HR Techナビでは、国内外のHR Techに関する最新トレンド、活用事例などHR Techに関わる人にとって役に立つ情報をお届けいたします。

リーチできなかった層にリーチをすることが採用成功の秘訣?【HR Tech90イベントレポート】

こんにちは、HR Techナビ編集部です。2017年12月19日にHRTech イベント「HR Tech 90」を開催いたしました。今回のテーマは「採用活動×HR Tech」と題してまして、理系学生の就活を革新するLabBaseを提供している株式会社POL代表取締役 加茂 倫明氏、日本初のAIヘッドハンティングツールを提供している株式会社scouty代表取締役島田寛基氏をゲストにお迎えして、テクノロジーを活用した採用手法について語っていただきました。本イベントのレポートをお届けいたします。

HR Tech90とは?

Human ResourcesとTechnologyをあわせた造語であり、テクノロジーを活用し人事領域の業務最適化を図るサービスのことを指す「HR Tech(HRテック)」。
「HR Tech×〇〇」として、HR Tech(HRテック)に関するあらゆるテーマを取り上げ、1回あたり90分のイベントでネットワーキングとノウハウのシェアの場を作るという目的のもと、本イベントを開催しています。
【過去のイベント】
2017年10月21日開催AIで劇的に変わる営業の働き方!HRTech90#1
2017年11月21日開催HR Techで成果のあがる組織と人をどう作るのか?HRTech#2

優秀な理系学生へアプローチする方法とは?スピーカー加茂 倫明氏


株式会社POL代表取締役
現役の理系東大生。高校時代から起業したいと考え始め、大学入学後ベンチャー数社で長期インターンを経験。2015年9月からは休学してシンガポールに渡り、REAPRAグループ HealthBankにてプロダクトマネージャーとしてオンラインダイエットサービスの立ち上げを行った。帰国後、2016年9月にPOLを創業。 LabTech(研究室×IT)領域で、研究室所属理系学生の採用サービス『LabBase』と、理系学生向けメディア『Lab-On』の2つのサービスを運営している。

採用マーケットに出にくい理系学生


多くの理系学生は、就職活動を積極的に行わないのが現状です。理由として、①コアタイム(研究室に必ずいなければならない時間帯)があるため、就活に避ける時間が限られている、②大学の研究室という狭いコミュニティに属しているため、就活への意識が顕在化していない、③推薦やOBOGの紹介で就職先が決まるため、そもそも就活のニーズを感じていない、の3つが挙げられます。最近では、理系学生がIT業界の魅力に気づいて就職活動へ踏み出す傾向もあります。しかし、実際は約40%の企業が理系学生を希望通り採用できておらず、優秀な理系学生を多く取ることは難しいのが現状です。また、就活サービスで就職先を決める理系学生の割合は2割程度と言われており、ほとんどの理系学生が推薦やOB紹介や学内セミナーなどで、研究室と繋がりのある大手企業に就職しています。

優秀な人材を獲得するためのサービスとは?


弊社のサービスは、「そもそもアプローチが難しい状況で、優秀な理系学生を多く採るにはどうしたらいいのか」という企業の課題を解決するために生まれました。理系学生がプロフィール(LabBase)に書いたスキルや研究内容を基に、彼らをスカウトしたり個別に企業PRができる、というサービスです。ユーザー数は4000人以上、全員理系で、8割以上が修士や博士の学生です。
現在、ユーザーは旧帝大早慶が86%を占め、理系院生の登録シェアは日本一です。当サービスは、リリースしてまだ9ヵ月ですが、内定者も多く出ています。これまでであれば、学生が研究室と繋がりの無い企業に就職しようとすると、時間も手間も掛かっていました。しかし、弊社のサービスを利用して、LabBaseを書いておけば、企業からのスカウト次第で内定をもらう、ということが可能なのです。
ただし、スカウト型の典型的なデメリットとして、企業数を増やすと、優秀な人材へのノイズが増えてしまう恐れがあります。そのため、質と量どちらも重視し、企業知名度だけを重視するのではなく、企業活動の社会的意義も評価基準として考慮しています。これまでは、ITベンチャー企業が多かったのですが、現在は大手企業の利用も進んでいます。

トップクラスの理系学生にアプローチするには?


なぜ弊社は多くの優秀な理系学生へアプローチできているのでしょうか、この秘訣は3つあります。
①オフラインで学生と直接繋がる
地道ではありますが、弊社には全国に約100名の学生インターンがおり、彼らが大学の研究室に次々と訪問して、学生に直接アプローチしています。アンバサダーを増やすような感覚で、大学キャンパス内でイベントを開催したり、教授や学生と直接繋がることで、一般の企業ができないような研究室へのアプローチができるのが強みです。そこで得られた理系学生の生の声を、フィードバックとして企業に提供することもしています。
②理系学生向けのオウンドメディア(Lab-On)
オウンドメディアでは、研究関連の記事や理系学生向けの就活記事等をアップして、LabBaseの存在を幅広く学生へ広めています。理系学生は、SNS以外に特定のメディアをあまり見ない傾向にあります。それに対し弊社のLab-Onは、読者の約6割が理系院生となっており、ここに広告記事を出すことで効率よく理系院生にリーチできる媒体だと言えます。
③理系学生の情報インフラへの進化
LabBaseは理系学生向けの単なる就活サービスに留まらず、学生の情報インフラとなってきています。例えば、奨学金を検索できる機能や、研究室ごとの研究内容や実績を検索できる機能があります。これは、就活のタイミングというより、研究室を選ぶタイミングでLabBaseに登録し、その後も活用してもらおうという目的です。就活意識が文系学生に比べ高くない理系学生だからこそ、就活以外の価値提供が重要なのです。

転職市場における採用のノウハウ。スピーカー島田 寛基氏


株式会社scouty代表取締役
2015年、京都大学で計算機科学の学士号を取得。大学時代にはグーグル(日本法人)でインターンシップのほか、Incubate Fundにてさまざまなスタートアップ企業でのテック面での支援を経験。2016年、イギリスのエディンバラ大学(The University of Edinburgh)大学院で修士号「MSc in Artificial Intelligence」を取得。2016年、日本初のAIヘッドハンティングサービスを運営する株式会社scoutyを創業。

転職活動中の人材ではなく“転職潜在層”へアプローチ


従来の転職サービスは登録型のため、転職の意志がある人へアプローチしていることになります。しかし、それでは採用競争率が必然的に高くなってしまうのです。例えば、エンジニアは求人倍率が8.17倍(2017年)まで膨れ上がり、転職顕在層(転職活動を行っている人)の市場はレッドオーシャン化しています。そこで、転職潜在層(良い職があったら転職したいという人)へフォーカスしようと考えました。とは言っても、潜在層が必ずしも優秀な人材ばかりとは限りません。転職潜在層を採用する、というよりは、優秀な人材を結果的に潜在層にいる、という感じです。優秀な人材は、自ら起業したり、友人の企業へ引き抜かれたり、ヘットハンターからスカウトされることが多くあります。ですから、そうなる前に優秀な人材にフォーカスし、転職潜在層として顕在化することがポイントです。

どのように転職潜在層にアプローチするのか?


アプローチするにあたって、大きく分けて以下の2つの方法があります。
①顕在化する直前を狙う ②顕在化するまで待つ。
いずれにしても、scoutyは、転職活動を行っている人をターゲットとするのではなく、優秀な人材を採用マーケットに顕在化させることにフォーカスしています。転職する人材が他社の転職サービスに登録してしまったら、競争率も高くなり獲得が難しくなりますよね。ですから、顕在化のタイミングを正しく見計らうためにも、データベースがきちんと信頼できるものであることが大切です。scoutyでは、ユーザーのデータベースがクラウド化され、その人の研究記事や使用されたプログラミング言語を基に「機械学習(※)」で転職時期を予想し、転職活動サポートをしています。

※機械学習…コンピューターが、あるデータを基に知識や規則を自動的に導き出す技術・手法

scoutyを利用してエンジニアを採用した実例


実際に、scouty自身でscoutyを利用し、エンジニアを採用した事例をご紹介します。その方は、同じ職場に7年間勤めている方で、初回のコンタクトから5か月で入社に至りました。エンジニアは3年以内に辞める人が7割と言われており、次の転職を考えてもらうチャンスだったのです。
始めのアプローチとして、その方の研究記事の内容や使用されたプログラミング言語を基に自分自身でスカウトメールを書き、送信しました。
次に、その方と「自社でつかっている技術や開発体制に関しての情報交換」を目的とし、会食を行いました。最初から相手に転職を進めるのではなく、エンジニアとの情報交換や採用活動の一環、という体でのアプローチです。
会食後は、メールのやり取りを継続し、オフィスへ招待して実際に技術チェックもしました。こうして徐々に選考の流れに持っていき、結果的に転職が決まりました。
採用後、本人は「当時は、転職しても良い頃かな、という意識はありましたが、特に転職活動はしていませんでした。アプローチされた当初も、この企業への転職を意識していませんでした。」と話していました。このように、転職を考えていない人へ転職意識をこちらから喚起していくことがポイントになるのです。一度のスカウトメールや会食で関係を終わりにするのではなく、ネクストアクションで積極的に継続してプッシュしていくことが大切ですね。

おすすめのHRTechツールについて語ろう!


「めっちゃ人事業務が楽になるおすすめサービスについて語ろう!」をテーマに、
人事担当の方がこのサービスを使って楽になったというサービスの紹介や、HR Tech事業者がおすすめするHR Techサービスなどを紹介します。
新年度、新入社員研修など忙しい時期だとは思いますが、ご参加お待ちしております!

hrtech90概要

日時:2018年4月18日19時30分〜22時00分(19時00分開場)
場所:港区赤坂3-17-1 いちご赤坂317ビル 5F
主催:一般社団法人日本中小企業情報化支援協議会
協力:株式会社ウィルグループ
参加費:1000円
URL:https://20180418hrtechmeetup.peatix.com/view