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HRTech特化の投資ファンドを運営するウィルグループとは?

2017年5月にHR Techファンドを組成し、国内外のHR Techスタートアップへ投資を行ってきたウィルグループ。スタートアップへの投資活動は2015年6月より開始し、ウィルグループの事業ドメインWorking「働く」Interesting「遊ぶ」Learning「学ぶ」Living「暮らす」の4領域の分野のスタートアップ24社に投資を実行。

AIリクルーティングサービスLAPRAS SCOUTを行うLAPRAS、カルチャーフィットを軸とした適性検査事業のmitsucariを提供しているミライセルフなどにも投資をしている。

実はHR Techナビもウィルグループと日本中小企業情報化支援協議会が共同で運営をしているメディアだ。

そこで今回は、ウィルグループのHR Tech投資活動の特徴ついてウィルグループ執行役員ウィルテクノロジーズ本部本部長坂本竜に話を聞いた。

坂本 竜
2000年新卒1期生でウィルグループに入社。コールセンター事業部、事務派遣の取締役などを歴任。2017年よりグループのテクノロジーシフトを担う投資部門のインキュベーション本部(現ウィルテクノロジーズ本部)本部長に就任。

-HR Tech特化のファンド設立の経緯について

ウィルグループは、「個と組織をポジティブに変革するチェンジエージェント・グループ」をミッションとして掲げ国内外で人材派遣、業務請負、人材紹介等を展開しております。

ウィルグループが属する人材サービス業界においては、少子化による労働人口の減少、多様化働き方などやテクノロジーの進化により、業界は大きく変化しています。

ウィルグループとしても複雑化多様化する環境に対応し新たなビジネスの機会の獲得とオープンイノベーションを推進するためにコーポレートベンチャーキャピタルを組成してベンチャー投資を開始しました。約4年で24社のスタートアップへの投資を行ってきました。

-HR Tech市場での変化は感じるか?また業界の課題は?

米国では2005年くらいからHR Tech市場が活発になってきていますが、日本は遅れて2013年くらいから少しずつHR Tech市場が出てきたという感覚です。HR Techスタートアップや人事担当者と対話をしていると、この2年間くらいでHR Techについて浸透してきているように感じます。その理由としては世の中の働き方改革や生産性アップなどマクロな課題とマッチしてきていることもあり活性化してきているのではないでしょうか。

ただ、業界の課題は、成功事例・実績が少なく、大手企業への導入が進んでいない点が挙げられます。またHRTech導入となると全社員分のアカウント全てリスプレイスとなると事務負担なども多く、全体の導入コストも含めてどう解決していくが今後重要になっていくでしょう。

同じようなプロダクトが乱立していくこともあり、競合として差別化戦略を取っていくのか、それとも協業していくのかなど企業がどのような戦略を取っていくかが非常に重要であると考えています。

-国内外のHR Techベンチャーへ投資しているがどういう観点でスタートアップを見ているのか?

まず投資先のサービスが、市場が大きく、その分野でトップになりうるか、既存の人材業界を変革するデジタルディスラプションを起こしうるかという観点をみています。

次いで自社事業とシナジーがあるかどうかという観点でみていますね。
ウィルグループのグループ会社のセントメディアを中心に、弊社には多くの顧客網や業界ノウハウを持った社員がいますので、ウィルグループのリソースと、スタートアップのテクノロジーを組み合わせ、新しい価値を生むことができるかということ重視しています。

その例としては、音声認識技術に強みのあるHmcommと弊社のコールセンター事業部での例があります。こちらついてはILSの記事にも取り上げられました。

参考:Hmcomm株式会社×株式会社ウィルグループ提携事例
https://ils.tokyo/performance/case/case14

-投資先には具体的にどのような支援を行っているのか?

投資先の支援事例としては、シリコンバレー発のスタートアップであるVCV(ロボットリクルーター事業)、Newton(チャットボットを活用した就職マッチング事業)ではこの4月から専任の販売代理の担当者を置き日本市場への展開を行っています

-他のVCと比べて特徴的なものがあるか?

HRTechに特化していること、そして上記でお話したシナジーを追求し、専業の担当者をアサインするなどもして共に成長できる体制を構築できていることが特徴の一つですね。

-投資活動だけでなく、HR Tech GPやJapan HR Tech Conferenceなどイベントにも力を入れている理由は?

日本企業の経営課題は人の課題であり、その人の課題、人事の課題を早急に解決していく必要があります。様々なアプローチの1つとしてHRTechの活用があると考えています。

そのHRTechプロダクトの市場浸透、HRTech市場全体の市場活性化をHRTechファンドをやっているウィルグループとしては行なっていく必要があると考え、開催しています。

-2019年6月25日にウィルグループ HR Tech アクセラレータプログラムの募集を開始しました。アクセラレータープログラム実施に至った背景は?

今回アクセラータプログラムを久しぶり行うのは、魅力的なスタートアップがHR Tech分野で新たに出てきていることを感じていること。そしてそのスタートアップに対し今までウィルグループが培ったノウハウや、Joboty・ビザマネなどの自社新規事業を組み合わせることで社会にインパクトを与えられる取り組みができるという環境がウィルグループ社内に整ってきたこともあります。

-他社のアクセラレータープログラムとの違いは?

HRTechに特化していること、そして活動資金を提供し、ウィルグループと長期的な関係を構築していけることが大きな違いになると思います。

-今後どのようなインパクトを与えていきたいか?

変わっていかなければならない人事の現場、経営の考え方が少しずつでも変革していけるようなインパクトのあるプロダクトを世の中に輩出したり、Japan HR Tech Conferenceなどのイベントやアクセラレータの展開、HRTechファンドでの投資を通じて、企業の成長を下支えするような立場で活躍していきたいと考えています。

ウィルグループHR Tech アクセラレータ

ウィルグループHR Techアクセラレータは、起業の科学の著者 ユニコーンファーム/代表取締役社長 田所雅之氏らを筆頭に経験豊富なゲストが採択企業に対して講演やアドバイスをする「メンターデー」、集大成として外部から投資家、事業会社を集めた発表の場「DemoDay」の2つで構成されている。

3ヶ月の間に6回行われるメンターデーでは、市場構造の理解、プロダクトマーケットフィットやまたエクイティファイナンス・デットファイナンスなどスタートアップ経営で基礎となる部分を実装する機会となるだろう。

「DemoDay」は、VCやCVC、事業会社の投資部門の担当者が参加予定で、本プログラムに参加企業にとって貴重な資金調達に繋がる場も用意されている。

応募締め切りは2019年7月10日(水)12時まで。
HR領域でビジネスを展開していきたい起業家は応募してはどうだろうか?

アクセラレータ運営メンバー紹介

森 雅和 (写真向かって右)
2002年新卒でフューチャーベンチャーキャピタル株式会社入社、ベンチャー企業への投資支援業務を経験後、ベンチャー企業のCFOを経験。2016年ウィルグループにジョイン。

東條 昌文 (向かって左)
2009年新卒でりそな銀行入社。その後新銀行東京(現きらぼし銀行)、出向きらぼしコンサルティングで法人向け貸出業務、M&Aアドバイザリー業務に従事。2018年ウィルグループにジョイン。