作りなどに力を入れている。各社のビジョンや採用戦略や従業員構成が影響を与えていると思われる。
Smart HRについてはベンチャーとして世界を変えたい人が多く入社するため、その思いに答える経営の実践や、社員のプラスとなると判断するものにはどんどん投資する(例えば部活動制度など)と宮田氏は主張。
このような議論から「EXを一番高める秘訣は、理想にちゃんとむかようにすること、事業の面白さや課題の面白さを追求することにある。そうすることでマネジメントコストというのは一気にさがるのでは?」と青木氏。
この議論以外にも、社員に納得してもらうための各社の施策やコミュニケーションを深めるコツなど人事施策として有用というものだけではなく、戦略目線での考え方など経営者にとっても人事・総務にとっても有益なディスカッションとなった。

変わる人事・労務・総務(管理部門)の役割

本イベントで一貫して伝わってきたのは会社のオペレーション業務を担う管理部門像から、新しい経営や働き方を創造するための新しい機能が必要となるというメッセージだ。
一番身近なステイクホルダーである従業員の幸せと会社の幸せを両立させるためのプロデュース、会社として次のフェーズへ成長するための戦略や働き方の提案など、従来の定型業務を効率よくやるという形ではなく、新しい価値を創造する、価値創造ができる環境をプロデュースするような仕事が人事・労務・総務などの業務についている人間には今後求められる。先進企業ではすでに実践しているが「あの会社は特別だから」と他人事になりがちだ。このようなイベントを通じて変革のための「考え方」「知識」「ネットワーク」を持ち帰り、明日から実践をする企業が増えることを願ってやまない。