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導入企業約400社! HR Brainに訊く目標管理と評価制度構築のコツ

アデコ社の「人事評価制度に関する意識調査」によると62.3%のかたが勤め先の人事評価に不満と回答しており、また77.6%が人事評価制度を見直す必要があると回答をしている。

では、どのように納得感のある人事評価制度の導入や人事評価をしたらいいのだろうか?

HR Brain 代表の堀氏に目標管理や人事評価制度導入から運用までのポイントについて語ってもらった。

堀 浩輝 氏 株式会社HRBrain 代表取締役社長
2011年、サイバーエージェントに新卒入社。Amebaにてアメーバブログやプラットフォーム部門の事業責任者などを経た後に2016年、HRTechスタートアップ、HRBrainを創業。

強みはソフトとハード両面でのカスタマーサクセス

HR Brainは、クラウド型の目標管理・人事評価ツール。定量/定性目標やMBOといったものから、OKRなどベンチャーで最近取り入れられている目標管理制度にも対応し、評価制度の確立から目標シートの収集、1on1などでの進捗管理、評価、集計までをサポートしている。サイバーエージェントやアドウェイズなどメガベンチャーやスタートアップを中心開拓を進めていたが、いまでは学校、飲食店、結婚式場、ガソリンスタンドなど業種問わず導入が進み400社弱の企業が使っている。今後も成長が期待されるサービスだ。


(クラウドベースの目標・評価シート。テンプレートで柔軟に変更可(※リニューアル後画面))

(公開範囲を決めて、メンバー間での共有もできる(※リニューアル後画面))

(ダッシュボードで進捗も一目で確認ができる(※リニューアル後画面))

既存の目標管理や評価制度の運用を効率化したい、目標や評価制度をこれから構築していきた、一から作り直したい、それらをクラウドツールを使って実施したいユーザーが導入を決めているという。


「価値観や働き方の多様性が増していく中、人事・経営者を中心にマネジメントのあり方を根本的に見直す機運が高まっています。私たちの領域では、より戦略的な評価や目標設定の仕方、そしてどのようにして社員のやる気に火をつけるのかという点です。鬼気迫る危機感を抱いている経営者や人事は多く、市場からの追い風やニーズの高まりを強く感じます。」(堀氏)

HRBrainのことを知るきっかけはオンライン上だけではない。


「都市部だと芸人の小峠さんを起用したタクシーCMをやらせてもらったり、地方だとテレビCMもはじめているので、そこが最初のとっかかりになることも増えてきました。
400社弱ユーザーさんがいらっしゃるので、ユーザーさんからの紹介も増えてきましたね。」(堀氏)


続けてCM施策を実施した背景を語る。


「マーケティングの張り方として、タクシーは多くの決裁者が乗るメディアだと捉えた時に相性が良さそうだと思いました。
あと私たちは人事向けのサービスではあるのですが、マス向けに作ることを心掛けています。
人事になりたての人でも簡単に使いこなせるサービス、というところは今後も大事にしたいと考えています。なのでCM・クリエイティブ・UI含めてその様に設計しているつもりです。」(堀氏)

目標管理や人事評価に関するクラウドサービスは多くあるが、HR Brainの強みはシンプルでわかりやすいUI/UXであると堀氏。
「私たちが特徴的なのは、エンジニアを抱えた会社さんに導入していただいてるケースが多いことです。
エンジニアは、人一倍使い勝手に対してこだわりが強いので、品質が高いものしか基本的には使いたくない。そういう会社さんに多く導入していただいているというのはUI/UXが良いという証左になると思います。」(堀氏)

使いやすさだけでなくもう一つの強みはCS(カスタマーサクセス)であるという。


「導入時のセッティングのサポート、期中の相談や制度の運用代行、期末には次の期の運用の戦略構築など、とにかくユーザーとの接点を多く持たせてもらってます。科学的なカスタマーサクセスを目指していますが、かなり泥臭くやっていて、いつでも頼っていただける相談しやすい関係づくりに力を入れています。そこの安心感は強みに繋がっていると思います。」(堀氏)

SaaSだからこそ泥臭くという言葉がでてくる背景には、HR Brainが便利で簡単なツールであってもプロダクトの特性があるからだ。


「一番大きいのはHR Brainというプロダクトの特性です。僕らのサービスは例えばDropboxと違って、マスの人が自分でセットアップして使いこなせないんですよね。
なぜなら、自社にあった目標管理や評価制度というのはユーザー自身で考えて作っていく必要があります。プロダクトだけで自社にあった目標管理や評価制度を作ることは難しいです。よって、私たちのコンサルティングを受けながら制度に落とし込んでいきます。そのプロセスが結構大事でサポートが必要です。」(堀氏)

実際にHR Brainのサービス継続率は99%と非常に高い。ソフトとハード(物理的)のカスタマーサクセスが充実しているのだろう。

なによりも組織の成長を促すループを回そうという気概が大切

HRBrainには評価に関するフレームワークが8個程度あり、ユーザー企業の課題を解決できるフォーマットを導入している。コンサルティングに近い内容もカスタマーサクセスの一環で行なっており、月額費用のなかに含まれている。評価制度において方法論の議論になりがちであるが、評価制度設計時に絶対はずしてはいけないポイントがある。

そもそも社員が何をどれくらい頑張れば報われるのかがクリアになっているのか?精神的に安心して働ける状態になっているのということがスタート地点です。」(堀氏)

「人事や経営目線でいうと、心理的な安全性を担保するためには人事や経営は適切なフィードバックを行う必要があり、フィードバックを通して社員の成長に寄与するという健全なループを回そうという気概を持つことが大切です。」(堀氏)


これからの意識を共有した上で、会社のバリューや職種構成を踏まえた上でフォーマットを選び運用をスタートする。

社内の評価制度や目標設定を見直すとなると一大プロジェクトのように感じるが、最初からあれもこれもとやりすぎることが失敗の原因になるという。


最初はできるだけシンプルなフレームワークをオススメしています。最初の半期でシンプルなループをクラウド上でみんなで回す。半期使ってもらうとこんな風にカスタマイズしたいな、バリュー評価を次から入れて見たいな、っていう要望が出てくる。そう言ったときに私たちのサービスで大抵のことはできるので、設定を変えてもらってできます。最初からモリモリな目標や評価制度にしないのは導入時のポイントです。」(堀氏)

このように、追加費用がかからず、気軽にチャレンジし、経験に応じて柔軟に変更できるのがSaaSの強みでもある。

「定量目標と定性目標を設定し、期中はそれにあわせて1on1のログを貯めて、期末の評価や査定につなげていくやりかたが一番多いですね。」(堀氏)

続けてスモールスタートをする場合に人気の組み合わせについてきくと

「1番人気があるのは定量目標と定性目標の両面から目標を設定して評価につなげて行く。そういう二段階の評価と併せて1on1のログを貯めていき期末の査定につなげていくっていうのが一番多いやり方ですね。」(堀氏)

目標設定において大切なのはSMARTに尽きると堀氏はいう。

Specific:具体的である
Measurable:測定可能である
Achievable:達成できる
Relevant:関連性がある
Time-bound:期限を定めること

部署や職種によっては計測できないものもあるがどのようにしたらいいのだろうか?


多くの場合は定量化できるのに、定量化することから目を背けているだけです。どうしても定量化ができない場合は『Aさんに〇〇と言ってもらう』とYes or Noの目標を立てることもあると思いますが、基本的にはSMARTですね。」(堀氏)

運用をうまく回すためのコツとログを貯めるメリット

400社以上の導入経験から目標や評価制度の運用がうまくいっている会社にはある共通点があると堀氏は語る。

人事や経営がコミットしているかどうかに尽きます。『目標管理や評価制度をしっかりと回そう』という気合いがあるかが一番大きいです。社内で巻き込んでいく旗振り役がいるかいないかで大きく変わります。」(堀氏)

「続けて重要なのが、フィードバックの有無です。自分で立てた目標に対して適切なタイミングで適切なフィードバックがあるかどうかが、社員側のモチベーションを大きく左右します。HRBrainを導入した企業では、みなさん目標をしっかり書かれています。
それは書いた目標と達成率によって評価されるという危機感に近い思いがあるからです。なのに、そこでしっかりとしたフィードバックがないと拍子抜けしますよね。ちゃんと成果が出ている会社はとにかくフィードバックを重視しています。」(堀氏)

フィードバックのポイントとしては、

「早さと頻度を高めるということは大切です。クラウドのツールはその辺は簡単にできますよね。」(堀氏)


そして運用していくために心がけておくの良いのがシンプルな運用だ。

「システマチックに寄りすぎて複雑な制度に頼りすぎるとコミュニケーションが減る罠があります。それではなかなか納得感のある評価をしていくことが難しくなります。上手くいっているところは運用はシンプルにして、コミュニケーションの量を増やしてそれを都度記録しお互いシンクロした上で評価につなげていくということをやっています。オフラインをバカにしないみたいなところは上手くいっている会社ほどやっていますね。」(堀氏)

クラウド上のツールで業務を効率化することでオフラインのコミュニケーションを増やしていく、組織の状態に合わせたフォーマットを活用して、スモールスタートを心がけるなど、目標管理や評価制度をクラウド上で運用するメリットは大きい。マネジメント上にもかなり影響がある。

「マネジメントスキルのムラの可視化とムラを抑えることができるというのもHR Brainを活用していくなかで享受できるメリットです。マネージャーのマネジメントスキルのばらつきというのは経営者が一度は悩む問題んだと思います。どのようなマネジメントをしているのかブラックボックスになっていることもよく言われますよね。
社員がやめる理由としては人間関係が大きく、その人間関係の理由をつくっているのは実はマネージャーだったということはよく聞く話しです。マネージャーと各メンバーとのコミュニケーションの透明性を高めて、人事や経営者がサポートできるような状態をつくるというのは大事なことだと思っています。」(堀氏)


「たとえば、退職者が多い部署の1on1のログをみたら、メンバーに対するフィードバックのタイミングや質が良くなかったということがわかるようになります。これまでは当然ブラックボックスだったのでわかりませんでしたよね。
これはフィードバックの透明化に繋がり、1on1のアジェンダを人事側で定めて運用するというような形でムラを抑えるということに取り組んでいる会社も多いですね。」(堀氏)


HR Techサービスを使っていても、成果としてエクセルファイルのクラウド化にとどまっている会社も少なくないだろうが、今後組織で起こりうる問題を特定するために必要なデータを定義して貯めていくということは組織の成長にとって重要になっていくのは間違いない。

HR Brainはフルリニューアルを予定しており、いまの目標管理・評価制度以外の領域でも人事業務をアップデートするサービスの開発を予定しているという。組織の成長を加速するために必要なデータを貯めて人事や経営をサポートしてくれるような機能やサービスを期待したい。

【参考サイト】
HR Brain:https://www.hrbrain.jp/
【参考記事】
HRBrain代表堀氏が語る社員の力を引き出す目標設定と評価制度構築のポイント