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目指すのは第三者の意思介入なく、最適な人材が最適なポジションで活躍出来る世の中

2019年4月に日本法人展開を果たした株式会社Newton Labs Japan。

2018年にHelder SilvaとRui Costaが共同設立したNewton Labs inc.を母体に持ち、企業と求職者の採用活動をAIが最適化する「Newton」を開発・提供。

カリフォルニアに本社を置く同社は、2018年4月に、ウィルグループとPlug and Playから$400kを資金調達。現在は、東京都渋谷区に日本オフィスを構えています。

HR Techナビでは、以前に、FAQチャットボットにより人事関連の問い合わせ対応を効率化する「Leena AI」や、音声認識や顔認識機能で採用効率化チャットボット(chatbot)「VCV AI」などを紹介してきました。

今回は、カリフォルニアに本社をおきながら、渋谷にも日本オフィスを構える株式会社Newton Labs Japan代表の佐藤 泰秀さんに、採用プロセスと求職プロセスをAIによって効率化・最適化するサービス「Newton」についてお伺いしました。

現在、求職者は、数ある転職サイトに自分自身で情報を入力しなければならず非常に煩雑な仕組みになっていると佐藤さんは言います。

「新たにアプリをダウンロードするのではなく、既存のFacebook Messengerの中にチャットボットを組み込んで、求職者の情報を聞き出したり、基本的にはアップしていただいた履歴書のデータをデータベースに取り込んで、求人情報との自動マッチングし、最適な情報を求職者側に提供するサービスがNewtonです。

チャットボットで質問を投げかけたり、履歴書をアップロードしてくださいねと送ったり、その履歴書データからマッチングして、最適な情報を提供します。

さらに、例えば、メッセンジャーなどで気に入ったジョブがあれば、そこから申込ボタンも押せるようになっています。ワンストップで応募までいける仕組みですね。」(佐藤さん)

採用担当者が求人情報を準備するだけで、最適な人材にAIがアプローチ

AIが自動でデータベース上の求職者を探してくれるので、採用活動中の人事がすることは求人情報を準備するだけで、候補者へのアプローチまでAIが自動で対応してくれます。

「人事がやることは、まずは求人情報の用意です。今は、人事側からこういう人が欲しいですという情報を直接もらっています。その情報と、我々が持っている求職者のデータベースの中からマッチングしたり、もしくは、Web上のオープンデータ情報をAIが自動でクローリングしたりして、求人情報に最適な人材を見つけます。その後のアプローチまで、AIが自動で行いますが、最終的には専属のキャリアコンサルタントが対応し、候補者とのコミュニケーション、企業へのスクリーニングを行っています。」(佐藤さん)

候補者の最終的なスクリーニング(選別)までNewton.ai側で実施。求職者側には、チャットボットから「こういう求人情報があります」「こういう求人とマッチングしましたよ」といったメッセージが送られる仕組みになっています。

「求職者から返信がきた場合には、本当にそのポジションに合う人材か、かつそのポジションに転職したいと言ってくれてるかどうかを、我々でスクリーニング(選別)して、企業様にご提供します。企業様は募集しているポジションに興味を持ってくれてる方にのみ、アプローチできるようになっています。」(佐藤さん)

最終的なスクリーニングは人の目を通しているが、現在は求職者とのやりとりのデータを集めており、最終的にはAIが全て担えるように取り組んでいると佐藤さん。

「基本的にはSNS上のアプローチだったりとか、Web上にGmailのアドレスが出てる方はそのメールアドレスにアプローチをしています。
返信には、一部人を介して対応ししていて、スクリーニングの部分も、最後は人の目で判断するようになっています。

ただ、そこのデータセットを集めているので、今後は、返事がきたら、AIがどういう返信をすればいいのか、のようなところも、自動化に取り組んでいます。」(佐藤さん)

求職者と採用側、どちらも楽になる仕組みだが、アプローチ後に、求職者から返信がない場合などがあるので、そこをどう解決するかが課題と続けて佐藤さん。

「採用側はすごく楽になるかと思いますが、マッチングの精度であったり、アプローチをかけたときに、求職者側から返信が来ないこともあるので、それをどう解決していくかというのは課題ではあります。」(佐藤さん)

求人に対してどんなスキルが必要か、機械学習を通してスコアリング

自分の専門領域外の、例えばエンジニアの採用を担当することになると求人票をどう書けばいいのか分からないという問題に直面することもあります。

そうした時に、求人票を書く上での問題点を、機械学習でクリアすると佐藤さんはいいます。

「スクリーニングには、機械学習とディープラーニング、あとは自然言語処理を使っています。例えば、企業・採用担当の方が、求人情報を書いて、それにあった人材を探ストなった時に、問題になるのは、求人票の書き方です。

採用担当者によって、知識的なところ、専門用語が分からなかったりすると、マッチングが変わってきます。

今、我々が作り込んでいるのは、求人票の書き方によらないで、『◯◯エンジニアが欲しい』とか『こういうポジションが欲し』」といった情報を自動で読みとって、そのポジションにはどういうスキルが必要なのか、というものを、これまでのマッチングの機械学習の成果の中から、自分たちでスコアリングするんですよ。

だから、例えばこのポジションにはどれぐらいの(スキル)点数が必要で、というのをディスクリプションから読み取って、それをグルーピングしてくれる。

そこがまずは一つの仕組みかなと。最終的には、(データベース上の)どの人材が、この求人に合うかなどをランク付けして、ランキングされた人材の情報を、ATS上で確認できるようにしたいですね。」(佐藤さん)

つまり、ジョブディスクリプションをうまく書けない人事であっても、Newtonを使えば、必要としているポジションさえ書いておけば、あとはAIが必要な人材像を具体的にしてくれるとのこと。

「ジョブディスクリプションはweb上のあらゆるところにあるので、Newtonでは、それをクローリングして自分たちのデータベースに入れています。

例えば、データサイエンティストというポジションがあったとしたら、web上のデータサイエンティストのジョブディスクリプションの統計をとって、どういうところが最適な人材像なのかというのをAIで機械学習させて、どういうスキルセットがいるのか、などをモデリングしています。これも一つ大きなポイントです。」(佐藤さん)

他社サービスとの違いは、機械学習を用いたマッチングと、その後のアプローチまでをAIが担当する点

他のサービスとの違いとしてマッチングの部分を挙げた。人事は求人情報だけ出しておけば、あとはNewtonが自動的に求職者とマッチングし、連絡までしてくれる。

「(他社のサービスとの違いは)いわゆるマッチングの部分で、AIによるマッチングは、キーワードマッチングしかしていないところもほとんどなので、統計学を用いたマッチングは違いかなと思います。

あとは、基本的にWeb上の情報をリストアップしてデータベース化するだけで止まっているサービスは多いですが、そこからマッチングして、アプローチまでAIがやってるサービスは、まだ日本ではあまりないかなと思っています。ヘッドハンティングのような仕組みをAIで自動化しているサービスは日本ではあまりないです。」(佐藤さん)

これまでのキャリアの歩み方からマッチングするかどうかを測るのも現段階では難しいが、AIで学習することはできそうで、その改善も今後はおこなっていく。

「(求職者のキャリアや考え方は、)AIで、学習はできるかと思っています。その人材が今までどういう経歴だったから辞めやすいかとか、合わないか、のマッチングまではまだできません。そういう部分の改善もやっていけたらいいなとは思ってます。」(佐藤さん)

カルチャーフィットの計測が今後の課題

「AIで判断できないものに、カルチャーフィットがあります。新卒採用はカルチャーフィットを重視すると思いますが、中途になると、カルチャーフィットというよりは、こういう人材がピンポイントで欲しいというスキルフィットを重視する企業も一定数いると思います。ただ、やっぱりカルチャーフィットにどう対応していくかの部分は、今後の課題といえば課題です。日本ではそういうところも大事なので。」(佐藤さん)

特にベンチャーにおいては、カルチャーフィットを重要視する企業も多く、そのニーズの対応には次のように答えてくれた。

「カルチャーフィットするかしないかをスクリーニングしてくれるサービスがあるので、提携は、今後検討していきたいなと考えているところではあります。」(佐藤さん)

AIでどう採用活動が変わるのか?

採用活動にAIを導入されることでどう変わるのか次のように語ってくれました。

「AIは機械的な判断をしてくれるので、人間の心情的な部分が良くも悪くも入りません。なので、採用担当者の偏見とか、国籍・外観とかにとらわれない最適なマッチングを提供してくれるようになります。さらに、AIが導入されることで、自動化されることが多い。

採用プロセスの簡略化で、採用担当者の負担を減らしていく。そうすることで、採用担当者が、採用領域ではない他の役割も担当することで、社内人事の改善に繋がっていくのかなとは思ってます。」(佐藤さん)

「(求職者にとっては)本当に自分に合ったポジションってどこなんだ?というのをAIがリコメンドしてくれたり、メッセンジャーでやりとりできるので、気軽に転職に関する情報を収集できたり、ワンストップでApply(申込)できるので、それぞれのプラットフォームで色々と登録する必要がなくなってくると思います。そうすると、転職に踏み込みやすくなってくるかなと思います。」(佐藤さん)

日本人はキャリアオーナーシップを持っていないという話もありますが、Newton.aiに登録をしておくことで、転職意思がなくても情報が入ってくるので、その点も改善できる余地があるかもしれません。

「自分は将来的にどういう職に就けそうなのか、というのをAIからリコメンドされることで、マインドが醸成されるかなと思います。日本での展開は、結構難しいところではありますが、自分の働くキャリアを見直さなければいけません。

日本は終身雇用が当たり前で、そもそもそういう考えは払拭していかないといけないので、そういう機会をまずは取り入れる(Newton.aiを使ってもらう)ことが大切なのでは、思っています。良い情報があれば、考えが変わってくる可能性もあるので。」(佐藤さん)

日本での展開は、まずは新卒採用ではなく中途採用を狙っていく

2019年4月に日本法人を設立してから現在まで、一部機能に限定して企業の採用支援を行ってきた。

今後は、AIチャットボットの仕組をtoC向けに展開していく動きを促進し、それに合わせてtoB向けの企業側ユーザも拡張していく予定です。

Newtonと相性の良い企業は、高いレベルの人材を欲している企業。

「職種やレイヤーは限定していないのですが、AIマッチングの特性と現在のデータベースとの兼ね合いで、高い専門性やスキルを必要とされる、ハイレイヤーのポジションで比較的早く採用成功に至るケースが多いです。

これまでの採用支援の実績としては、IT企業のシステムエンジニアやUIUXデザイナー、上場企業の新規事業開発責任者、人工知能研究開発企業のエグゼクティブポジションなど。珍しいポジションだと人工衛星の研究開発企業のGISエンジニアなども採用成功に至っています。

現在、データベースの拡張も進めており、現状のハイレイヤーのポジションの支援を進めつつ、より広いレイヤーでも採用支援出来るように展開して行きたいと考えています」(佐藤さん)

アメリカでの経験からすると、日本では、今は新卒採用ではなく、中途採用にフォーカスしています。

「アメリカだと新卒採用という考え方がそもそもありません。基本的にはインターンという形で、よければそのまま採用するみたいな。インターンを通じて経験を積めるかみたいなところがあるので、新卒採用という考え方はしないですね。

一方、日本の場合はスキルというよりも、学生の方の定性的な部分や企業とのカルチャーマッチなどを重視して採用される傾向が強いため、Newtonは中途採用にフォーカスしてサービス展開を行っています。

ただ日本でも最近、インターンでの経験を踏まえた採用も増えて来ており、そのような人材のニーズのあるスタートアップやジョブ型採用を行っている企業の新卒採用の支援も進めているところです。」(佐藤さん)

サービス間の連携で価値を強める

サービス間の連携では、下記のような具体的な案が進行中とのこと。

「サービス間連携で動いているのは、大きく4つです。

1つ目は、我々のサービスは、自動でマッチングしてその人材を企業に送り込むところはできてるが、例えば、『そのポジションにはマッチしなかったけど、でもこういうポジショニングを探してますか?』のような、企業側にリードするような求職者の情報を連携するような仕組み作り

2つ目は、転職だけじゃなく、業務委託など、フリーランスの方の案件を斡旋するところもできるので、その仕組みを作るところ。つまり、転職だけにフォーカスしているわけじゃなくて、いわゆる人材送客できる仕組みができているので、フリーランスへの業務委託を探す企業や、採用したい企業さんに送客する仕組み作り

3つ目は、求職者のデータベースを持っている企業と連携する仕組み作り。

最後に、大学生向けのキャリアイベントなどを開いて、我々のデータベース上に、大学生のスキル情報・経歴などを入力してもらい、我々のデータベースに蓄積していく部分も、一つの連携の仕組みとして動いていますね。」(佐藤さん)

Newtonで変わる採用

「採用のプロセス、人事採用者の採用プロセスを大幅に省略できます。AIがマッチングしてくれるので、今まで採用担当者が一人一人の履歴書をスクリーニングしていたものを、大幅に省略でますし、導入コストがかからないので、そういうそういうものを取り入れるのに、アグレッシブになってもらえます。
あとは採用コストを抑えることができます。」(佐藤さん)

また、グローバル人材とのマッチングなども期待できると言います。

「日本人の人だけじゃなくて、もともとAIが、日本語の日本人と、外国の方もマッチングするので、ある意味グローバル人材も含めてマッチングできる。」(佐藤さん)

もちろん、ロケーションでスクリーニングできるので、日本にいる方を検索することも可能です。優秀な人材に早いうちにアプローチできるという点もNewtonの特徴とも言えます。

「これまで求人サイトや転職エージェントからの紹介が中途採用手法の主流になっていましたが、直近のトレンドにもあるようにダイレクトリクルーティグ・自社の採用力強化の必要性はより高まって行くものと思います。その中で、企業側は直近の採用でなくとも、常に優秀な人材にアプローチを行い、自社のリードにしておく、という仕組みとしてNewtonを活用して頂くのも、一つの方法かと思います。」(佐藤さん)

日本と海外での個人情報の取り扱いはもちろん違うが、問題がないように進めていく

サービスの特性上気になるのが個人情報の取り扱い。どのように進めているのでしょうか。

「我々がやってるのは、ヘッドハンティングをオートメーション化してるもので、例えば、ヘッドハンティングする時には、採用側が自分でWeb上の情報を検索して、この人材にアプリーチしようかなと決めていると思います。自分たちで格納してるわけではなくて、あくまでオープン上の情報にアクセスして、アプローチしてると思うんですけど、それを自動化している、という仕組みです。

但し、個人情報の取り扱いに関しては我々も非常に重要なことであると捉えています。これらのサービスに関してまだ法整備が追い付いていないところもあるのですが、積極的に専門家に相談を行い、利用者の方が不利益を被ることないよう慎重に対応しています。世の中にとって、より良い価値を提供出来る公平・公正なサービス作りに努めています。」(佐藤さん)

採用確定時のフィーを安く設定し、悪循環を断ち切る

「料金体系としては、初期費用・導入費用は0円、完全成功報酬型で業界水準よりも低く設定しています。

人が手を動かす部分を自動化し、かつAIでより精度の高いマッチングを行うことでその料金体系が可能となっています。

また現在、企業側が直接操作出来るダッシュボードの開発も進めており、そちらを活用して通年採用を行っている企業に向けてよりパフォーマンスを提供出来るような定額制サービスの展開も検討しています。

料金を業界水準より下げる必要はないのでは無いか、というお客様からのお声を頂くこともあるのですが、Newtonはもともと、“第三者の意思介入なく、最適な人材が最適なポジションで活躍出来る世の中”を目指しており、そこに向けて意思介入の要素である“料金”というものをなるべく下げてサービスを提供して行きたいと考えています。」(佐藤さん)