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FAQチャットボットにより人事関連の問い合わせ対応を効率化「Leena AI」

人事業務は、採用、研修・教育、人事評価、人事企画、労務、勤怠管理、給与計算、社会保険や年末調整業務など、多岐にわたります。

少し古いデータですが、エンジャパン「人事白書2015」によると人事担当者のうち6つ以上業務を兼務している担当者は41%です。さらに近年は働き方改革により、人事制度の変更や見直しに取り組んでいる人事担当者も少なくありません。

制度の変更や働き方の多様化により実際に制度を利用する社員からの問い合わせも増えているのではないでしょうか?
社員から質問にこたえるために複数のシステムをみて回答、同じような質問にメールや電話で回答していて時間が結構取られる方も多いでしょう。

このような問い合わせ対応で業務を楽にしてくれるテクノロジーとして注目されているのが「チャットボット」です。

チャットボットは、会話を意味する「チャット」とロボットを意味する「ボット」を掛け合わせてできた造語で、テキストや音声を通じて、自動的に会話をするプログラムです。

参考記事:「音声認識や顔認識機能で採用効率化チャットボット『VCV AI』」

今回は従業員とのやり取りをサポートするチャットボット「Leena AI」を紹介します。

 

もくじ

1.Leena AIとは
2.Leena AIの注目ポイント
3.Leena AIの主な機能
4.Leena AIの利用料金
5.Leena AIの活用事例

 


1.Leena AIとは

Leena AIは、2015年に創業し、現在アメリカに本社を構えるLeena AI社が提供する、従業員の問い合わせに対して、モバイルファーストのチャットボットが回答するアプリです。サービスの提供は2017年8月に開始しました。

ChatterOnという、自己学習認知能力を備えた最先端のAIチャットボット構築プラットフォームを搭載し、1,200社以上の企業のデータから、100万パターン以上の会話データを活用しています。

さらに、OracleやSuccessFactor、Workdayなど、様々な人事管理システムと統合することができ、データベースの更新と照会を自動で行うことができます。



(引用:Leena AI ホームページ https://leena.ai/
 


2.Leena AIの注目ポイント

Leena AIの注目ポイントを紹介します。

(引用:Leena AI ホームページ https://leena.ai/

①モバイルファーストの従業員向けチャットボット

創業者のAdit Jainが、チャットボットの開発のためにニーズ調査を行っていると、従業員から人事への問い合わせの80%は、休暇や経費申請など、毎回似たようなものだということが分かりました。

Leena AIは、そういった休暇・経費申請、勤怠確認など、”従業員と人事のやりとりをサポート”する点が特徴です。
多くのHRTechサービスはツールや記録のためのシステムなど、全ての機能がセットとして提供されています。しかしLeena AIが他のサービスと違う点は、従業員が使いやすいように作られている点です。Leena AIは、WhatsupやFacebook messengerのような普段のコミュニケーションでも使うツールで使えるチャットボットになっており、どこでも・誰でも・いつでも・簡単に使用することができます。また、人事管理システム(HRIS)と統合し、複数の人事システムを見なくてすむようになっています。

 

②従業員の幸福度を計測

パルスサーベイを行うことで、従業員の幸福度を測ることができます。この幸福度の調査で悩んでいる人がいた場合は、人事に報告をしてくれるため、いち早く従業員の変化に気づくことができます。さらに、その従業員の上司に対して、今後どのような対応をしていけばいいのかを提案してくれます。
また、Leena AIは、パルスサーベイで判明した幸福度のスコアとチームに対する実用的な洞察を使うことによって、組織と個人の健全度合を知るためのディップスティックサーベイ(※)を行うことができます。
※パルスサーベイ:簡単なアンケート調査を短期間で実施する調査手法
※ディップスティックサーベイ:より具体的な要因を調べるために行われる調査手法で自由記述が多い。

 

③従業員にキャリアプランを提案

チャットボットを通して従業員とメンターはやり取りができ、チャットボットは従業員に要求されているスキルを示し、その後の理想のキャリアアップのコースを提案します。
また、マネージャーとの面談の日程をスケジューリングや、人材育成につながる対話や施策のヒントとなるデータを集めることができます。

 

 

3.Leena AIの主な機能

Leena AIは、AI機能を搭載したチャットボットで、従業員の問い合わせに即座に対応し、社員の負担を軽減します。Leena AIは下記のような機能を持っています。

①休暇申請に関するFAQ機能
②給与に関する機能
③人材開発・教育に関する機能
④パフォーマンス管理
⑤社員の精神状態を調査する機能
⑥風通しの良い環境を作る機能

 

①休暇申請に関する FAQ機能

この機能は、休暇申請に関する従業員の質問に対し自動でチャットボットが自動で答えてくれる機能です。
以下がFAQ機能でできることです。
1.残りの休暇日数の確認
2.人事制度についての質問に対する自動応答
3.有給休暇が消滅しそうになった際の社員へのアナウンスと休暇計画の提案
4.ヘルプデスクへのメール送信と自動学習
   チャットボットでは返答しきれない質問が来た際、ヘルプデスクにメールを送信します。さらに、その回答を記憶し、同じ質問がきたときに対応できるように自動学習します。

(引用:Leena AI ホームページ

②給与や経費精算に関する機能

この機能を使うことで、給与や経費関連の処理また出張のフライトの手配などを行うことができます。Leena AIは社内のシステムと統合されていて、チャット上だけで給与明細の確認、経費精算さらにフライトの予約ができるのです。

例えば、「12月15日ムンバイ行きのエコノミークラスのフライトを予約する」と打ち込むだけで、自フライト予約を行うし、社内システムと連携をして経費精算も簡単できるようになるというもの。

(引用:Leena AI ホームページ

③人材開発・教育に関する機能

本機能を使用して、従業員のパフォーマンスを向上させるための専門スキルを学べるコンテンツ(Leena AIによると動画を推奨)が配信されます。また、その後いくつかの質問に回答することで、視聴した動画の定着度を分析することができます。               

(引用:Leena AI ホームページ

④パフォーマンス管理

この機能では、従業員の実績管理を行います。プロジェクトの目標を設定すると、途中経過や年末のレビューをチャットで確認することができます。
また、継続的パフォーマンスマネジメントをサポートのため、1on1ミーティングの予約もこのボットを通して行うことができます。

(引用:Leena AI ホームページ

⑤社員のコンディションを調査する機能

従業員をセグメントをして質問を投げかけ回答を回収・集計するパルスサーベイなどができます。さらに、NLU(自然言語)を用いて、従業員の回答を分析し、従業員の幸福度を計算します。

すぐに対応が必要な人を発見すると、人事に知らせてくれます。また、本人や管理者に対して、行動計画の提案もしてくれます。

(引用:Leena AI ホームページ

⑥風通しの良い環境を作る機能

従業員が上司にも意見を言いやすい空間をつくるための機能です。

具体的にはアイデアボットというボットがあり、このボットでは、全従業員が会社の会長やCEOにアイデアを提案したり自分の意見を気軽に言うことができます。
それとは逆に、上司は課題に対する解決策を打ち出すことのできる優秀な社員に対し、直接課題解決を依頼することもできます。

 

以上のように、Leena AIには様々な機能があり、これを組み合わせて使うことで、その企業の課題に合ったサービスを受けることができます。

 

 

4.Leena AIの利用料金

どの機能を使うかによって、月の使用料が変わります。
企業が自社に必要な機能を選択し、それに合わせて料金が変わるシステムになっています。

選択した機能によって、使うことのできるチャットボットが決定します。
各機能の料金は以下の通りです。

機能価格
休暇申請に関するFAQ機能$1.25 / 月
給与に関する機能$1.25 / 月
人材開発・教育に関する機能$1.25 / 月
パフォーマンス管理に関する機能1人当たり$1 / 月(従業員)
社員の精神状態を調査する機能1人当たり$1 / 月(従業員)
旅行、経費管理$1.25 / 月
健康、ウェルネス1人当たり$1 / 月(従業員)
風通しの良い環境を作る機能1人当たり$2 / 月(従業員)
採用1人当たり$15 / 月(候補者) 
オンボーディング1人当たり$20 / 月(従業員) 
退職時のフィードバック1人当たり$20 / 月(従業員) 

 

※1000人以上の従業員を抱える大企業には、割引が適用されます。

 

 

5.Leena AIの活用事例

Leena AIは、2018年夏時点でコカ・コーラやViacomなどを含む12社と契約を結んでいます。今回はその中からCoca-Cola Beverages Vietnam Ltd.の事例を紹介します。

 

大幅に人事の負担を減らしたCoca-Cola Beverages Vietnam Ltd.

Coca-Cola Beverages Vietnam Ltd.は、世界的に有名なコカ・コーラの子会社であり、ベトナムのホーチミン市に拠点を置いている企業です。ホーチミン市、ダナン市、ハノイ市の3つの工場では2,500人もの従業員が働いています。

Coca-Cola Beverages Vietnamの人事の課題は、給与計算や医療保険、休暇の取得状況に関する質問が多く、それらの質問対応に多くの時間が割かれていたということでした。
対策としてチャットボットなどのシステムを導入しようとしましたが、使用する言語がベトナム語と英語の2つあるということもあり、なかなか実装には至りませんでした。

しかし、Leena AIを活用することで、その課題を解決します。

 

①Workplaceとの連携で言語の壁をクリア

Facebookを用いて言語の壁をなくしました。Leena AIは、Facebookの提供しているコラボレーションツール「Workplace」と提携しています。Workplaceの自動翻訳機能により、ベトナム語と英語の両方に同時に対応することが可能になりました。その結果、従業員による質問を自動化することができ、人事部の負担を軽減することに成功しました。

 

②社内で既に使われている様々なシステムと統合

既に人事・給与系基幹システム「SuccessFactor」と勤怠管理システムを導入されていましたが、それらと統合することで残りの休暇日数など、従業員個人の情報を即座に回答することができるようになりました。

またコカ・コーラは、これからE-learningなどの社員研修や、社員の入社手続き、エンゲージメント調査にもLeena AIの機能を取り入れようとしているとのことです。

(引用:Leena AI ホームページより)

 HR Techサービスは、充実していく一方で忘れてはいけないのが従業員の負担です。パルスサーベイツール、勤怠管理や休暇申請、経費精算、給与の確認など複数のシステムで確認しないといけなくなるというシーンは今後増える可能性があります。また、人事制度見直し頻度があがるとどうしても働く側としては最新のルールがわからずに人事担当者へ確認したくなるものです。

Leena AIのようなサービスを活用するときのポイントは、従業員との接点をチャットボット集約できることです。従業員はチャットでやりとりすることで疑問を解消し、手続きも簡略化できるメリットがあります。 一方で、人事側の工数が削減できるのはもちろんですが、従業員としてはチャット経由で人事に関連するやりとりや手続きができるので、裏側ではツールや制度を柔軟に変えていくということもできるようになります。

これまで「なかなか変えられない」と思っていたものが、「必要なときは変えられる」となることで幸せに働く人を増やすことができるのがHR Tech活用の良いところですね。