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これからは “ハッカブル”を目指せ~介護・ダイバーシティとテクノロジーの融合~

こんにちは、HRTechナビ編集部です。今回は、2018年3月27日に行われた千葉県柏市にあるサービス付き高齢者向け住宅【銀木犀】にてによって行われたトークセッションのレポートをお届けします。テーマは「『シンギュラリティ時代の介護と多様性』〜現代の魔法使い×超高齢社会の切り札〜」。次世代リーダー2人の対談を通して、介護・ダイバーシティとテクノロジーの融合についてお届けします。

対談者、モデレーター紹介

落合 陽一氏 ピクシーダストテクノロジーズ株式会社

筑波大学情報学群情報メディア創成学類でメディア芸術を学び、東京大学で学際情報学府にて博士号を取得。2015年より筑波大学助教。
映像を超えたマルチメディアの可能性に興味を持ち、映像と物質の垣根を再構築する表現を計算機物理場(計算機ホログラム)によって実現するなど、デジタルネイチャーと呼ばれるビジョンに基づき研究に従事。

下河原 忠道氏 株式会社シルバーウッド

株式会社シルバーウッド代表取締役であり、財団法人サービス付き高齢者向け住宅協会理事。株式会社シルバーウッドでは、産学協同研究で生み出した自社工法スチールパネル工法の販売・サービス付き高齢者向け住宅【銀木犀】の運営・【VR認知症】などのVRコンテンツの開発を行う。

木野瀬 友人氏(モデレーター) デジタルハリウッド大学院

慶応大学を卒業し、株式会社ニワンゴの取締役として日本のインターネット業界を牽引して来た。現在は、デジタルハリウッド大学院に通っている。また、株式会社エクストーンの取締役の傍、日本うんこ学会という同人団体にて、大腸がん検診啓発ゲーム「うんコレ」の開発を行う。

“ビジネス”によって社会問題の解決に挑む

介護問題とテクノロジー

介護の問題は、「介護=厄介なもの」という社会的なイメージ。高齢化社会において、介護のニーズは増えても、介護業界で働く人々のモチベーションが上がりにくいのが現状である。また、都市部と地方部では実情が異なるため、日本全体で画一的な解決策が適応できるわけではない。そこで、地域に応じた多様な問題解決の在り方が求められる。個別の解決策が求められるということは、それだけ費用も必要となる。しかし、個々へのアプローチはまだ社会のインフラとして整っているわけではない。したがって、社会保障費や助成金だけで解決しようとするのではなく、“ビジネス”として展開することで、雇用が担保され継続して問題解決に立ち向かうことができる。このような社会問題はロボティクスなどテクノロジーを利用して“ビジネス”によって市場開拓し当事者を巻き込むことに解決の糸口があるという。

画一的な解決策では通用しない問題に立ち向かう時代

ダイバーシティ性の拡張とテクノロジー

今やTwitterで何かをつぶやけば、いわゆる“クソリプ”が飛んでくる時代。誰もが言いたいことを自由に発言できるように、ダイバーシティ性が拡張したからこそ、これからは『インクルージョン』が大切になる、と落合氏は考える。日本はダイバーシティ(多様性)はある。しかしそれぞれの多様な個が受け入れられて力を引き出していくイングルージョンがある状態とはいえない。多様な発言が可能になった今、ネットでは介護、社会保障に関してネガティブな話がクローズアップされがちだが、テクノロジー・ビジネスによって課題を解決し前向きに生きられる社会にしていきたい、とのこと。
介護業界で言えば、テクノロジーに力で「介護士のいない介護施設」が理想だと下河原氏は言う。社会の中に、高齢者介護が溶け込み、当事者の家族や介護士だけでなく社会全体で支え合っていくことが大切だ。そこで、これからは「仕事つき高齢者住宅」によって高齢者にも“生きがい”や“役割”を感じてもらおうという考えから、銀木犀では認知症の人も併設された駄菓子屋で働いている。

「撤退」という新しい市場が生まれる

現在は、モジュール製品(規格に従って作られたソフトやハードの部品のこと。単体では役目を果たさない)だけで生きているが、それらがはまらなくなる時がいずれやってくる。介護問題をはじめとして、均質の解決策では通用しない問題に立ち向かわなければならない時代となるのだ。そこで、常に外部・他者からの補助に依存するのではなく、個々が最適な解決策で課題をクリアしていく必要がある。
人口減少社会においては従来の中央集権的な仕組みより非中央集権的な仕組みが重量になってくる。例えば電力会社においては広範囲のエリアをカバーする電力会社などインフラ整備ができなくなり撤退をせざるを得なくなる。地産地消の概念で運営する電力ビジネスができるようになるなど、撤退によって新しい市場というのが生まれてくる。

これからは “ハッカブル(hack+able)”を目指せ

求められるのは本質を見抜く力と行動に移す力

これからは、一人称視点と三人称視点を一致させる方策を生み出す職業が重要になってくる、と落合氏は考える。個々人が、自らの視聴覚や身体の障害に対応して、自分でプログラミングし、チューニングできれば、他者に頼らず自分自身で障害を補助・制御することが可能になるからだ。というのも、ニッチな分野においてPL法の要件を満たすプロダクトをリーズナブルに製造することは困難であるからだ。そこで、障害・不便さを感じる本人が自分の意志で障害や課題をチューニングし、管理・制御することで低コストで素早い問題解決が可能になる。この状態こそが“ハッカブル”なのである。
直面している課題に対し、人間が課題の本質を見抜き、前向きなアプローチを実行していくことが求められるのだ。2020年にプログラミング教育が必修化されるがプログラミング教育においても自分が直面する課題をハックするために行うという目的を持てば、全ての地域で人口減少に突入する2040年には十分間に合う。

超高齢化社会に人事は何を考えるべきか?(編集部)

HR Tech(Human Resource× Technology)領域においては業務効率化、人材育成、人材評価・配置、採用に関するサービスが多くある。先日公開したカオスマップに掲載しただけでも180サービスに上る。ただ生産年齢(15歳以上65歳未満)にあたる人々が一つのオフィスで働くということが前提になっていたり、ティール組織でいうところの順応型組織や達成型組織を想定して設計されているサービスが多い。
視力が低下していてもメガネというツールを使って働き続けることができる人がいるように、従来であれば働きたくても働き続けることができなかった人たちがテクノロジーの力を借りて働けるようになる時代がすぐそこにあると実感した。
高齢化社会におけるテクノロジー活用については「Human × Technology」の領域では語られることが多いトピックではあるが、インクルーシブな社会になっていく際に人事として新しい価値観で組織を設計することや「効率化」以外にエンパワーメントをしていくようなテクノロジーを活用していくことが求められるだろう。