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【イベントレポート】HR Tech GP 2018 Final開催、次世代の人事を支えるHR Techサービスはこれだ!

働く領域の課題解決に貢献するHR Techサービスを提供するベンチャー・スタートアップの中から、優秀者を表彰すべく開催された「HR Tech GP」。

その公開最終選考会「HR Tech GP 2018 Final」が2018年7月10日に住友不動産六本木グランドタワー(東京都港区)で開催されました。主催はHR Tech GP運営事務局(株式会社ウィルグループおよび一般社団法人日本中小企業情報化支援協議会)。

「HR Techで世界を変えろ」をコンセプトとしたHR Tech GP。ここでいう“世界”とは“人事の世界”のこと。来場者の多くを占める人事担当者に有益なHR Techサービスを知っていただき、人事の仕事の仕方や時間の使い方、今後の施策に変化を起こしたいという願いが込められています。

応募のあった国内外多数の企業から書類審査を勝ち抜いたファイナリストは8社。このなかからグランプリ、人事賞、働き方改革賞、オーディエンス賞がそれぞれ1社ずつ、以下5名の審査員により選出されます。

内藤 研介氏 株式会社SmartHR 取締役副社長 兼 CPO(最高プロダクト責任者)
澤山 陽平 氏 500 Startups Japan マネージングパートナー
石黒 卓弥 氏 株式会社メルカリ People Partners Manager
島田 由香氏  ユニリーバ・ジャパン・ホールディングス株式会社 取締役 人事総務本部長
大原 茂 氏 株式会社ウィルグループ 代表取締役社長

各社に与えられた時間は6分間のピッチと4分間の質疑応答。審査員および約150名の来場者を前に、代表者がサービスの内容と課題解決にかける熱意を語りました。以下内容を登壇順にご紹介します。

採用におけるミスマッチをなくす「GROW360

登壇者名:福原 正大 氏
Institution for a Global Society株式会社
代表取締役社長

“採用にまつわることで不幸になる人を0にする”がコンセプト。適した人材を採れない・適さない人材を採ってしまうなどの、採用におけるミスマッチを無くすサービスです。

ミスマッチが発生する原因は、思っていることとリアリティの齟齬。企業が実際に求めている人材と、採用面接で重視するポイントが食い違ってしまうことが多いのが現状です。その大きな理由が採用担当者の脳に潜む、無意識のバイアス。

このバイアスを除去すべく、“評価者を評価する”手法を取り入れたのがGROW360。採用担当者をテスト分析し性格やクセなどから評価バイアスを発見、AIで補正した結果を返します。これにより、求める人材と実際に採用する人材が適合する仕組みです。

クラウドメンターサービス「YeLL

登壇者名:北村 勇気 氏
エール株式会社
事業開発リーダー

社員それぞれに社外メンター「クラウドサポーター」をあてがうサービス。性格診断をもとに、最適とされるサポーターがマッチングされます。年齢・キャリアともに多彩なサポーターが、個人に合わせたコミュニケーションで社員のモチベーションをアップ。上司や同僚とは話しにくい内容も気軽に話せるといったメリットも期待できます。

“信頼してくれる人が一人でもいれば、人は前に向かって歩ける。”サービス着想のベースは北村さん自身の学生時代の経験。いじめや友人を失うといった孤独を感じる体験があったからこそ、認められる喜び・本当の味方を得たときの喜びがある。そんな想いがサービスに表れています。

企業と企業OB・OGをつなぐ「Official-Alumni.com

登壇者名:鈴木 仁志 氏
株式会社ハッカズーク
代表取締役CEO

企業とアルムナイ(退職済みのOB・OG)との関係価値を最大化するサービス。退職で関係を終わらせず、双方にとってメリットのある形での継続をサポートするプラットフォームを提供します。

企業側のメリットは再雇用などによる採用・育成コストの削減、業務委託先の獲得、口コミ向上、業務委託パートナーの獲得など。アルムナイ側に一部の福利厚生・施設利用などの権利を継続して提供することで成り立たせます。

社員とアルムナイ、アルムナイ同士がつながるサービスは数あれど、企業とアルムナイを互いにメリットのある形でつなげるサービスはこれまでありませんでした。企業を辞めた人=裏切り者といったネガティブなイメージを無くし、退職後も信頼関係を積み重ねていく。新たな価値を掘り起こしたサービスです。

適性診断による人材採用のマッチングサービス「ミツカリ

登壇者名:表 孝憲 氏
株式会社ミライセルフ
代表取締役社長

適性診断による人材採用のマッチングサービス。企業と求職者の“価値観のミスマッチ”をなくし、離職率の低減や社風になじめず活躍できないなどの不幸をなくしたいという思いから開発されました。

求職者だけでなく、採用者をはじめとした企業側の人員も診断を受けるのが特徴。双方の結果をもとにマッチ度を提示、求職者の性格や価値観が社風に合うかの判断を助けます。また面接で聞くべき質問も提示してくれるため、より精度の高い面接を行うことが可能です。

マッチング結果は採用だけでなく、採用後の部署配属時にも力を発揮。適材をより適所へと導いてくれるサービスといえます。

企業の“働き方”にフォーカスしたデータベースサービス「Clarity

登壇者名:古谷 聡美 氏
株式会社Clarity
代表取締役CEO

企業の“働き方”にフォーカスしたデータベースサービス。福利厚生や男女比などの働き方に関わるデータや口コミなどを掲載します。※イベント開催時点で口コミ機能は未実装

仕事を探すとき、職務内容や給与待遇だけでなく、福利厚生や制度など「どのように働けるか」から探したい。そんな希望に応えるのがClarityです。“働き方軸でのマッチング”を掲げ、福利厚生・制度の一覧とその対象者などの情報を充実。企業間比較も可能にしています。

サービス開発のきっかけは、古谷氏自身が身体を壊し、女性が働き続ける難しさを実感した体験によるとのこと。自己実現の前提となる“快適に働けるかどうか”。従来のサービスとは違う切り口から仕事を探したいニーズに応えます。

組織を強くすること”に特化した「TUNAG

登壇者名:大西 泰平 氏
株式会社スタメン
取締役COO

“組織を強くすること”に特化した、企業内のエンゲージメント不足を解消するクラウドサービス。企業と従業員、従業員同士の関係を深める社内制度を提案から担います。さらにそれらをアプリひとつにまとめ、アクセスしやすい形で運用。経営理念やビジョンを浸透させ、コミュニケーションを増やすことで、離職率を低下させます。

各社既存の制度はもちろん、独自の診断により課題を抽出し、解決する制度を新たに提案。ひとつのサービス内で組織改善へさまざまな手を打てるのが強みです。

現在運用されている社内制度は総計2,000以上(イベント開催時点)。今後はさらに効果や効率の高い制度運用についてのノウハウが蓄積され、精度が上がっていく期待ができます。

国内初のクラウドRPAを用いたロボット作成ツール「BizteX cobit

登壇者名:嶋田 光敏 氏
BizteX株式会社
代表取締役 Founder/CEO

国内初のクラウドRPAを用いたロボット作成ツール。プログラミングや難しい操作は不要、専門知識のない人でもロボットを作ることができます。

エクセル表入力などの繰り返し業務をロボットに覚えさせて自動化することができ、経費精算などの作業に割くリソースを大幅削減。履歴書などの紙に書かれた情報を読み込んでフォーム入力していくことも可能です。ループやタイマー機能も搭載。クラウドのため初期設定の手間がなく、アップデートも随時対応しています。

人力で1時間かかっていたような作業が一瞬で完了し、ミスもなし。やるべき作業にリソースを集中させることができます。生産性を上げるだけでなく、残業を減らし、今後予測される働き手の減少をも補うツールといえます。

エンジニアのスキルを可視化するプログラミングスキルチェックツール「Track

登壇者名:山根 淳平 氏
株式会社ギブリー
執行役員

エンジニアのスキルを可視化するプログラミングスキルチェックツール。テスト作成から採点、評価までワンストップ・オンライン上で実施します。

エンジニア採用で難しいのがスキル評価。人事では判断が難しく、かといって現場エンジニアに工数をかけられない。その結果採用時にスキルを正しく判断できず、教育コストがかかってしまうことも少なくありません。

そんな問題を解決するのがTrack。さまざまなエンジニアスキルを評価できるテストを実施し、結果をもとに人事のみでの採用判断を可能にします。オンライン実施のため地方・海外からも受験しやすく、また「スキルで評価されたい」という優秀なエンジニアからの応募増加も期待できます。

初代グランプリは?

審査の結果、グランプリは「アルムナイ・リレーション」、人事賞は「ミツカリ」、働き方改革賞は「Biztex cobit」、オーディエンス賞は「TUNAG」が受賞となりました。選出基準と審査員による評価内容は次の通り。

グランプリ:Official-Alumni.com / ハッカズーク
グランプリはアルムナイ・リレーションを提供するハッカズークが受賞。従来注目されていなかったアルムナイにフォーカスしたユニークさ、またそのポジティブな方向性が高く評価されました。これまで企業各個レベルでの対応にとどまっていたアルムナイとの関係構築。そこへ着目する意識から広めていく期待も含め、審査員満場一致での選出です。

人事賞:ミツカリ / ミライセルフ
審査員が人事目線で使いたいと感じたサービスに贈られる人事賞は、ミツカリが受賞。企業の文化や風土といった“価値観”の部分にフォーカスした点が評価されました。また受検費用が安い・検査時間が短いなど導入のハードルが低く設定されている点も選出理由のひとつです。

働き方改革賞:BizteX cobit / Biztex
経産省が推進する働き方改革の視点から贈られる働き方改革賞は、BizteX cobitが受賞。“テクノロジーによりリソースをやるべきことに集中させる”というコンセプトは、ミニセッションの内容とも通ずる視点です。現在推し進める長時間労働の是正や、今後の日本で懸念される労働力不足解消に貢献するサービスとして選ばれました。

オーディエンス賞:TUNAG / スタメン
HR Techナビ上で事前に実施されたWeb投票で得票数の多かったサービスに贈られるオーディエンス賞は、TUNAGが受賞。総計3,500票以上の投票の中から、2位以下に200票以上差をつけてトップを獲得しました。

ミニセッション:HRテクノロジーと働き方改革(スピーカー経済産業省 白石紘一氏)

審査を待つ間には経済産業政策局によるミニトークセッションも実施。産業人材政策室室長補佐 弁護士の白石紘一氏から、人事におけるテクノロジーの必要性について話して下さいました。

今後の労働市場に起きるであろう、労働力の減少やキャリア観の多様化といった“働き手の変化”。従来の人事活動を支えてきた“勘と経験”のみで対応するのは難しくなってきています。それを助けるのがHR Tech サービス。人事の持つ勘や経験にAI・データなどのテクノロジーを融合させることで、多様化する労働者のニーズに合わせた人事戦略構築が見込めます。企業・個人双方の幸せを実現するために、今後の人事にはテクノロジーの下支えが必須とのことでした。

終わりに

人口減少社会への突入、労働者の多様化やテクノロジーの進化により、優秀な人材の確保と活用方法がこれまでになく重要視されている現代。人事に求められる役割やスキルは変化しつつあります。

時代の必要性に応じて生まれ、次世代の人事を支える数々のHR Tech サービス。今回のHR Tech GP Final 2018 では、そんな中でもより個性と可能性にあふれる展開をする8社のサービスを間近で感じることができました。人事としてすぐにでも取り入れたいものはもちろん、従来の常識を覆すアイデアに触れ、新たな視界が拓けた人も多かったのではないでしょうか。冒頭の「HR Techで世界を変えろ」という言葉の通り、人事の世界が大きく変わっていく可能性のエネルギーに満ちた会となりました。