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海外HR Tech市場規模と注目サービスまとめ

日本国内HR Techクラウド活用市場規模は、2015年度に約77億円、2016年度には約119億円(前年比154%)に達した。
また、2017年度のHRTechクラウド市場は179.5億円に達しており、2018年度には前年比139.7%の250.8億円を見越している。

2019年度は、前年比141.5%の355.0億円、東京オリンピック開催の翌年には一次的な縮小は見られるものの、2025年の大阪万博によりこの縮小は緩和され、2023年度には1000億円以上の市場規模になると予想されている。(ミック研究所が発表した調査結果より)

黎明期から成長期へと移行していることが分かるが、アメリカをはじめとするHR Tech先進国と比べれば、その規模はまだまだだ。

今回、HR Tech世界市場規模上位5つにランクインしている国「アメリカ、イギリス、インド、カナダ、中国」において、注目サービスをそれぞれ紹介していく。

Working Remotely: 65+ HR Tech Startups Outside The US In One Infographic より)

1.アメリカ(世界シェア62%)

世界のHR Tech市場規模 約140億ドルのうち、アメリカは62%を占めている。

そんなアメリカで注目される「Zenefits」「OneSource Virtual」「Blue Board」「Best Money Moves」の4社を紹介する。

Zenefits(アメリカ・カリフォルニア)

・2013年創業

・資金調達額:約5億ドル

給与計算・健康保険の管理など、人事業務を効率化してくれるオンラインツールを提供している。企業に対して自社サービスを無料で提供している点が特徴。

自社サービスの導入とともに従業員に健康保険を販売しており、保険会社から販売手数料を得てマネタイズをしている。

最近は、CEOの入れ替わりや、大規模な従業員解雇を発表したりと世間を騒がせているが、資金調達金額においては群を抜いている。

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OneSource Virtual(アメリカ・テキサス)

・2008年創業

・資金調達額:約1億5000万ドル

BPaaS*1のパイオニア的存在と言われ、世界中で利用されているクラウド型人事・財務管理システム「Workday*2」の代理店として、Workdayを活用した戦略的コンサルティングサービスの提供・機能実装サポートなどを行っている。

*1 BPaaS (Business Process as a Service) :BPO (企業運営上の業務やビジネスプロセスを専門企業に外部委託すること) の一形態で、従来型のBPOとクラウドコンピューティング技術を組み合わせた上で、既存のITインフラを用いてビジネス上の成果を提供する

*2 Workday:人事、給与計算、経理などを一元管理できるクラウド型財務・人事管理アプリ

Blue Board(アメリカ・カリフォルニア)

・2016年創業

・資金調達額:207.5万ドル

・世界最大級のHRtechイベント「HR Technology  Conference&Expo 2017」のコンペティションセッション優勝企業

業績貢献が高い従業員に対して、「体験・アクティビティ」を報酬として与えることができるプラットフォーム。

アクティビティなどの「有意義な経験」は個人の記憶に残りやすく、他者との共有もしやすいため、金銭的な賞与よりも、個人の会社に対するエンゲージメントやモチベーションを高める効果がある。

【関連】世界最大級のHRTechイベントで優勝、「BlueBoard」が評価される理由

Best Money Moves(アメリカ・イリノイ)

・2016年創業

・世界最大級のHRtechイベント「HR Technology  Conference&Expo 2017」のコンペティションセッション ノミネート企業

従業員の「財政状況におけるストレス指数」を可視化し、財政状況に応じたアドバイスをおこなうことで、従業員のストレスを緩和し、業務の生産性を上げるサービス。モバイルファーストで、使いやすさが人気。

2.イギリス(世界シェア6%)

イギリスは「GENIAC」「Workable」「Beamery」の3社を紹介する。

GENIAC(イギリス・グラスゴー)

・2014年創業

・資金調達額:約3430万ドル

スタートアップやベンチャー企業向けに、経理会計、税務、法務、人事管理、給与事務など、会社経営に必要なありとあらゆる業務を完全代行してくれるプラットフォーム。

代行する業務プランごとに導入料が設定してあり、ユーザー企業は自由にプランを組み合わせて使うことができる。

Workable(イギリス・ロンドン)

・2012年創業

・資金調達額:約3430万ドル

中小企業向けの採用プロセス管理ツールを提供。

自動化により採用にかける時間と費用を削減するもので、ユーザー企業は欲しい人材について入力するだけで、応募者データの管理・集計やデータ分析、効果的な採用ページの作成、掲載管理、採用プロセス・スケジュールの管理・分析などが簡単にできる。

世界88か国6000社以上の企業が利用しており、サンフランシスコ・ボストン・アテネにもオフィスを構えている。

Beamery(イギリス・ロンドン)

・2014年創業
・資金調達額:約3000万ドル

・世界最大級のHRtechイベント「HR Technology  Conference&Expo 2017」のコンペティションセッション ノミネート企業

採用をCRM*3 と結び付ける(採用候補者を顧客のように扱う)ことで、優秀な人材の採用を可能にするソフトウェア。

戦略的に採用候補者のタレントプールを構築・管理し、円滑にコミュニケーションをはかることで、企業の採用業務に関する効率性や生産性を向上する。

Facebookなどの大企業も利用するサービスである。

*3 CRM(Customer Relationship Management):顧客との間に親密な信頼関係を作り、顧客がリピーターやファンになるような活動を行い、顧客と会社の相互利益を向上させることを目指す経営手法

3.インド(世界シェア4%)

インドでは、アジア最大級HR Techカンファレンス「SHRM HR Tech Conference」や「TECH HR」などが開催されている。

ここでは「Sapience Analytics」「Aasaanjobs」「Belong.co」の3社を紹介する。

Sapience Analytics(インド・プネー)

・2009年創業

・資金調達額:約730万ドル(2016年時点。金額は非公開だが、2017年にも資金調達をしている)

データを活用した従業員の行動分析を元に、組織の生産性や従業員エンゲージメントを上げるソフトフェアを提供。

世界12か国70社以上の企業をクライアントに持ち、フォーチュン200の企業も利用している。

Aasaanjobs(インド・ムンバイ)

・2014年創業

・資金調達額:約660万ドル

入門者レベルでできる仕事やブルーカラー労働者向けのオンライン求人情報サービス。

登録データを元に会社と求人応募者をマッチングさせるだけでなく、動画やチャットによる面接も可能にするプラットフォームを提供している。

Belong.co(インド・バンガロール)

・2014年創業

・資金調達額1500万ドル

アジア最大級HR Techカンファレンス「SHRM HR Tech Conference」や「TECH HR」に登壇者やブース出展者として例年参加するインドの著名なHR Techサービス。

履歴書に重点を置いた既存の派遣システムとは異なり、個人のSNSプロフィールやブログの内容などを自動分析して、企業と採用候補者の潜在的な適合性を判断。

手間をかけずに個々の企業に最適な人材を選び出すことができるツールだ。

4.カナダ(世界シェア4%)

カナダでは、1500人の人材プロフェッショナルを動員する巨大HR Techイベント「HR Tech Summit」が開催されるなど、HR Tech市場の盛り上がりは顕著である。

ここでは「Ceridian」「Benevity」「Zoom.ai」を紹介する。

Ceridian(カナダ・オンタリオ)

・1998年創業

・資金調達額:約1億5000万ドル

情報システムを活用することで採用、評価、育成、配属、昇進昇格、給与等を統合的に管理できるHCM*4 「Dayforce」を提供。クライアントは、数千社に及ぶ。中小企業向けに給与管理をサポートする「Powerpay」なども提供。

*4 HCM(Human Capital Management):従業員の能力を企業の重要な経営資源ととらえ、各従業員のビジネス活動の成果から人材開発による能力向上までを統合的に把握し、従業員の能力を最大限に活用するとともに、継続的な人材開発を進める人事管理手法。

Benevity(カナダ・カルガリー)

・2008年創業

・資金調達額:約2920万ドル

チャリティ募金やボランティア活動など、従業員に企業のCSR活動への参加を促すプラットフォーム。

従業員はオンライン上で、支援したい活動に対して自由に寄付することができ、寄付金控除*5 を受けることができる。社会貢献の実感度を上げ、従業員エンゲージメントの向上を目指すもの。

Google、Microsoft、Appleなど、名だたる企業からの利用実績を持つ。

*5 寄付金控除:個人が公益団体に対して寄付した場合に所得税や住民税のうち、寄付した額について所得控除あるいは税額控除を認めること。

Zoom.ai(カナダ・オンタリオ)

・2016年創業
・金額は非公開だが、2018年1月に資金調達をしている
・「HR Tech Summit 2017」で優勝

「Zoom.ai」は、ミーティングの日程調整や出張準備など、単純業務の自動化を通して従業員の負担を軽減、生産性の向上を可能にするbot。

Facebook Messenger、Slack、Skype、Gmail、Googleカレンダーなどとも連携可能で、スケジュールの確認・削除、空いてる時間の表示、リマインド機能などに加えて、飛行機の時間を調べたり、Uberを呼び出したり、天気予報を調べたりすることもできる。

Gmailに入っている連絡先に自動で空いている日程を送り、アポイントを獲得することもできる。さらに、そのままGoogleカレンダーに日程が同期される。

2016年には、カナダで最もイノベーティブなテクノロジー企業20社に名を連ねた。

5.中国(世界シェア3%)

世界最大規模の資金調達額を達成した「Liepin」をはじめとし、インドとともにこれからの成長が見込まれる。

ここでは「Liepin」「Fortune China HRtech」の2社を紹介する。

Liepin(中国・北京)

・2006年創業

・資金調達額:約1億7000万ドル

2011年から、ハイエンド人材に特化したオンライン求人プラットフォーム「Hunting Net」を運営。2016年6月時点で3000万人の登録者が存在する。

北京や上海、広州、深圳、大連、天津など、20を超える都市で使われているヘッドハンティングサービス。

日本企業の「BIZREACH」のように、応募者の履歴書を元に、優秀なヘッドハンターが直接スカウトする。IT人材だけでなく、不動産や製造業、医療人材も扱っており、日本でも有名なHuewayやHaierなどの企業も利用している。

Fortune China HRtech(中国・上海)

・2017年創業
・金額は非公開だが、2018年5月に資金調達を行っている
・「HRTech China Annual Awards」Best Service Provider部門受賞企業

給与事務や健康保険の管理などの人事業務をオンラインで代行・コンサルティングするアウトソーシング型サービス。

まとめ

今回は、HR Tech世界市場におけるシェア上位5か国を紹介した。その他世界各国の注目企業をCB Insightsがまとめている。

Working Remotely: 65+ HR Tech Startups Outside The US In One Infographic より)

より一層盛り上がりを見せるHR Tech市場は、世界各国の動きも活発である。今後の動向に注目したい。