従業員の能力とモチベーションを引き出しながら目標を達成することは、企業にとって重要な課題である。
解決手段として、従来は「レイティング*1」や、「MBO(Management By Objectives)*2」など、“評価”して育成する「ジャッジ型」の制度が多くの企業に導入されてきたが、
ビジネスが大きく変化する中で、こうしたマネジメント手法はスピードや柔軟性に欠ける上に、従業員のモチベーションを維持できないとして、行き詰まりを感じる企業が増えている。
代わりに、近年欧米を中心に注目されているのが「継続的パフォーマンス・マネジメント(Continuous performance management)」だ。
「継続的パフォーマンス・マネジメント」とは、「上司・部下の高頻度の対話により継続的に成果を出し、パフォーマンスを高めていくプロセス」のことを指し、従来の「ジャッジ型」とは異なり、密なコミュニケーションを通して育てる「コーチング型」のマネジメント手法である。
すでにAdobeやGEを始めとするフォーチュン500社のうち20%が導入している。
「継続的パフォーマンス・マネジメント」を効率的に実践できるプラットフォームを提供しているのが、「BetterWorks」である。
今回は、「継続的パフォーマンス・マネジメント」とはどういうものか?に触れつつ、「BetterWorks」が選ばれる理由について解説する。
継続的パフォーマンス・マネジメントが注目される前に主流だった、レイティング(年次評価)やMBO(目標管理制度)などのマネジメント制度には、以下のような問題があった。
・半年~1年に一度評価を伝える”報告”に終始してしまうと、従業員は会社への貢献度や成長を実感しづらい。
・単純なランク付け(5段階評価など)で報酬が決定されることで、最もランクの高い従業員がより良い報酬を求めて離職したり、平均ランクの社員が現状維持で満足してそれ以上成長しようとしない、といった事態を招く。
・ビジネス環境の変化が速く、半年~1年前に立てた目標が実態にそぐわなくなる。
・時間が経ってからフィードバックを受けても評価対象者の納得感が薄く、学びに繋がらない。
・個別またはグループごとに目標を設定するため、会社全体のビジョンとの整合性が見えづらい。
こうした問題の原因は、社内の動きや評価の基準が従業員にとって不透明になっていることだ。
それを解決すべく新しく注目され始めた制度の1つが「継続的パフォーマンス・マネジメント」である。
継続的パフォーマンス・マネジメントは、会社・チーム・個人の目標が全体に可視化されており、日々の業務で見失いがちな目標の進捗管理ができる。
さらに、部下と上司、同僚同士のコミュニケーションの可視化ができ、それを通した公平な評価を、”一元的”に管理できるため、管理する側の労力も減る。
「BetterWorks」は、カリフォルニア州レッドウッドシティに本社を置く、2013年創業の米企業。2016年までに累計$35,000,000の資金を調達している。
人材コンサルタントとして世界的に著名なJosh Bersin氏による「HR Technology For 2018: Ten Disruptions Ahead(2018年のHRTechトレンドに関する報告書)」においてもその名が挙がる注目企業だ。
顧客は、BMWやGoProといった大企業など、世界200社以上に及ぶ。サービスの利用は、従業員一人当たり月額$12~$18(14日間のフリートライアルあり)。
BetterWorksの考える「継続的パフォーマンス・マネジメント」は、具体的には下図のような4つの要素で構成される。
(BetterWorksの考える継続的パフォーマンスに必要な4つの要素)
BetterWorksを使うことで、継続的パフォーマンス・マネジメントに必要な「目標設定・管理(OKR)」「1対1の面談(Check-ins/1on1s)」「従業員同士のフィードバック(Peer Feedback)」「業績評価(Performance Review)」の4つを一元管理できる。
OKRとは、目標(Objects : 何を実現したいか)と目標達成度の指標となる主な結果(Key Results : 実現のために必要な成果)をリンクさせ、会社やチーム、個人が向かうべき方向とやるべきことを明確にする目標管理手法のことである。
BetterWorksを使うことで、トップの目標を個人レベルまで落とし込んで設定することができ、会社全体の目標進捗度が常にオープンになる。
(会社全体の目標進捗度が一目で分かる)
スマホアプリを使って、目標の進捗をリアルタイムでアップデートしたり、必要であれば目標を変更したりすることもできる。
(スマホアプリなどを使って、目標の進捗をリアルタイムかつ簡単にアップデートできる)
こうした目標管理(OKR)には、以下のようなメリットがある。
・企業のビジョンに沿った目標を、常に従業員に示すことができる。
・従業員が「何を期待されているか」がわかりやすく、納得度が上がりやすい。
・目標に対する進捗を定期的に振り返るため、進捗管理の役割も果たす。
Check-ins(または1on1s)とは、上司と部下が継続的に行う1対1の対談のことである。
BetterWorksでは、オンラインやアプリ上で対話することで、OKRの進捗確認と、それに対するフィードバックを継続的に行うことができる。
(Check-insを行う画面。選択式の評価に加え、自由記述式のコメントを通じてフィードバックを交換できる。)
上司から部下への一方的なフィードバックではなく、双方向で行うことで、社内のコーチング力を上げることも重視している。
(部下から上司へのマネジメント方法に対するフィードバック画面)
Peer Feedbackとは、上司・部下間だけでなく、同僚同士でフィードバックを交換することである。
Chech-insや1on1sよりも高頻度に行われ、必要なフィードバックを必要な時にもらえるというメリットがある。
(必要な時にフィードバックをもらえる)
またBetterWorksでは、良い業績を出した従業員に対しては、オープンな場で称賛の言葉を送りあうことができる。
従来の制度では、目標の進捗確認やフィードバックを十分に行わないまま、半年~1年に一度だけ一方的な評価を下す企業が多かった。
しかし「継続的マネジメント・パフォーマンス」では、OKRやCheck-ins、Peer Feedbackを年間を通して繰り返し行うので、一回の評価がそのまま年次評価になるわけではなく、従業員が査定に不平を感じる可能性を大幅に縮小できる。
継続的パフォーマンス・マネジメントは、HRTechにおいて爆発的に成長している分野で、実は「BetterWorks」のようなサービスを提供する企業は、7geeseやWorkboardなど他にも多数存在している。
そんな中「BetterWorks」が数々の企業に選ばれる理由の1つは、「GST:Goal Science Thinking」という、継続的パフォーマンス・マネジメントの効果を高める指標に基づいてサービスが作られているためだ。
GSTとは、人間の行動心理学をもとにした目標管理の指標のことで、業界最大手の「Success Factors」もまだ着手していない新しい概念である。
GSTにおいて、適切な目標設定には、①Connected(全社的に連携できること)、②Supported(助け合いが促されること)、③Progress-based(進歩が分かりやすいこと)、④Adaptable(柔軟であること)、⑤Aspirational(向上心が促されること)の5つの要素が重要だとされている。(GSTの5つの要素)
BetterWorksの一連のサービスはこのGSTに基づいており、ソーシャルな仕組みを使いながら組織の目標を見える化することで、全社員が共通の目標に取り組む“習慣や文化”を定着させることを狙っている。
実際に「BetterWorks」を利用する企業の69%が組織の生産性を改善し、72%が従業員エンゲージメント率を高め、91%が組織の一体性を向上させたという効果が証明されている。
(BetterWorks利用の効果)
とくに、広い範囲に拠点を展開する企業ほど、「バラバラだった組織に一体感を生み出してくれたサービスだ」として、高く評価している。
また、「BetterWorks」を通じて蓄積したデータは全て、自社で現在使っているHRIS(Human Resource Information System : 従業員の評価に必要なデータの蓄積人事管理システム)と連携することができ、年間の給与査定や、能力開発、仕事の割り当てなどに活用できる。
BetterWorksの特徴をまとめると、下記の2点である。
①従来のマネジメントとは異なる「継続的パフォーマンス・マネジメント」を実現させるプラットフォーム。
②GSTという、人間の行動心理学をもとにした目標管理の指標を用いてサービスが構築されている。
今日多くの企業において、組織のあり方は、トップダウンの「ピラミッド型」から、チーム全体で意思決定することを重視する「フラット型」へと移行している。
そうした背景を踏まえると、チーム・組織全体の動きを常に”見える化”する「継続的パフォーマンス・マネジメント」は、人事において重要度を増していくだろう。
日本では「継続的パフォーマンス・マネジメント」という概念は欧米ほど浸透していないが、SHARINやHRBrain、マイルストーンクエスト、1on1naviなど、OKRや1on1といった目標管理制度をサポートするツールはでてきている。
また株式会社メルカリが目標管理手法としてOKRを導入し、ヤフー株式会社もミーティングに1on1を採用するなど、組織全体でのパフォーマンス管理を追求する動きが、日本屈指の有名企業の中でも盛んになっている。
「継続的パフォーマンス・マネジメント」をサポートするサービスと言っても色々あるが、BetterWorksなどが今後どう普及していくか注目したい。
【用語一覧】
・レイティング:年度単位の業績に応じて社員をランク付けする年次評価
・MBO(Management By Objects):半年~1年に一度、あらかじめ上司と部下との間で目標に関する合意を結び、それに対する達成度合いで評価をする目標管理制度
・OKR(Objects and Key Results):目標と目標達成度を測る指標をリンクさせ、企業やチーム、個人が向かうべき方向とやるべきことを明確にする目標管理手法
・Check-ins:上司と部下が継続的に行う1対1の対談
・Peer Feedback:上司・部下間だけでなく、同僚同士でフィードバックを交換すること
・GST(Global Science Thinking):人間の行動心理学を考慮した目標管理の指標
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