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RPA活用で高品質のサービス提供が可能に -廣済堂ビジネスサポートRPA導入事例-

人事業務のなかには多くの定型業務があり、採用業務や労務管理の領域においてはRPAによる業務の自動化が期待できる。HR Tech GPで働き方改革賞を受賞した「BizteX cobit」を使って採用の定型業務の自動化にチャレンジをしている、株式会社廣済堂ビジネスサポート取締役大山洋介氏に話を伺った。
参考URL:【イベントレポート】HR Tech GP 2018 Final開催、次世代の人事を支えるHR Techサービスはこれだ!

定型業務をすべて自動化しても効果が上がるとは限らない

これまで人間が行なっていた手作業を自動化するRPA(ロボットによる業務自動化:Robotics Process Automation)は注目を浴びている。
ガートナージャパン株式会社調査「RPAに関する調査結果」によると国内では14.1%の企業が導入済み、6.3%が導入中、19.1%が導入を検討中という状況だ。
採用業務に限らず、限られた人数で業務を進めていくなかで定型業務の効率化は必要不可欠。RPAは規模の大小問わず欠かせないツールの一つとなるだろう。

人材派遣、人材紹介、採用アウトソーシング、フリーペーパー取次、エコファミリー新聞など幅広い事業を手がけている株式会社廣済堂ビジネスサポート。RPAを導入しているのはRPO(採用アウトソーシング)を行なっている仙台のOSセンターだ。

同社での導入の経緯について大山氏は次のように説明する。

大山氏:
「弊社は採用業務の媒体の掲載、応募者対応、簡易スクリーニング、面接日程の調整などRPO業務を行なっています。
 たとえば、飲食店のお客様は、営業時間中応募者からの電話やメールの対応ができないため弊社へ受付代行を依頼していただいています。
 このようなお客様の場合複数の求人媒体に同時に広告を出しており、ATS(採用管理システム)を使っていたとしても自動で連携できず応募者の一元管理に課題を抱えていました。」

応募者管理システムへ求人媒体からの応募者データ取り込みの自動化から始まり、簡易スクリーニング、応募者への連絡や面接設定などにおける業務やシステム同士の連携にはBizteX cobitを使用しているという。

定型業務はすべて自動化をしたら成果があがると思いがちであるが、実際は違うと大山氏。

大山氏:
「採用業務プロセスの自動化を進めてやってみてわかったことは、人が対応することで効果や成果があがる業務があるということです。
 応募者との面談設定をチャットボットで対応するサービスを提供したときの話です。お客様自身で対応いただいたときと比べても、応募からの面接参加率は変わりませんでした。
 しかし、応募者へのリマインド連絡などのやりとりに関して人が行うようにすると面接へ進む人数が一気に増え、ご利用いただいているお客様では、母集団に対し面接まで進んだ方が10%程度だったのに対し、30%まで上がったという事例もあります。」

大山氏:
「RPAを使って人件費はたしかに下げることができるかもしれません。
 人間がやることで精度があがるところ、成果が出るところは、コストをかけてでも人を雇ってでも対応した方がよいというのが当社の考え方です。」

RPAを採用業務に活用するなかで重要なのがノンコア業務とコア業務の見極め。
どのように同社は業務を見極めているのだろうか?

大山氏:
「弊社は常時採用業務をお手伝いさせていただいているお客様が30社ほどあります。
 まずお客様の業務プロセスごとに、人がやったほうがいい業務とロボットに任せたほうがいい業務に分けて一つ一つ効果検証をしています。
  RPAを使って自動化しても人と同じ精度が出せるもの、業務効率が上がるものを基準にしてコアとノンコアに分けています。企業によって採用プロセスが違うので、最終的には一社一社相談をしながら進めています。」

コアとノンコア業務の基準は、RPAなどのツールで回すことによって人が行う以上の成果が見込めるものというシンプルなものだ。定型業務を自動化するのではなく、定型業務のなかで人がやることで成果が上がるものは人がやるというルールができているところが特筆すべき点だろう。

人件費削減だけではないRPA導入の効果

RPAを活用することで作業時間が減り人件費が削減されるというのはわかりやすい効果であり、多くの企業が期待していることだ。同社の導入を決めた理由のなかに社員のリテラシー向上を挙げており、採用や教育に関してもプラスの効果が見込めることがわかった。

大山氏:
「定型業務を自動化することでマニュアルに記載する事項も当然減ります。新しく入ったスタッフの覚えることが減り教育コストが下がりました。またRPAを導入していくなかで業務プロセスを分けていることで繁忙期でのスポットでの採用も可能になりましたね。
 最終的には全部の業務を覚える必要はありますが、『ここの業務からはじめていこうか』ということができるようになり育成期間のロスも減りました。」

大山氏:
「BizteX cobitを導入することで業務効率化や人件費削減ができた分をサービス向上やお客様の価値をあげる活動にあてることで、サービスの提供価値が上げることができたのも大きな効果です。」

RPAツールを社内で活用するために必要なポイント

RPAツールは多種多様にあるがなぜ「BizteX cobit」を選んだのだろうか?

大山氏:
「BizteX cobitを選んだのはクラウド型のRPAツールであることが一番の理由です。
 無料トライアル期間もありましたし、月10万円なので仮に失敗したとしても社員のRPAリテラシーを高める教育だと思えばよいと考えました。
 また、アカウント発行に数の制限がないので、採用以外にも弊社の他の部門にRPAを導入するときも気軽にできるというのもよかったですね。」

他部門へアカウント発行をして採用業務以外への展開を進めようとしている同社。採用業務での導入が一気に進んだきっかけについては次のように語る。

大山氏:
「2018年3月新卒採用本格化のタイミングに合わせて一気に通常月の10倍以上企業様の採用業務のサポートをすることになりました。仙台のOSセンターの限られた人員で、しっかり成果を出す必要があるというゴールが明確にあったのがよかったです。さらに採用のサポートという業務範囲を絞り、ロボットもシンプルなものを作って回すこともでき、社員も効果を実感できたのは大きかったです。」

大山氏に聞くと、BizteX cobitを使い、ロボットを作り運用をしているのは現場の担当者であるという、導入の課題などはなかったのだろうか?

大山氏:
「導入にあたって実は困ったということってありませんでした。
 私たちとしてどの業務でどうRPAを使うのか明確だった点もありますが、
 BizteXのサポートセンターさんには非常にお世話になりました。」

大山氏:
「私たちの実現したいことに関して、どうやったら実現できるのか一緒に考えてくれましたし、RPAを回しはじめて止まったときもチューニングについてもサポートいただいています。なので、もしかしたら困ったのはBizteXさんのほうかもしれませんね笑」

順風満帆にRPA導入を進めているように思える同社でも他部門の展開はまだまだ理想の状態とはいえない。

大山氏:
「RPAに対して好奇心をもって活用についてもアイデアを出して、RPAの導入の役割を担ってくれる社員も育ってきました。他の部門を巻き込んでRPAの可能性について知ってもらう啓蒙も少しずつやっています。 
 RPAを活用したほうがいい業務はたくさんあるはずで、まだまだ自分たちで活用イメージをもっていない社員も多くいます。
 最終的には自分たちの業務でどんどん活用して教えあえるというのが理想です。そのためにOSセンターの事例を社内でどんどん広げていきたいです」

大山氏の話をまとめると、RPAツール導入するときのポイントとして予算ももちろんあるが以下の点が重要であろう。
・RPAを使って何を実現したいかが明確か?
・早め小さめの成功事例を作り啓蒙を担ってくれる社員を見つけ出す
・自社社員のリテラシーにあわせたサポート体制があるかどうか?
・横展開をする場合にアカウントの制限やロボット数の制限があるかないか

今後の展開

テクノロジーの活用に積極的な同社だが、HR Techに関しての課題について次のとおりに感じている。

大山氏:
「HR Techサービスがありすぎるのが1番の課題だと思っています。一方で、BizteX cobitみたいに、気軽にツールとツールを繋げてくれるサービスはもっと出てきてもいいですよね。
 あとは、HR Techは素晴らしいものであり素敵なものではありますけど万能ではありません。コア業務とノンコア業務の見極めを間違えると逆に効果が落ちる可能性があると思います。効率は上がっても効果が落ちたら本末転倒です。
 弊社でもMAツールなど入れて採用プロセスの自動化に取り組んでいるからこそ言えることなのですが、すべての自動化がよい訳では無いです。」

東北や北陸エリアの企業もクライアントに持つ同社らしい展開について聞くことができた。

大山氏:
「人材の採用は特定の地域に限らずHR Tech活用の恩恵を受けることができると思います。
 ひとつ例をあげると、求人媒体経由で1年間広告を出し続けた企業様が応募者のデータをプール化し連絡をとれるようにする。翌年求人広告出さなくても、アルバイトの採用などであれば成果を出すことができるのではないでしょうか?」

大山氏:
「自社でもRPAやHR Techなどのテクノロジーの活用はしていきます。また、大都市圏に人口が集中する一方で人口減少が深刻化されている地域があることを考えると、補う手段のひとつとして、そのような地域の企業様にとって機能や価格も使いやすいサービスを弊社で選んで導入支援をしていくという事業についても今後は展開していきたいです。なにしろ大都市圏以外の地域にも元気でよい会社さんがたくさんありますから。」