HR Techナビでは、国内外のHR Techに関する最新トレンド、活用事例などHR Techに関わる人にとって役に立つ情報をお届けいたします。

求職者から選ばれる時代の採用を最適化するbeamery

1.採用×マーケティング

マーケティングとは「売れる仕組みを作る」ことであり、Product(どんな商品なのかか?)、Price(いくらで買ってもらうのか?)、Promotion(どのようにコミュニケーションをとるのか?)、Place(どこで出会えるのか?)の4つに分解することができる。

人事領域においても採用活動においてマーケティングの考え方を取り入れられることが多くなった。
このようなマーケティングの考え方を取り入れた言葉として「CRM(Candidate Relationship Management:採用候補者関係管理)」という言葉がある。

元々マーケティング用語のCustomer Relationship Management(顧客関係管理)から派生した言葉である。
顧客関係管理は、「個客対応」により顧客との信頼関係を気づき、継続的に買ってもらう、ファンになって商品を広めてもらうための施策である。
マーケティングの世界では、問い合わせや資料請求などをし商品・サービスについて買う可能性のある顧客を「見込み顧客」という。その商品について知ることで買う可能性のある顧客を「潜在顧客」と定義されていることが多い。
顧客関係管理では、潜在顧客を見込み顧客へ誘導し、さらには見込み顧客を優良顧客へ誘導するために、その顧客の状況に応じたメッセージを顧客へ届けている。

採用におきかえると、自社のことを知らない層を「潜在的就職者」、自社について何かしら問い合わせや説明会にエントリーをした人間を「採用候補者」、実際に候補者が求人に応募した人間を「応募者」と採用活動の段階において分けて考える必要がある。

 

2.CRMが求められている背景

採用領域にマーケティングの考え方が取り入れられてきた要因の一つとして、企業が一方的に求職者を選んでいた時代から、求職者に選ばれる時代へと変わりつつあることが挙げられる。しかしながら、就職に積極的な候補者は限られていて、大多数の候補者は受け身であるため。、企業は候補者自社の存在を知ってもらい、自社の魅力を候補者目線で確実に伝え、常に良好な関係性を保つ必要がある。

採用候補者との関係構築は重要度を増している。TALENTLYFTの発表によると、過去に嫌な経験をした候補者の42%は応募せず、嫌な経験を持っている22%の人は、応募しないように友達に話すとされている。

Candidate Experienceという言葉のとおり、企業は良好な関係性を保つために候補者によい体験を提供し、選ばれる努力が求められる。
そのためには、現在だけでなく、過去と未来の求職者とも関係性を保つ必要がある。具体的には、過去に自社に在籍していたアルムナイ(OBやOG)、過去の応募者、現在の在籍者と応募者、将来雇用する見込みのある潜在的候補者などといった人材とつながり続ける仕組みがあるかどうかが重要になる。

そこで注目を集めているのがこれまで顧客との関係性構築に採用されていたCustomer Relationship Management(顧客関係管理)を、採用分野に応用したCandidate Relationship Management(採用候補者関係管理)である。

(「Customer」「Candidate」ともに頭文字が「C」で始まるため、双方「CRM」と略される。)

CRMサービスを利用することで、企業と求職者との関係を良好に保ちつつ、採用スピードを上げることもできる。今回は数あるCRMサービスの中から、beameryが提供する「Talent CRM」と「Talent Marrketing」を紹介する。

3.beameryのサービス内容

beameryは、ロンドンに本社をおき、採用プロセス支援ソフトウェアを開発している企業だ。2013年に創業を開始し、本社の他にもサンフランシスコとオースティンにも支社を持つ。
世界最大級のHR Techイベント「HR Technology Conference&Expo 2017」のコンペティションセッションにノミネートされた。
顧客にはFacebookやVMware、Criteo、Dropboxなどの有名企業を持ち、50以上の企業が利用している。

Beameryが提供するサービスは「Talent CRM」と「Talent Marketing」の2つだ。

Talent CRM

Talent CRMは、タレントプールを作成し、候補者との関係構築をスムーズにするためのシステムである。応募者を管理するATS(Applicant Tracking System:採用管理システム)と違い、Webサイトからの問い合わせや既存の候補者リストなどを取り込んで応募前の段階の「候補者」へアプローチできるように管理をし、採用へつなげていく。

このTalent CRMの主な機能は4つある。

①候補者へのアプローチ
求職者が事前にウェブサイト等から企業に問い合わせをしていた場合、1クリックで求職者へのアプローチが可能だ。ウェブサイトを開いた状態で、求職者情報をタレントプールに追加することができる。

②データ分析
問い合わせや電子メールでのやりとりなど候補者との接点履歴がすべて自動的に記録される。ATSやHRISという人事システムとの連携ができ、Talent CRMで蓄積されたデータと紐づけることで、効果測定や施策立案などで使用できる。

③候補者の検索
beameryは、タレントプールから候補者を検索・選定することができる。その後候補者とつなげるために企業のATS(採用管理システム)をより充実させ、自動更新することができる。

④タレントプール
候補者ごとにデータベースを分割し、フィルタリングをして、候補者を集中的に選定できる。タレントプールを自動設定も可能だ。定員を満たすのが難しいポジションの人を雇用するためのタレントプールなどとしても使うことができる。

ダイレクトリクルーティングやリファラルリクルーティングなどを増やしていく企業にとっては、採用にかけるコストの削減が期待できるだろう。

 

Talent Marketing

Talent Marketingは、候補者を応募者へ誘導するためマーケティングプラットフォームである。応募前に接点をつくり、自社の魅力を伝えるための施策をTalent Marketing上で行うことができる。

このTalent Marketingの主な機能は4つある。

①タレントネットワーク構築機能
会社への応募を決めかねている候補者やアルムナイ (企業OB・OG)向けのコミュニティをつくる機能がある。コミュニティ内でコンテンツ配信やイベントの案内など可能だ。

②ページ作成機能
モバイル対応をした候補者向けのランディングページ作成機能やイベントページ作成機能があり、簡単に魅力的なサイトを作成することができる。

③コミュニケーション最適化機能(MA機能)
候補者の興味関心に応じたコンテンツや職種情報を配信する機能、HTMLメール作成機能や、候補者ごとに条件を設定してメールを自動配信する機能などがある。
採用担当者がシナリオをつくることで、問い合わせがあったら3日後にメールを送るということができるようになる。

④分析機能
Talent Marketing上で実施した施策のデータを取得し分析することができる。作成したページのアクセス解析に関するデータやメールの開封率などがわかる。候補者ごとの行動情報をみることができ、優先順位などもつけることができる。

採用に関する時間を大幅に削減したDelphic Digitalの事例

Delphic Digitalは、アメリカに本社を置くデジタルマーケティング会社である。Delphic Digitalの課題は、自社の求めている職種に候補者が応募をしてこないこと、採用業務の効率化の2つだった。これまでDelphic Digitalでは採用管理にスプレッドシートを使用していた。

求職者の募集については、マーケティングオートメーション機能を活用し、候補者の興味関心にもとづく情報発信を心がけ求職者がDelphic Digitalにより興味を持つようになった。優先度の高い候補者を選びメールの自動配信設定で定期的に連絡を取るようにしその人に適切な職種の応募が開始されると、メールを配信してアプローチをした。Beamery では、メール、電話、SNSなどどの手段でアプローチするのが候補者にとって最適化というのも提案してくれる。

また、採用業務においては効果的なタレントプールを構築し、候補者の情報を一元管理することで、一部の職種ではこれまでの64%の時間を削減することができたという。

 

4.日本のサービス

今回紹介した採用マーケティングのためのツールとして「Talent Cloud」というサービスが日本にはある。

Talent Cloudは、求人への応募者やイベント参加者、紹介者、自社に興味のある人材など採用につながる候補者のリストをデータベースで一元管理することができる。

また、マーケティングオートメーションを応用し、登録からの自動ステップメールや、候補者の行動にあわせて最適なタイミングで自動的にメール送信する機能などを備えている。

その他にも、タレントプール管理機能やチャット機能、採用サイト構築機能、採用管理機能を備えており、費用は月額2万円からタレントプールの規模に応じてプランを選択することができる。

 

5.まとめ

少子高齢化・人口減少が進む日本のおいてすでに企業は求職者から選ばれる立場にあり、また新しく採用できる人材は減っている。このような状況においては、一度でも接点を持った人を大切にし、接点を持った人といかに関係構築ができるのかが重要になってくるだろうし、求職者が選ぶために必要な情報を必要な手段で届ける重要性が増してくる。

一方でダイレクトリクルーティングやリファラル採用といった採用チャネルの多様化が進み管理業務も増えているし、オンライン・オフライン問わすソーシング(候補者探し)にも追われている人事も少なく無い。

採用活動において候補者とよい関係を構築することで、「今」応募はしてくれなくても、今後応募をしてくれる可能性もある。そのためには時間を捻出することが大切。今回紹介したサービスの機能や考え方を、候補者との時間を作るために役立ててもらいたい。