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オフラインでの仕掛けには体験と共有が必要不可欠 -クラフトビールとアルムナイの不思議な関係

2018年7月に開催されたHR Tech GPで初代グランプリを獲得した株式会社ハッカズーク
このときに、グランプリの副賞としてクラフトビールをのこだわりを体感できるイベント「CRAFT BEER ROOM びあのわ」をキリン株式会社より贈呈されていました。

参考記事:HR Tech GP 2018 Finalを開催!ハッカズークがグランプリ獲得!


そして、この副賞を使って、2018年10月にアルムナイトというイベントをハッカズークさんとキリンさんを共同開催し、大盛況に終わったとのこと。

この出会いがきっかけで、今後も新しい組織と個人の関係創りのために連携をする動きが始まっています。その動きの背景にあるものは?新しい考えを社内外で広めるヒントを聞くために、株式会社ハッカズーク代表取締役鈴木仁志さんと、キリン株式会社デジタルマーケティング部高柳裕行さんにお話をしていただきました。

第1回目はなぜベンチャーと大企業が連携をしてオフラインでの体験作りに力を入れるのか、その背景について。

オフラインでの仕掛けには体験と共有が必要不可欠

–アルムナイトの実施だけで終わらずにその後もオフラインのイベントで連携を進めると聞きました。一緒に今後もイベントにすることになったのですね!

高柳さん
クラフトビールの魅力は「多様性」です。

「人それぞれ好きなものや好きなビールを飲むという文化を広げていきたい」という想いがまず我々の根底にあります。多様性を受け入れる、あたらしい選択肢を創るという価値観を持つ会社やサービスとはもともと一緒に活動できるとは思っていまして、新しい会社と個人の関係を創ろうとしているハッカズークさんのビジョンに共感してこれは今後も一緒にやろうとなりました。

–クラフトビールもアルムナイもこれまでの日本にはなかった言葉や概念ですもんね

高柳さん
ビールが持つ従来の固定観念を崩し、クラフトビールの楽しみ方を体感してもらうためにはリアルの体験が最もわかりやすいと考え、オフラインイベントにも積極的に取り組んでいます。数は少ないけども感度の高い人にクラフトビールという選択肢を知っていただきたいいう狙いですね。

とくにアルムナイの考え方に共感していただくような価値観を持っている人とは相性が良いだろうということが10月のイベントやってみて実感しまして、次の企画も検討しているところです。また、ベンチャーと一緒にやっていることキリンも新しいことをやっているというイメージを持ってもらいたいなという想いもありますね。

鈴木さん
ビールはすごくコモディティ化されていて嗜好品としてのイメージが確立されていますよね。社会に広く受け入れられている概念を覆していくという点においては、キリンさんがクラフトビールという新しいカルチャーを伝えて作っていく挑戦は、私たちがアルムナイというカルチャーを作る上での挑戦と同じだと思いました。

–どのような挑戦なのでしょうか?

鈴木さん
まず圧倒的に認知度が低いので認知度の向上ですね。アルムナイという言葉を聞いたことすら無いという人が大半だと思います。次に、我々のコンセプトを正しく理解して頂くことですね。それも、経営陣や人事など会社側だけでなく、事業部側、社員、アルムナイ、と皆んなに理解をしてもらわないとカルチャーが醸成出来ないし、機能しないです。

そのために今オンラインとオフラインを使い分けてマーケティングをしています。「アルムナイ」の認知度を高める取り組みはオンライン中心。「アルムナイ」に対する熱量や理解を上げていくには体験型のオフラインが良いですね。

-オフラインを活用して、理解を上げていくのはなぜですか?

鈴木さん
アルムナイを知っている人でも「アルムナイとは再雇用ですよね」「アルムナイ採用はリファラル採用の延長ですよね」という風に見る人も少なくありません。

人生設計が多様化していて、働き方も多様化している。そういう動きのなかで企業と個人の新しい関係として「アルムナイ」という考え方を企業も個人も受け入れてほしいという想いで活動をしています。

固定観念と異なる考え方の場合、理解を深めるためには体験をしてもらう場というのが必要だなと。

-私もアルムナイトに参加しましたが、クラフトビールを飲みながらアルムナイリレーションを体験できる場だと感じました。

鈴木さん
ありがとうございます。それともう一つには、その体験する場に参加するのにちょうど良い言い訳を用意することで、体験のハードルを下げたかったというのがあります。多くの参加者から言われたのは、すごく誘いやすかったし参加しやすかったということです。

元上司からいきなり連絡がきて前の会社の会議室によばれてお話しましょうといわれても、「なにがあったんだ!」となりますよね。

かといって、辞めた会社の人といきなり居酒屋で飲みながら話そうとなっても少し気まずい場合もあります。

アルムナイトはキリンさんの講師の方がアイスブレークをしてくれるため、アルムナイトで温まった後に二次会もすごく盛り上がったという声もいただきました。これはオンラインだけでは難しいと思います。

–キリンさんがオフラインベントに積極的に取り組んでいらっしゃるのはなぜでしょう?ますマーケティングのイメージがどうしてもあります。

高柳 さん 
本質的な理解を得るためです。
クラフトビールのことを知っている人は7-8割です。知っている人にクラフトビールはどういうものか?と訊くと10%ぐらいしかわからない。その10%も正しく理解してくれているかも怪しい。となるとクラフトビールが抱える課題は認知というより理解なんですね。

クラフトビールはなんだかよくわからないたまに飲むオシャレな高いビールという理解で、本質的な理解をしていただけていません。

鈴木さん
企業が自分たちの都合で再雇用したいのをうまいこと「アルムナイ」という言葉で騙しているんじゃないか?と思われているのも一緒ですね。

高柳さん
クラフトビールを理解してもらうためにどこで何を伝えるのか?というのは結構難しいです。個性的な味わいを楽しめる多様なビールの世界を伝えたいのですが、説明することも多いので、従来のマスマーケティングだとTVCMのような15秒のコミュニケーションでは良さが伝わらないし、語りきれない。オンラインの広告も色々とチャレンジしてきましたがあまり効果が実感できませんでした。

そのなかで唯一手応えを感じたのがオフラインのイベントでした。

-いわゆるコト消費の需要ですかね。

高柳さん
デジタル化しているからこそ特別な体験、自分だけの体験をSNSのアップして満足感を得たいという需要はもちろんありますね。

個性的な味わいを楽しめる多様なビールの世界を伝える、クラフトビールを飲むという文化をつくっていこうとするとやはりオンラインには結構限界があります。

飲んで五感で雰囲気を含めて感じてもらってはじめて本当の良さは伝わらないし、参加者の心に残らない。人数が少ないもののしっかりお客様の心に残していくと考えると効率は実は悪くないと思っています。

あと、クラフトビールは100円で買えるものではなく、300円近くするものなので買う理由を作るということが重要です。そこには正しい理解も必要ですよね。

理念に共感してもらって、さらに伝えたくなるそういう特別な体験にするためには掛け算が必要で、アルムナイトの取り組みは特別な体験とクラフトビールが結びつけられていた点でもよかったですね。

鈴木さん 
オフラインでの仕掛けには理念への共感と体験が必要不可欠で、共感と体験が生まれるのはストーリーがあるからですよね。アルムナイトのフィードバックであったのは「アルムナイとの再会という特別な体験とクラフトビールを結びつけるストーリーがあったからとてもよかった」というものでした。

アルムナイのコンセプトを受け入れてもらうために、理念に基づいたストーリーを正しく伝えて、体験してもらう。

行動してもらうために必要なのは体験なんですよ。

そういった意味でも、アルムナイトはコンセプト正しく伝えて行動してもらうための体験となりました。

アルムナイリレーションを活性化してカルチャーにするためには、体験と共感をしてもらって、その体験を共有してもらうことでより多くの人を巻き込んでいくというのが重要なんですよね。