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シリコンバレーのHR Tech企業に訊く!アメリカで起きている大きな変化

HRWins の記事によると、2019年の第一四半期のHR Tech関連の投資額は約17億ドルで、調達件数は75件。そのうちの47件はアメリカのVCによるものでHR Tech市場をアメリカが引っ張っているといえる。今回は、VCV.AI CEOのArik Akverdian 氏に話を聞いた。

アメリカ シリコンバレーに本社があるVCV.AI。顔と音声認識の技術を活用して、求職者を自動的にスクリーニングするシステムを提供している。
参考:音声認識や顔認識機能で採用効率化チャットボット(chatbot)「VCV AI」
https://hrtechnavi.jp/overseas/chatbot-vcv/

2019年4月に日本法人も設立し、アメリカだけでなくグローバルに展開している会社である。

 

アメリカのHR Tech市場で起きている大きな変化

HR Tech領域でのアメリカで起きている変化として人事領域でのAI活用が一つ大きなトピックになっているという。日本と同じようにHR Tech市場は成長しており、多くの企業がHR Techサービスを利用しようとしているが、課題としては「採用候補者を見つける」ことと「採用候補者を見つけた後の選考に関して」だとArik氏。
採用候補者を見つけた後の選考に関しても課題になっている。

採用に関する課題は日本も同様にあるが、アメリカ特有の大きなトレンドとして「ダイバシティー」が挙げられる。日本でも大きなムーブメントとなった”#Me Too”が転機となった。

「アメリカは多種多様な民族が混在している特殊な国で、もともとダイバシティーは重要なトピックでした。大きな転機となったのが2年前の#Me Too運動です。これを機に多くの企業が男女のポジションや給料について向き合うことが求められました。その結果、今では白人、黒人、男性、女性、LGBTの人がいるかなど、自分たちの組織に多様性があることを表現するようになりました。これはヨーロッパや日本よりもアメリカだからこそより注目を浴びていると思います。」

2018年のHR Technology Conference&ExpositionのPitchfestで優勝した「Blendoor」は、まさに採用時の経験に基づく偏見を排除するためのツールであり、Arik氏がいうダイバシティーのトレンドがあったことがうかがえる。

Arik氏によると、日本と同じようにエンゲージメントも盛り上がりは見せているが、オンボーディングの方がトピックとしては盛り上がっているよう。

 

注目しているHR Techスタートアップや情報収集

Arik氏は、創業前はリクルーターとして10年の経験があったこと、VCV.AI自体採用のサービスであることから、採用領域のサービスを中心にチェックしている。Arik氏が今注目しているHR Techスタートアップを聞いた。

・pymetric 
https://www.pymetrics.com/employers/
求職者はバーチャルな金銭取引やキーボードクリックなどのニューロサイエンスを駆使したゲームを受け、その結果を元に求職者のプロファイルを企業の業績優秀者のプロファイルと比較しマッチングさせるサービスを展開する。

・jobvite 
https://www.jobvite.com/
候補者の応募プロセスに寄り添った採用プラットフォーム。ソーシャル採用機能やオンデマンドビデオスクリーニングなどサービスは多岐に渡る。

「今注目しているのがpymetricです。人工知能とゲームを活用してジョブマッチングを提供している面白い会社です。すでに多くのユーザーも獲得していて、いい会社ですね」
HR Techや人事に関する情報取集は、欧米で開催されるHRイベント「UNLEASH」などに積極的に参加しているとのこと。また、Arik氏が普段活用しているメディアやサイトについても紹介してもらった。

・RecrutingTimes
https://recruitingtimes.org/
採用や人事に関するニュースマガジン。毎日更新されるニュースや仕事に関するあらゆる情報が入手できる。

・Producthunt
https://www.producthunt.com/
様々なカテゴリーのプロダクトが投稿されるサイト。投票することができ、世界中のユーザーの評価を見ることができる。

 

日本でのVCV展開の想い

アメリカ、ロシアについで日本に拠点を作ったVCV。投資先であるウィルグループから話がくるまでは日本進出について全く考えていなかったという。しかしながら、2018年の夏に日本のいくつかの会社を訪問してビジネスチャンスを見出したとArik氏。

「訪問した企業で採用プロセスについてヒアリングをしました。印象に残ったのは、ある企業が500人を採用するのに、なんと5万通のエントリーシートを受け取っていると聞いたことです。まさにVCVは5万人の中から500人を採用するプロセスを効率化・自動化をしている会社であり、大きな可能性を感じました。アメリカに比べると日本の市場の変化のスピードは遅いと感じる時もありますが、私たちはマーケットリーダーになりたいですし、日本でそれができると思っています」

編集後記

「マーケットが発展していて、失敗への捉え方の差が大きな違いでしょうね。」

インタビュー中にTalent tech labsが提供している採用領域のHR Techサービスのマップ(https://talenttechlabs.com/digital-ecosystem/)を見せてもらった時に、カテゴリ特化のサービスがアメリカでどんどん生まれている背景についてのArik氏の回答だ。

アメリカでは「失敗は貴重な学び」という文化がスタートアップを生んでいるとはよく言われるが、ユーザーにもそのような意識があることが、HR Tech活用の差を生んでいるように感じた取材だった。