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世界最大級のHR Techイベントで優勝した「Blendoor」と特別賞の「Talvista」

2018年9月11日~14日までの3日間、アメリカのラスベガスにてHR Technology Conference&Exposition(以下、HRTech Conference)が開催されました。

HRTech Conferenceは、今年で21回目を迎える世界最大級のHRTechイベントで、毎年HRTech業界の著名人によるセッションや、HRTech系のサービスを提供する企業のブース出展などがあります。

 

本記事では、HRTech Conferenceのイベント内で開催された「 Pitchfest 」で優勝した企業と特別賞を受賞した2社をご紹介します。

予選ラウンドのではピッチプレゼンにより30社から6社に絞られ、その後決勝ラウンドに進み、その6社の中から優勝と、Diversity賞(企業の多様性に寄与するサービスに送られる賞)の受賞企業が決まりました。

特に印象的なのは、受賞企業の2社とも、企業の「採用」「多様性」に関するサービスである点です。

マッキンゼーによる調査によると、男女の割合が均等である企業は同業他社よりも業績が15%以上良く、様々な国の人材を雇っている企業は35%以上業績が良いという結果が出ています。それにも関わらず、いまだ性別や国籍、人種による偏見により採用に偏りが生じていることも多いです。そのため、HR Techで偏見を取り除き、ダイバーシティを実現することが期待されています。

今年のHR Tech Conferenceのオープニングキーノートには、ADP社でCDO(Cheif Diversity Officer)を務めるRita Mitjans氏が登壇し、「The Buisiness Case for Diversity」と題して、ダイバーシティ経営を実践するためのポイントなどを解説しました。

The Next Great HR Tech Company セッションでは「Blendoor」が優勝、「TalVista」がDiversity賞に輝きました。

優勝したBlendoorには、賞金$25,000、次年度のHRTech Conferenceでブースを出展する権利と、さらにはそのあとに行われた 「The Next Great HR Tech Company」 というセッションに登壇する権利が与えられた。 また、特別賞のTalVistaには賞金$5000ドルが贈られました。

 

Blendoor(http://www.blendoor.com/

Blendoorは、2015年に創業した、性別や人種といった”採用には必要のない偏見”を取り除くマッチングアプリを提供する企業です。

その他にも、どの人材がどの職務に適しているのかか分析するピープルアナリティクスや、多様性を4つに分類し、TwitterやMicrosoftなど様々な企業の多様性を評価したblend scoreの測定、タレントプールの管理なども行っています。

通常のマッチングサービスに記載されている名前や写真を記載しない

Blendoorでは、求職者が履歴書をアップロードする際に、名前、年齢、写真、職務経歴、犯罪経歴などを公開しません。
これにより、性別や人種などの偏見なく、本人の性格や能力などを見て平等に採用することができます。

採用に必要ない情報を隠すことで、性別や人種、この職種にはこのタイプの人材といった、「経験を基にした偏見」を排除し、企業の採用の可能性を高めることができる点が評価されました。

採用までのステップで、どこで偏見があったかを特定することができる

また、面接のデータを分析することで、どの段階で偏見(バイアス)があったのかを特定することができます。

求職者が履歴書をアップロードするのは無料ですが、企業側は1求人を掲載するのに$400(4~5万円)が必要です。ただし、5つ以上の職務を求人に掲載すると、割引があります。

これまでの資金調達は以下の通りです。

時期ラウンド調達額
2015年8月1日エンジェル4万ドル
2015年11月11日シード2万5000ドル
2015年8月1日シード10万ドル
2015年8月1日シード
合計116万5000ドル

現在、57の企業と契約を結んでおり、その他にも450社以上が契約を望んでいます。しかしながら、CEOのLampkin氏はForbesの取材に対して、「投資家に無意識のバイアス(CEOのLampkin氏が女性である点)がかかっており、なかなか賛同を得られず、資金調達に苦労している。」と語っています。

資金調達がうまくいかず、次のアクションを起こせないと語っていますが、今回の優勝がきっかけで、より多くの出資を受ける可能性があるかもしれません。

Talvista(http://www.talvista.com/

TalVistaは、2018年に創業したばかりのスタートアップです。採用側に発生する無意識な偏見を取り除くためのSaaSプラットフォームを提供しています。

TalVistaは、Blendoorと違い、求人の掲載内容をAIを使ってターゲットが魅力的に感じるように作成したり、その後の面接時に使用する質問項目の作成したりする点が特徴です。

Excellence in Technology award 2017 でも受賞しており、世界的に有名な雑誌「Fortune」や「Forbes」などにも取り上げられています。

今回のピッチコンテストでは、TalVistaは男女の偏りのない採用を可能にした点が評価されました。

機械学習によって掲載内容をブラッシュアップ

採用したいターゲットが、自社の募集を魅力的に感じるように、機械学習による予測分析を用いた掲載内容を作成できる点が特徴です。

使う言葉(単語、文章)によって、男性と女性がそれぞれ魅力に感じるかどうかが変わってきますが、TalVistaを使うことで、男性と女性の候補者が均等に応募するように調整することができます。
リアルタイムでその文章の評価をし、フィードバックをしてくれる点も特徴的です。

履歴書内の偏見につながる情報は非公開で公開される

求職者は、履歴書を企業に提出する際に、偏見を引き起こす可能性のある指名や住所、出身校、電話番号などの情報を隠すことができます。

スキル・能力・経験などの重要な情報でのみ、求職者を判断することができます。

面接時に求職者が企業に合うかどうかを判断する効果的な質問項目を作成するサービスもあり、面接の時間短縮にもつながります。

料金は、フリーライセンス期間中に、サービスを使用するために登録した従業員の割合が5%未満の場合は無料でサービスを使用することができます。

逆に、従業員の割合が5%以上だった場合は、別途、年間使用料を払う必要があります。その費用は、現在のユーザーライセンス数に、ユーザーライセンス料掛けた金額となります。

最後に

昨年のHR Technology Conference&Expositionで表彰された企業は、360度フィードバックなど、従業員の評価や目標設定などの内部の従業員に関するものがほとんどでしたが、今年は多様な職場づくりに影響を与えている点(多様性)が評価されています。

HRTech業界は、給与支払いや勤怠管理などをはじめ、社内エンゲージメントや採用管理ツールなどの新サービスが次々に発表されてきました。

そして今年は、Pitchfestの優勝企業が企業の多様性に寄与するサービスであり、特別賞でDiversity賞が設置されてることからも、世界的に多様性が注目されていると言えるでしょう。

次回のHR Technology Conference&Expositionは、2019年10月1日~4日の3日間、今年同様アメリカのラスベガスで開催される予定です。

多様性の次に、どんな分野の企業はフォーカスされるのか、注目が集まります。