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企業と個人が対等な関係を創るために必要なこと-クラフトビールとアルムナイの不思議な関係-

2018年7月に開催されたHR Tech GPで初代グランプリを獲得した株式会社ハッカズーク
このときに、グランプリの副賞としてクラフトビールをのこだわりを体感できるイベント「CRAFT BEER ROOM びあのわ」をキリン株式会社より贈呈されていました。

参考記事:HR Tech GP 2018 Finalを開催!ハッカズークがグランプリ獲得!


そして、この副賞を使って、2018年10月にアルムナイトというイベントをハッカズークさんとキリンさんを共同開催し、大盛況に終わったとのこと。

この出会いがきっかけで、今後も新しい組織と個人の関係創りのために連携をする動きが始まっています。その動きの背景にあるものは?新しい考えを社内外で広めるヒントを聞くために、株式会社ハッカズーク代表取締役鈴木仁志さんと、キリン株式会社デジタルマーケティング部高柳裕行さんにお話をしていただきました。

最終回にあたる3回目は企業と個人の関係構築についてです。

参考記事:
・第一回オフラインでの仕掛けには体験と共有が必要不可欠
・第二回あなたの会社のチームビルディングに0次会はあるか?

企業と個人が対等な関係を創るために必要なこと

鈴木さん:ここまでは社員とアルムナイや、アルムナイ同士という個人の関係を中心に話をしてきましたが、企業とアルムナイの関係という視点でも話しましょう。そもそも、私は個人と企業の関係が対等ではないケースが多いと思ってます。

企業が社員を雇っていて、辞めたら裏切り者扱いして関係を立ち切るというようなスタンスだと、個人が複数の企業と対等な関係を築くことが難しくなります。

個人と企業が対等な関係を築くためには、企業が多くの個人と繋がっているように、個人も多くの企業と繋がっていることが必要だと考えていて、過去に働いた企業とアルムナイとして関係を持続することが、個人と企業の対等な関係構築になるきっかけとなればと良いと思っています。


——私としては、会社が守ってくれるからそれでいいやとなって主体的に動かない人が結果的に増えているように思います。


鈴木さん:社会背景を考えると、個人は主体的にキャリア形成をする必要が高まってきていますが、個人にとって主体的なキャリア形成って簡単ではないですよね。だからこそ、個人側から見ても辞めた会社との関係は大切にすべきだと思います。


高柳さん:しかも、もともとはめちゃくちゃ優秀な人達なんですよね。大企業に入社する時点では一握りの競争を勝ち抜いたすごく優秀な人材だったはずなのに、会社に守られて会社が提示したキャリアに沿って経験を積んで、主体性がなくなってしまうと言う例もあると思います。

本当に日本経済にとっても勿体無いですよね。


鈴木さん:そうですね。

個人側に危機感を持たせるというだけじゃなく、会社側にも危機感が必要ですよ。

企業と個人との関係を考え直さないといけないし、「定着」という言葉を再定義しないといけない。

本当に必要な人材と持続的な関係性を持つためには、その人に正社員として雇用関係でフルタイムでコミットしてもらうだけが定着ではなく、場合によっては会社を辞めてもパートナーとして業務委託契約で50%の時間をコミットしてもらうという新しい形で「定着」してもらうためにはどうしたらいいのか?と考えることも出来ますよね。

私自身、昨年起業するまで在籍していたレジェンダでは、退職後の今もフェローという役割をもらって退職直後から一緒にお仕事をさせてもらっています。

自分の得意とする新規事業開発領域を評価しもらって、それを発揮する機会をもらっていることにとても感謝をしていて私自身のコミットメントは非常に高いですし、、とても良い関係ですね。

こういう関係は私個人にとってはもちろんですが、会社にとってもプラスだと思っています。


——そこってやっぱり体験しないとわからないですよね。


鈴木さん:得意なことや好きなことにフォーカスできるようになることで、人生設計の多様性が高まればいいな思っています。

転職や複業など個人のキャリア設計や人生設計の多様性が高くなってきている一方で、自分の得意なことや好きなことにフォーカスして、そうじゃないことはそれを得意な人に任せようみたいな考え方は否定的な見方をされることもありますよね。

何かのスペシャリストで組織マネジメントがどうしても苦手な人が組織から飛び出したり、立ち上げフェーズが得意な人がそのフェーズの会社を転々としたりっていうキャリア設計も全然良いのに、「そんな職を転々として大丈夫なの」と言われたり。キャリア設計や人生設計にはもっともっと多様性があって良いと思います。

一方で、個人の多様性を認めることは求めるのに、企業の多様性を認めないのは良くないです。

副業の話もそうですけど、例えば「うちの会社は副業をしないでうちの仕事だけにフォーカスする方が合っている」という会社もあっていいと思います。

企業にも多様性がないと金太郎飴みたいになっちゃって、結果的に個人は自分の首をしめることになっちゃうじゃないですか。

アルムナイも全く一緒で、みんなに考えてほしいんですね僕は。

受け入れるかどうかは、個人側も企業側も決めてもらってその上でこれは「うちの会社は違う」というのもいいんですよ。

その方針を決めた上で、合わないなっていう個人は入らなかったらそれはそれでハッピーじゃないですか。


——今の話で思い出したのは「働き方改革」の議論です。どうしても残業時間削減ばかりフォーカスが当てられていて本質的ではない議論もありますが、「働き方改革」という言葉のおかげでこれまでの働き方を疑うきっかけになりましたよね。


高柳さん:実はクラフトビールも同じような戦略なんですよ。

我々キリンビールがなぜこういう事業をやっているのかというと、クラフトビールっていう言葉を提示することによって、ビールってたくさん種類があったんだなと気づいてもらう、そして今まで飲んでいたビールをあらためてすごいと実感してもらうということを狙っています。

実は一番搾りって海外のブルワリーの方に工場見学してもらって製法を聞いてもらうと、「なんてクレイジーな製法なんだ」と言われることもあるんですよ。

一番搾り麦汁しか使わないというのは究極にこだわって品質管理ができているからこそできる製法なんです。このすごさは、ビールにはたくさん種類があって職人がこだわってつくっているということを認識してもらうとよくわかると思うんです。

クラフトビールを通して職人のこだわりを知って、さらに一番搾りなど普段お楽しみいただいているビールの良さに気づいてもらうということを考えています。

決してクラフトビールは以前のビールの価値観を否定していません。新しい価値観を提示することで、これまでのビールについても価値が再定義されて結果的にカテゴリー全体が活性化するということを私たちは目指しています。

純粋にビールを飲むときに選択肢が広がると楽しみも増えますしね。


鈴木さん:クラフトビールやっぱ嫌いだなっていう人も出ると思うんですよ。

僕アルムナイも絶対あって、「やっぱりなんか気まずいな」とか「この人やこの会社とは合わないな」とかあっていいと思います。


——そうですよね。


鈴木さん:日本と海外を比較すると日本の判断基準って良い悪いなんですよ。

海外の判断基準は、合う合わないが多いんです。

人事の採用の中でいっても、リファレンス(reference)を取るときは「こういう業務内容やります。合うと思いますか合わないと思いますか」でどっちかを聞かれます。

日本ってリファレンスを取ることもあまりないですし、その人自身のことについて良いか悪いかを聞くことが多いですよね。

本当は、合うか合わないかの判断をしてもらうのが必要だと思います。

高柳さん:合う合わないの話でいうと人事異動があった場合、「なんか私がダメだったのかな」と思う人が多いですよね。

会社として異動先の仕事のほうが合うから配属したのかもしれないのに「やっぱり私がダメだったから飛ばされた」とか。飛ばされたっていう表現もういい悪い文化の象徴な気がしますね。


鈴木さん:働く上で結局自分が得意か不得意かってありますよね。

自分にとって不得意なことを知ることで、自分が不得意なことが得意な人と一緒に仕事することで生産性は絶対上がりますよね。

「得意なことは自分でやって、不得意なことは他の人に任せよう」という考えが浸透していくことで、好き嫌いだけで働く人を選ぶのではなくて、得意・不得意で働く人を選ぶことにもつながるんじゃないかなと思います。

僕自身は大学や仕事など10年以上海外に住んでいたので実体験でありますが、海外のドラマとかでも「あいつは嫌なやつだけど認める」みたいなシーンって結構あるじゃないですか?

日本人って結構好きか嫌いか、好きな人が全部いい人みたいなところあるじゃないですか。

日本人って一個できると全部できると思うんですよ。

なんか営業できる人はほとんどのこと得意と思われがちなんですけど、営業以外のことが得意とは限らないですよね。


高柳さん:評価する側もされる側もやっぱりその人が好きか嫌いかになっちゃうと一番不幸ですよね。合う合わないで評価した方が絶対いいですよね。ビールもそうであってほしいって言うか、無理やりこじつけると。(笑)

(編集:櫻木諒太 文:中村優)