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前提を疑うことから始まる採用コストを下げて、社員定着率をあげる方法論

人手不足の今、企業間の人材獲得合戦は激化している。採用に力を入れているものの結果に結びつかず悩んでいる採用担当者も多いのではないだろうか?
毎月ウィウグループ協力のもと実施しているHR Techスタートアップと人事担当者のギャップを埋めるミートアップ「HR Tech 90」、今回のテーマは「採用コストを下げて、社員定着率をあげる方法論」。
給与即日払いサービスPayme代表の後藤氏、企業の離職者やOB・OG「アルムナイ」の導入コンサルティングやSaaSサービス展開しているハッカズーク代表鈴木氏をゲストに迎えて、開催された。

後藤 道輝氏 株式会社ペイミー 代表取締役


慶應義塾大学卒業。East Ventures株式会社、株式会社メルカリ、株式会社CAMPFIREを経て、
株式会社ディー・エヌ・エーに中途入社。DeNA戦略投資推進室での勤務を経て、2017年7月に株式会社ペイミーを設立。
https://youtu.be/Ky8_YBJHJU8

鈴木 仁志 氏 株式会社ハッカズーク 代表取締役CEO

カナダのマニトバ州立大学経営学部卒業。アルパイン株式会社を経て、T&Gグループで法人向け営業部長・グアム現地法人のゼネラルマネージャーを歴任。帰国後は、人事・採用コンサルティング・アウトソーシング大手のレジェンダに入社。採用プロジェクト責任者を歴任した後、海外事業責任者としてシンガポール法人立ち上げ、中国オフショア拠点立ち上げ、フィリピン開発拠点開拓等に従事。シンガポール法人では、人事・採用コンサルティングとソフトウェアを開発・提供。2017年、ハッカズーク・グループを設立し、自身がアルムナイとなったレジェンダにおいてもフェローとなる。

アルムナイ・リレーション・プラットフォーム「Official-Alumni.com」: https://official-alumni.com/

給与即日払いシステム活用による採用・定着効果について


給与即日払いサービスPayme。
2018年4月20日に4.5億円の資金調達をし、さらなる成長が期待される「給料の自由化」を掲げるFintechスタートアップだ。
参考:http://thebridge.jp/2018/04/payme-pre-series-a-round-funding

50年間当月末締め翌月給与支払いの慣習が続いている、日本。
給与の支払い回数は月に1回という企業がほとんどだ。

単身世帯の二人に一人は金融資産を持たない日本。急な資金ニーズが発生し給料日まで現金がない状態になるという人がいるということは、カードローン残高の伸びや後払いサービスの普及の観点からも想像に難くない。

 

このような中で、一番身近な金融資産が「給料」であり、Paymeは給料の自由化の事業を掲げる。

 

後藤氏

5月25日に給料が入るものの、GWに遊ぶお金がない20代の若者。9月25日にお金が入るものの、子どもの夏休み中に使えるお金がないシングルマザーなど名前もお金もない人が声を上げられるサービスを目指している。ベンチマークにしているのはグラミンバンクで、目指すはマイクロファイナンス。

 

と後藤氏は具体的な当社のビジョンや目指す方向を語る。
では、人事面において給与の即日払いはどのようにポジティブに働くのであろうか?

給与の即日払いの大きな2つのメリット


まず1点目に上げられるのは、求人応募数の向上である。

後藤氏

主要な求人媒体の上位の募集広告には必ず「日払い」がキーワードとして入っています。
給与の支払い方法を日払いにすると応募数が約3.7倍になるという調査結果もでています。

もう一つの効果は定着率の向上だ。

 

後藤氏

辞めてしまうアルバイトの二人に一人は初月に辞めてしまう。1日働いて5000円申請する、3日働いて8,000円申請するなど短いサイクルで支給することでモチベーションが維持されて、結果長続きするという例もある。また長く働くスタッフにとっては、結婚式のご祝儀など突発的な資金ニーズに対応できることで定着率向上に寄与しています。

 

Paymeは飲食店、コールセンター、小売店など若い世代が多く働く環境で導入が進んでいるという。
従業員はIDとパスワードで登録をして、登録が完了したら即日払いの申請が簡単にできる。

企業は勤怠と従業員の紐付けるという作業などは発生するが、導入と運用経費はかからずにはじめることができる。
応募数を増やすために掲出先を増やす、クリエイティブを見直すというやり方もあるが、支払いサイトを見直すという手法も検討してみてはいかがだろうか?

 

企業と個人の関係価値を最大化するアルムナイ・リレーション


アルムナイとは一言でいうと企業の離職者やOB・OGのことを指す。
転職は従来に比べると日本においても一般化をしてきているが、まだまだ1つの会社で勤め上げる人も多い。

そういった状況においては会社は離職者に対しては、「裏切り者」などネガティヴな印象を持つことも多いだろう。一方で離職者というのは、ある一定期間で同じ組織で同じ価値観を共有した仲間であり理解者という側面もある。

アルムナイ・リレーションは、一度組織に入った人は同じ価値観を共有した仲間と、組織を出た後も、会社と離職者の関係を構築することだ。

ビジネスシーンにおいて「チャネル」というのは重要だ。しかし、広報にしても、採用にしても、営業にしても自社にとって最適なチャネルを見つけて活用出来ているとは言い難い。

 

鈴木氏

会社のことを理解していて協力したいと思ってくれている人というのは重要なチャネル。離職者にはそういう方が多く、会社から裏切り者扱いされてしまうことも多い

 

 

ハッカズーク社では企業を一番理解していて、協力したいと思っている離職者との関係を最適化し、アルムナイが重要なチャネルとして採用やブランディングやセールスなどで企業に協力してくれる関係値構築を支援をしている。ただし、企業が一方的に恩恵を受ける関係は成立しないため、アルムナイ側にもメリットがあるWin-Winの関係を構築する必要がある。

 

「採用」と「定着」を再定義


採用や定着という一般的な定義が今の時代に合っていないと鈴木氏は問題提起をし、これからの採用と定着の概念を提唱する。

鈴木氏

従業員として雇用契約を継続して、可処分労働時間の100%をコミットをしてくれる方を「定着」。そういう人を取ることを「採用」とすることが今までの一般的な採用と定着の定義

 

 

働き方改革による複業の流れ、成果報酬がより加速するときに、業種や職種によっては、労働時間で管理することや、終身雇用を前提とした雇用契約、可処分労働時間の100%をコミットする必要が今本当に必要なことなのか?と疑う必要があります。

 

 

お互い需要と供給がマッチするときにつながることができる関係値を築いているのが「定着」となっていいのではないでしょうか?

 

鈴木氏は、人事のコンサルタントとしての実務経験から、定着率改善のための課題が明確になっていない会社が多いことを指摘する。

 

鈴木氏

定着率を改善したいといっても、採用の課題なのか、採用後の評価制度の課題なのか、給与に関する課題なのかが明確になっていないことが多い。

 

定着率を改善する方法としてはまず課題の把握が重要だ。
テキストマイニング技術などを使い、ソーシャルメディア上の書き込みから、商品や事象に関する消費者の感情を分析するセンチメント分析などを活用し、事前にエンゲージメントが低下しつつある社員を感知しフォローをする、定期的に従業員満足度を調べるためにパルスサーベイを実施して原因を特定して課題を発掘するなどというやり方があるという。

 

鈴木氏

退職時に退職理由を分析して、いま在籍している社員の定着率を改善することに取り組んでいる会社もあるが、退職後でも離職者と繋がり、エンゲージメントを向上させることで、企業と個人の関係価値を最大化していこうとしているのが当社の取り組みの特徴

人は企業とではなく仕事と契約し、かつ企業とも信頼で結びつく「アライアンス」という関係へ変化していくだろう。そうなった場合に日本特有の問題が発生する。

 

鈴木氏

日本においては終身雇用が、法的に履行を担保された契約としてではなく、「期間の定めのない雇用」の上に成り立つ慣行として維持されてきました。これにより、社員は会社に対して長期雇用を期待し、会社は社員に対して長期就業を期待するという心理的契約が出来上がりました。そのため、退職する時にはその期待値のズレが発生していて、会社側は退職交渉の段階から退職者を「裏切り者」扱いするケースもあり、退職時には会社と離職者の関係値がが一番悪い状態になってしまうことも多くあります。

 

 

アルムナイ ・リレーションを進めていくには、まず退職の再定義をして、辞めた後も関係を維持できるということを示すことをする必要があります。

 

 

アルムナイ・リレーションのメリットと進め方


実際アルムナイ・リレーションによるメリットはどういうところにあるのだろうか?

 

鈴木氏

アルムナイ・リレーションのメリットとしては人事面では採用チャネルの確保が挙げられます。アルムナイと良好な関係を維持しリファラル採用やアルムナイの再雇用というのもあります。実際にいま相談を受ける担当者は採用担当が多いです。

 

 

採用に至らなくても仕事の進め方を理解しているアルムナイに業務委託することでリソース確保ができます。

 

 

セールス領域では、自社サービスを紹介してくれるアンバサダーやセールスパートナーとしての役割をアルムナイが担う事例やアルムナイが自社の顧客になることもあります。

 

アルムナイ ・リレーションの導入が進んでいるのは業務コンサル会社、飲食、小売の企業が多いという。ハッカズーク社はアルムナイの状況を把握し、エンゲージメントを改善するためのコンサルティング業務と、システム提供以外にも運用サポートを提供している。
ただシステムを導入しただけでうまくいくわけではない。

 

鈴木氏

そもそも社員が離職することが前提となっていないため、離職者自身、離職した会社とつながるということができると認識がない。アルムナイの再雇用をしたいという企業も多いが、まずはアルムナイの状況を把握をして、アルムナイのエンゲージメントレベルや状況ごとに送るメッセージを分けます。

 

 

例えば会社に戻ってこれるのに戻ってきたくないアルムナイと、戻ってこれるし戻ってきたいアルムナイへ送るメッセージは当然変えないといけません。

 

 

離職者を一斉に登録するのではなく、2:6:2の割合で協力的な2割をまず巻き込んでいくことが大切。彼らの状況とニーズを理解してメリットを提供し、信頼してもらってエンゲージメントを高めてから、彼らの紹介で他のアルムナイにも入ってもらう形が理想的。

 

 

運用についても、そもそも定期的に情報発信ができるネタがない場合はコンテンツ作成に多くの工数が掛かってしまうため、社内報を作っていて社内向けコンテンツなどがすでにある会社のほうが比較的にスムーズにいく。ただし、コンテンツが無い企業の場合にはコンテンツ作成もお手伝いする。

 

 

働き方改革から辞め方改革へ

鈴木氏はすべての会社がアルムナイを取り入れるのではなくて、退職者との関係構築は多様で良いという。

 

働き方改革が提唱されていますが、私たちは辞め方改革に取り組んでいきたい。今は会社と社員の関係は退職することが前提になっていません。しかし退職しても会社と繋がり続けることが前提になると、後任者への引き継ぎをしっかりやる、アルムナイがセーフティネットとして機能して新しいことにチャレンジできるなど良い影響が生まれるはずです。

 

新しい人材も絶えず採れる時代ではない、ライフステージがパラレル化し、人口減少に突入する中では、一度会社で働いた人間との関係構築をすることは良い選択肢だといえよう。

まとめ

「給料の支払いは月に1回が当たり前」
「退職した社員とはもう戻ってこないのが当たり前」
「離職者へ定期的に連絡をとるなんてありえない」

という「無意識の当たり前」に気づき、「そもそもなんでそうだったのであろうか?」と考えることで既存の人事業務で効果をあげることができるヒントが得られる両者の講演だった。

【6月19日】社員と会社新しい絆を作る「攻めの人事労務」とは?

変革期における組織改革を得意とし、モザイクワーク社に従事しながら複数社の人事に携わっていらっしゃる株式会社モザイクワーク取締役COO高橋様、従業員の様々な健康情報をクラウドに一元的に集約管理するサービス「Carely」を提供する株式会社 iCARE 代表の山田様をお迎えして開催いたします。

概要

日時:2018年6月19日(火)19時〜20時30分(18時30分開場)
場所:港区赤坂3-17-1 いちご赤坂317ビル 5F
参加費:無料
主催:一般社団法人日本中小企業情報化支援協議会
協力:株式会社ウィルグループ