こんにちは、株式会社ウィルグループインキュベーション本部の森雅和です。当社は2017年5月人材ビジネス領域において、革新的なテクノロジーを有する有望な国内外のベンチャー企業への支援を行うこと目的に「ウィルグループHRTechファンド」を設立しました。日々国内外のHRTechベンチャー・スタートアップ企業と出会うべく活動しています。
今回は日本に先駆けてHRtechスタートアップが活躍するアメリカ、その中でもスタートアップの集積「シリコンバレー」で出会った5社をまとめて紹介いたします。
シリコンバレーの有名起業家育成プログラム「Y Combinator」を卒業した初の日本人としても有名な福山太郎氏が率いるFOND社。
同社は日本発の福利厚生ビジネスをブラッシュアップして米国企業に提供しており、顧客企業にはSalesforce、VISA、Dropbox、Adobe、Virgin Americaなどのビッグネームが並ぶ。設立は2012年で現在は米国でのシェアトップの地位に立つ。
同社のサービスは単に福利厚生プランを並べるだけでなく、例えばスマホの位置情報を利用してプッシュ通知を送る、PCブラウザの拡張機能を利用してサービスページへの誘導を行うなど、ユーザー重視の機能が付加されている。きめ細やかな多種の機能が従業員のサービス利用を活性化させ、導入企業の従業員エンゲージメント向上に寄与している。
PERCOLATA社は過去のスタッフアサイン、POS、カレンダー、イベント、気温等の情報を統合・解析し、「トータル人員数、同一人物の稼働時間、人件費予算」を変えずに売上額の最大化を実現するためのスタッフアサインツールを提供する。実際に靴販売チェーン店にて1人当たり売上高20%UPさせた実績をもつ。
スタッフ個人のスキルだけではなく、スタッフ同士の相性をAIを使って解析し、最適な組み合わせを導き出す。例えば時期や天候、周囲でのイベント開催によって「誰でも売れる」、「誰も売れない」、「スキルが高い人や相性の良いチームでしか売れない」時間帯があり、これに対応した適切なスタッフアサインをレコメンドしてくれる。
米国のユニクロやセブンイレブンでも導入が始まっており、日本展開も視野に入れる。
BONSAI社はエンジニア、デザイナーなどのフリーランスが利用する事務作業効率化のクラウドサービスを提供する。同社のサービスは「提案作成→契約締結→労務時間管理→納期管理→請求管理→請求書発行」までをトータルで管理することができ、フリーランスの事務負担が大幅に削減される。
日本でも独立した機能を提供するサービスはあるが、同社のサービスは非常に網羅性が高い。ご存知のように米国では日本に比べてフリーランス人口が多く、大きな市場が存在するものと期待できる。
余談だが会社名のBONSAI(盆栽)は、「組織規模は小さいが高いクオリティを持つフリーランサー」をイメージして命名したとのことだ。
Sense Talent Labs社は人材派遣会社と派遣社員のエンゲージメントツールを提供する。派遣登録者へのビデオレター配信、面接前後のフォロー、派遣後の定期アンケートなどをトータルで行えるクラウドサービスだ。
派遣会社のデータベースと連携することで、すべての派遣社員のパフォーマンス、満足度、その理由、打ち手をトータルに把握・管理できる。同時に、リクルーターや面接者のランキング作成ができ、派遣会社の業務改善にも役立つ。
米国大手人材派遣会社も利用しており、派遣社員の累計アカウント数は600万アカウントを超える。
Lumos社のファウンダー2名はスタンフォード大学で睡眠研究を行った睡眠のプロフェッショナル。アイマスク型デバイスとスマートフォン、クラウドデータを組み合わせた睡眠改善システムを提供する。
センサーで眠りのパターンをセンシングして解析、アイマスクからパルス波を発生させて日夜のずれを修正する。
テストでは90%の人が時差ボケを回避でき、時差ボケした人も2日程度で修正可能だという。
将来的には、夜間勤務を伴うシフトワーカーの睡眠障害問題の解決にも寄与したいと意気込む。
以上5社のシリコンバレーのHRTechスタートアップは技術レベルが高いのはもちろんのこと、意外なほどにサービスの作り込みが丁寧で、マーケット志向のプロダクト開発を行っていると感じた。
また企業や消費者は、「良いプロダクトであればスタートアップのものであっても積極的に活用していきたい」という活気に溢れ、エコシステムがしっかりと機能している。
ただし、日本のスタートアップの着眼点、技術力は決してシリコンバレーのスタートアップに劣るものではなく、スタートアップ・投資家・大企業・消費者の連携によって大きなイノベーションを生むことができることを実感した。